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無幻の黄昏   作者: ふみりえ
第一部 命の始まり
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第十四話 解放

「それでは、これより!今大会の決勝戦を始めまーす!なお、ターナチームの希望により、決勝戦に出るのはターナ選手のみとなります!」


 闘技場にロフとターナが上がり、お互いに剣に手を置く。


「それでは、開始!」


 両者共に刀を抜き、走っていく。


 刀と刀がぶつかり、激しい衝撃が走った。


 しばらく鍔迫り合いが続き、その後ターナが後ろに引く。


 そしてすぐにまた走り出し、ロフに後ろに回る。


 ロフもすぐにふりかえり、後ろからくる剣撃を自分の刀で弾く。


 今度はロフが後ろに下がり、刀を斜め下に構え、そのまま上斜めに刀を振る。


 ターナはそれを交し、ロフに足払いを仕掛ける。


 ロフは転んだが、すぐに体制を立て直し、ターナに向かって刀を突き刺す。


 すんでのところで躱したターナは刀を両手で持ち、横切りをし、ロフの体にかすめる。


「最初に傷を負わせたのは、ターナだー!」


 歓声が沸きあがり、俺の周りの参加者も興奮した様子で試合を見ていた。


「すげぇ!こんなの初めてだよ」

「2人とも動きがめちゃくちゃ速いな」


 そう、参加者の言う通り、2人の動くスピードがとても速い。


 眼鏡を外して見なければ、目が追いつかないほどだった。


「あなた、なかなかやりますね。私のスピードについてこられるなんて」


「お主もじゃ、儂の速さについてこられたのはお主が初めてじゃ」


 そう言いながら何度も刀と刀がぶつかり合い、煙が出る。


 煙のせいで見えないが、刀と刀がぶつかり合う音は聞こえていた。


やがて煙が消え始め、2人の姿が見えると、何度もお互いを斬った跡があり、舞台には血が少し溜まっていた。


「さすがに強いですね!」

「お主もじゃ、ここまで胸がドキドキするのは生まれて初めてじゃ!」


 その後も2人は攻防を続けるが、どちらが勝っているのかは俺には分からなかった。


 だが、もう何度目か分からない鍔迫り合いにロフが


「これで終いじゃ!」


 と言い、ターナの刀を上に弾くと、ターナは刀を手放してしまった。


 ロフはその瞬間を見逃さず、すぐにターナの体に斜め切りする。


 ターナから血が沢山飛び出し、俺は


「ターナ!」


 と叫んだ。


「これは凄まじい一撃!勝負ありかー!?」


 ターナが負けた


 と思った瞬間、ロフは驚いたような顔をし、すぐにもう一度刀で切ろうとする。


 ターナの目はロフを見ており、回し蹴りをロフに食らわせた。


「ぐはっ!」


 ロフは後ろに仰け反り、ターナは上空から落ちてくる自分の刀を持ち、すぐに構える。


「潔白流、除界一閃」


 足を踏み込み、一直線に白い剣筋を描く。


 ロフから大量の血が飛び出し、そのまま倒れる。


「しょ、勝負ありー!!今大会優勝者はターナだーー!!」


 その瞬間、観客席からたくさんの歓声が沸き、その中にはラノとリナもいた。


 ターナ....体は大丈夫なのか


 そう思った途端、ターナも闘技場で倒れ、2人はすぐに医務室に連れていかれた。







「ターナ!大丈夫か!」


 急いで医務室に行くと、ターナとロフは眠っており、医者には命に別状はないと言われた。


「よかったぁ」

「ぐっすり寝てるね」


 ラノとリナも一緒に医務室におり、ターナが起きるまで待つことにした。









「うっうーん、ここはどこ?私は美女?」


 ターナが起き上がり、ラノとリナが喜んだ。


「大会は!大会はどうなりましたか!」

「落ち着いて、大会はターナの勝ちだよ。」


 そう言うと、ターナは誇らしげな顔をした。


「私、がんばりました!頑張りましたよ輪!」


 ターナが何故か俺の方をじっと見る。


「な、なんでしょう?」

「なでなでしてください」

 俺がはぁっ?と言うとターナは


「だって私頑張ったんですよ!撫でてくれてもいいじゃないですか!ほらほら、撫でて撫でて!」


