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無幻の黄昏   作者: ふみりえ
第一部 命の始まり
18/76

第十七話 オリジン

「おーい!どこにいるんだー!!」


 あの子を何時間も探していたが、街中にはどこにもいなかった。


炎は既にこの街の人たちにより消化され、今は怪我人の捜索が開始されていた。


 そういえば、探している時に感じていたが、街の炎と森の炎は魔法により燃えていたが、2つの魔法は別の魔力を感じていた。


「この街が燃えていたのは、あの子のせいでは無いのか?」


 闘技場で話をしていたあの二人は妙な会話をしていた。


 このぐらいやれば...


 2人のうちの1人はそう言っていた。


 この街の炎はあの二人がやったのだろう。


 だとしたら......


 俺は走って街から出て、もう一度燃え尽きた森に向かった。


「確か、こっちだったか」


 あの子がいた場所を探し、燃え尽きた木や草を見ていく。


「......」


 辛かっただろう......


 記憶を頼りに、例のものを探していくと、


「あった....」


 やっと見つけたのはあの子が入っていた水晶。


 その水晶に触ると、周りが光に包まれ、やがて景色が見えるようになった。


「小さくなった?いや、水晶の中に入ったのか」


 周りを見ると、燃え尽きた森や草が大きく見えた。


「水晶の中から外の景色が見えるということは....」


 水晶の中の空間を歩いていくと、やがてうずくまっている女の子が見えてきた。


「こんにちは」


 女の子に声をかけると女の子がふりかえる。


 その瞬間、女の子の周りに魔法陣が現れ、あの時と同じ槍が向かってくる。


 俺はそれをよけず、全て食らう。


「ぐふっごほっ」


 口から血を吐き、食らった箇所からも血が吹き出る。


 女の子はそれを見て、驚いたような顔や、心配そうな顔をしたが、体はオロオロしているだけだった。


「大丈夫だよっ......わざとじゃないんだろ?」


 女の子はまたも驚いた様な顔をし、首を何度も縦に振った。


 そして、またも魔法陣が現れると、女の子は


「ダメっ」


 と叫ぶが、魔法陣から槍が放出される。


 俺はそれも避けようとはせず、全て受ける。


「なんでっ」

「元々....避けられないしなっ....仕方ないさ.....ごほっ...」


 何度も血反吐を吐き、女の子はそれを心配する。


「えとっ、えとっ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 女の子は何度も謝った。


「君は...えと、名前はなんて言うんだい?」


 女の子は怯えながら、


「な、名前は...ないです」


 名前が無いのか....


 俺は必死に痛みを我慢し、名前を考えた。


「......じゃあ、君の名前は、リオン...リオンだ...それでいいかな」


 必死に考えた名を口にすると、リオンは


「リオン....私の...名前」


 と言い、口をニコッとした。


「笑ったね....笑うということは....君が人間だからだ...よろしくね」


 手をリオンに向ける。それを見たリオンも手をこちらに向け、握手をする。


「....ぐっ」


 リオンが負わせてしまった傷が痛み、俺は呻き声を上げる。


「あっ、えとっ、私っ、う、うあああああん」


 リオンが泣き叫び、先程より多い魔法陣が現れる。


 そんなリオンを、俺は抱きしめた。


「えっ......」

「大丈夫だ、お前のせいじゃない....安心して」


 その台詞を何度も抱きしめながら言うと、魔法陣が消えていく。


「リオン......君は人間だ...君はこれから...何をしたい?」


 弱々しい声で聞き、俺は貫かれた箇所が熱く感じた。リオンが話すまでの間、俺はずっとリオンを抱きしめていた。


「....私は、みんなと一緒に暮らしたい...お姉ちゃん達や、ターナや、ラノとリナ、そして....輪、あなたとも...」


 やっぱり....


「ずっと意識があったんだね.....この何年もの間...」


「!!うん!私、ずっとみんなを見てた!パールのお姉ちゃんが色んなところに連れてってくれて、みんなが話しているのを聞いて....私も話したい!みんなと一緒に、ご飯を食べたい!」


 それを聞いた俺は、フッと笑い、


「じゃあ....ここから出よう...」


「うん!」


 そこで俺は、意識をなくした。









「あなたは...あなたは何をしたの?」


 あの空間でまたも例の声が聞こえ、俺は声の方向を向く。


 今度は顔は見えないが、体が見えた。


 女性のような見た目で背中には翼が見えた。


「君は......なぜ、なんで、俺を」


 俺がそう呟くと、女性は質問に答えようとした。


「それは....あなたが...」


 そこで女性は別の方向を振り向くとすぐに消えていった。


「あっ、待って!聞かせて!お願いだ!!」


 それから何度も質問をしたが、返されることは無く、俺も次第に意識が消えていった。






「輪!起きたか!!みんな!輪が起きたぞ!」


 目を覚ますと、目の前にはルーナがおり、周りにはパール達が集まった。


 自分の体を見ると、全身に包帯が巻かれており、動くと痛みが走った。


 そして、俺が寝ているベッドに顔をつけ、寝ているのは、


「うっう〜ん。ん?輪....おはよう」


 眠っていた少女が起き上がり、朝の挨拶をする。


「うん、おはよう。リオン」


 リオンと呼ばれた少女はニコッと笑い、俺に抱きついた。


「輪!良かった!良かった!本当に....」


 リオンの目の下には隈があった。


「ずっとここにいてくれたんだね、ありがとう。俺も嬉しいよ」


 リオンが俺から離れると、パールが話し出した。


「輪、私たちは仲間なのよ、だから、ちゃんとあなたの言葉で話して」


 そう言われ、俺は驚き、


「いや、でも」


「今さら他人行儀の方が気難しいわ」


「ほら、言ってみろよ輪、お前らって」


 アルンとルーナもそういい、ラノとリナ、そしてターナも俺の言葉を待っているようだった。


 俺ははぁっと息を吐き、


「本当、めんどくさいな、お前らは」


 みんなが笑い、


「いきなり言われると、ちょっと笑っちゃうな」

「はぁ!?お前らが言ったんだろ。俺はこのままいくからな!」







「それじゃあ、いただきます」

「「「いただきまーす」」」


 俺たちは宿のご飯を食べていた。


 幸い、賭けの街は元々の建物の素材や、そこにいる人々のおかげで、あまり大きな被害は出なかった。


「ほらほら、リオン、これ食えよこれ!」


「食べてる!食べてるから!もう既に食べてるから!」


 ルーナがリオンの口に食べ物を入れようとしていた。


「ルーナあんた、それあなたの嫌いな食べ物よね?」


 ルーナはギクッと顔を震わせ、すぐにリオンの口の中にねじ込んだ。


「....ルーナ、私がアーンしてあげよっか?」


「いーや、その手には乗らないぜ、どうせそう言って私の嫌いな食べ物がって、それは私の大好物なお刺身!アーン」


 アルンがルーナの口の中に刺身を入れ、ルーナはそれを美味しそうに食べた。


アルンはそれからも何度も刺身を入れ、ルーナはそれを全て食べていった。


「うーん、美味しいぜこのお刺身!上品な脂が沢山乗ってて噛めば噛むほど旨みが広がり、そして、コリコリして死にそうなほどの苦味がっ、てこれピーマンじゃねーか!アルン、お刺身の代わりにまたピーマン入れたな?吐き出してやる!」


 ルーナがピーマンを吐き出そう口を開けると、アルンはそれを見逃さずにすぐにピーマンを口の中にねじ込んだ。


「ほら!美味しいわよピーマン!お刺身だと思って食べなさい!」


「むぐむぐむぐぅ!カミカミコリコリごっくん!」


 ルーナが苦しそうな顔をし、飲み込む音がすると、アルンはルーナからフォークを離した。


 それを見ながら、俺を含め、他のみんなも笑っていた。


 そして俺は、口をアーンと開け、パールから次の食べ物を口に入れてもらった。


「よく噛むのよ」

「はいはい」







「あなた、今回も死にかけたのよ」


 食事が終わり、雑談をしていると、突然、パールがそう言った。


「今回はリオンのためだし、仕方ないとは思ったけど、あなた、この短期間で何回死にかけたと思ってんの?」


「そうです!今回は私もですが、輪!あなたは死にすぎです!このままじゃ、あなたいずれ死んでしまいますよ!」


 パールとターナからお叱りを受け、俺は今後パールかターナから離れないことを義務付けられた。








「ではでは、出発の準備は出来ましたね!みなさん!」


 みんなで荷物の確認をし、賭けの街の出入口へ歩いていく。


「あっ、ギルガや店のみんながいるぞ!」

「イルもいる!」


 出入口にはこの街で知り合った人々がおり、見送りに来てくれていた。


「一日だけ働いたってのに、お前らがいなくなると寂しくなるなぁ」

「行かないでくれー!」「また一緒に飲みたいよー!」


 ギルガやほかのみんなからの話を聞き、アルンはイルと会話をしていた。


「イル、じゃあね。兄妹たちと仲良くね」

「うん、アルンも元気で。あの、これ、兄妹たちと作ったんだ」


 イルはアルンに小さい箱を渡し、店の準備があるからとすぐに戻ってしまった。


「アルン、ありがとう」


イルが走り去る中、そんな声が聞こえた。


 そして、街のみんなと別れ、俺たちは賭けの街を後にした。


「あれ?ターナ刀1本増えてね?」

「ほんとだ!なんて刀なの?」


 ターナは自慢げな顔をしながら刀の名前を話した。


「その名も、静轟です」

「矛盾してね?」

「だからかっこいいのです!」


 そう言い、ターナは刀を頬に擦り寄せた。


「さーて、これから何が起こるんだろうな!」


 ルーナが空を見上げ、俺達も空を見上げた。

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