 と、頭をグイグイ近づけながらそう言ってきたので、右手で頭を撫でた


「へへっ」


 しばらく撫でていると突然ターナが


「そうだっ」


 と言い、頭をぴんと立てた。


 俺はその頭が顎にぶつかり後ろに転んだ。痛い


「賞金はどうなりましたか?まさか支払われないなんてことはありませんよね!」


「賞金は起きたら渡すって言ってたから、今から行こうか」


 ターナたちと一緒に医務室から出て、大会の運営場所に行く。


 歩いてる途中、ラノが


「ねぇねぇ、ターナが大きな傷を受けたのってわざと?」


 と言うと、ターナは驚いたような顔をした。


「よく気づきましたね、そうです、作戦です。あのままだと埒が明かなかったので傷を受けるのを覚悟で隙を見せたんです。」


 ターナが受けた傷の所を撫で、ラノの頭も撫でる。


 運営場所につき、賞金が入った袋を貰い、中身を確認する。


「どっひゃー!すごい額ですよこれ!アルンとルーナが大喜びしますよこれは!」


「ねぇねぇ、後で行きたい店があるからそこに行こうよ!いいでしょターナ!」


「私もそこ行きたい!いいでしょターナ!」


 とりあえず今度こそ盗られないようにすぐに時空収納にしまい、会場を後にする。


「ではでは、パール達がいるところに行きましょうか!輪、案内してください」







 洞窟から例の分かれ道に歩き、魔法陣が描かれた部屋まで行くと、そこではアルン達3人が汗だくになりながら詠唱をしていた。


「あの真ん中にあるのが、例の水晶ですか」


 しばらく3人の詠唱を聞いてると、魔法陣が何色にも光だし、それが何度も続いた。


 更にそこからしばらく待ち、途端に3人の詠唱が終わった。


「待たせたなお前ら、あとは魔法を行使すれば完了だぜ」


「それで、大会には勝てたの?」


 その問いに賞金を見せることで答え、パールが満足そうな顔をすると、魔法陣の方をふりかえった。


「それじゃ、始めるわよ」

「おう」

「やっとね」


 元々光っていた魔法陣がさらに光だし、ついに魔法が行使された。


 魔法陣の光とともに水晶も光だし、あたりが見えないほど眩しくなった。






「ん......終わった...のか?」


 光が消え、魔法陣の真ん中を見ると、そこには俺より少し小さい、髪の毛が白く、瞳の色が赤色の女の子が座っていた。


「おぉ、やったぜ、成功だ!」


 ルーナがそう言い、走って女の子に抱きついた。


「あぁ、我が妹よぉ、やっと会えたぜ〜」


 女の子の頬に自分の頬を合わせ、すりすりする。


 女の子はそんなことなど気にせず周りを見渡す。


 パールが女の子に近寄り


「こんにちは、私の名前はパール、あなたの姉よ」


 と自己紹介をする。


「私の.....お姉ちゃん........」


 女の子がパールの目を見ると、次にアルン、ラノ、リナ、ターナの目を見て、最後に俺の顔を見た。


 その次の瞬間、女の子の体が光だし、周りに何個もの魔法陣が出現した。


「これは!?」


 ルーナとパールが急いで離れ、女の子の様子を見る。


「みんな!逃げて!!」


 パールがそう叫ぶと、魔法陣からいくつもの光線が飛び出してきた。


「くっ!」


 パールが全員に魔法のバリアを展開するが、光線はそれを突き抜け全員を襲う。


「あああああああああ!!」


 光線が飛ぶ中、女の子は自分が入っていた水晶を手に持ちどこかに走ってしまった。


「みんな、大丈夫?」


 パールの声が聞こえ、他のみんなを探すが煙でよく見えない。


 やがて、煙が消え始め、周りの様子を見ると、パールとルーナがたくさんの傷を負っていた。


「パール、ルーナ、大丈夫か!」


 パールとルーナは自分の傷を魔法で治そうとしているが、すぐには治りそうになかった。


 見ると、他のみんなも傷を負っており、無傷なのは俺だけだった。


「輪、あいつを追ってくれ。あのままじゃあ、街が危ない」


 ルーナがそういい、気を失ってしまった。


 他のみんなも今は動けそうにないので俺は眼鏡を外し、すぐに洞窟から彼女を追いかけた。

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