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無幻の黄昏   作者: ふみりえ
第一部 命の始まり
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第十三話 剣の大会

「一回戦勝者は!ターナチームだー!」


 なんとか一回戦を勝ち抜き、優勝に1歩近づいた。


「やりましたね輪!」


 ターナが喜びながら走ってきた。


 控え室に戻り、しばらく休憩をとる。


「いいですね、ちゃんと剣を扱えてます。特訓の成果が出てます。」


「ターナが2人も相手してくれたおかげだよ、俺だったら相手出来なかった。」


 剣のメンテナンスをし、次の出番までそこら辺を歩くことにした。


「あまり何もありませんね、これなら戦いの方を見に行った方が良いかもです。」


 そう言って闘技場の方を見ようとすると、前から人が歩いてきた。


 和服で刀を持ち、顔にシワがある老人だった。


「失礼じゃが、そこのお嬢さん、お主もこの大会に参加しておるのじゃろ?」


 その老人はターナに話しかけ、ターナが老人の方を振り向く。


「はい、そうです。あなたもですね、よろしくお願いします」


「お主の試合を見たが、あまりにも素晴らしい剣の腕前じゃった。」


「ありがとうございます」


 ターナは照れた顔をし、次に老人が持ってる刀を見つめる。


「その刀、見せてもらってもいいですか?私のも見せるんで」


「構わんよ」


 お互いの剣を交換し、2人ともまじまじと見つめる。


「この刀、凄いですね。誰に鍛えてもらったのですか?」


「ほっほっほ、古い友人じゃよ。お主の刀もよくできておる。対戦するのが楽しみじゃ」


 老人は蓄えられてる髭を撫でながら刀を返す。


 ターナも刀を返し、老人の名を聞いた。


「儂の名はロフじゃ」


「ロフ...ロフ...ロフ...あ、いました。対戦するとしたら決勝ですね。私はターナ、こっちは輪です。」


老人の名前を聞き、対戦表が書かれてる紙を見つめる。


「そのようじゃな、戦うのを楽しみに待っとるぞ」


 そう言ってロフという老人は歩いていった。


「いやぁ、世の中にはあれほどの剣の達人もいるのですね。いい体験になりました。」


ちょっと見ただけで達人ってわかるのか。やっぱりターナはすごいな。


「優勝できるかな」


 俺がそう言うと、ターナはフッと笑い、


「出来ますよ、私とあなたのふたりなら」


 大会のアナウンスが鳴り、俺たちの出番がきた。


「ではでは、2回戦も勝ち抜きましょう!」








「次の対戦カードは、ターナチーム対ギルガチームです。」


 聞いたことのある名前を聞き、対戦相手を見ると、あの店にいた男が立っていた。


「おう!あの時の兄ちゃんに姉ちゃんじゃねーか!」


 ターナがそれに気づき、首を傾げる


「え、輪。私はあの人のこと知らないのですが、お知り合いですか?相手は私のことも知っているようですが」


「あ〜、まぁ、お前は覚えてないけど、あの人の店で色々あったんだ。いい人だよ」


 そう言うと、ターナはまたも首を傾げたが、すぐに戻り、


「いい人なんですね!なら大丈夫です、いきますよ!」


 試合開始のゴングが鳴り、俺たちは作戦通りに動く。


 相手はギルガ含め二人チームなので、1体1の状況を作り出す。


 ギルガともう1人が真正面から突っ込んできたので俺とターナはそれぞれ横に周り、相手もついてくる。


 ギルガの方はターナに任せ、俺はもう1人の相手をする。


 相手の剣が斜めから来たのでそれを剣で弾き、バランスを崩したところで腰のところを斬った。


「ほう」


 すると、相手は俺から距離を置き、もう一度剣を構えた。


今度は俺が相手に走って近づき、斜め下から斬りつける。


 相手はそれをすんでのところで、剣でガードし、反撃する。


 俺がそれをかわした途端、相手の動きが速くなった。


「はっ!?」


 突然のことに困惑し、次の剣撃を交わすことも出来ず、俺はもろに食らった。


「痛いっ、なんでいきなり」


 もう一度相手を見ると、今度は先程と同じようにゆっくり見えた。


 と思ったら、またも行動が速くなったり、遅くなったりした。


 これは、目の能力が発動したり発動しなかったりしてるのか?


 以前、パールが言ってたことを思い出した。


「能力ってのはそれが強大であればあるほど、扱うのも難しいの」


 この目の能力は強大だ。俺がそれに釣り合ってないんだ。

 多分今までも気づいてないだけで、こんなふうになっていたのだろう。イルやディエゴとの戦いの時にずっと発動していたのは運が良かったんだ。


 そんなことを考えながら、能力が不安定のままそれを使うわけにはいかないので、ポケットに入れてある眼鏡をかける。


 そうだ、目なんかなくても俺は沢山特訓したんだ。


 相手の動きをよく見て、次にどう動くかを予想する。


 ここだっ!

 相手が剣を真っ直ぐ突き刺したところをかわし、しゃがむ。


 すぐに足払いをし、相手を倒す。


その瞬間を逃さず、剣を突きつけようとすると、今度は相手がそれを剣で弾き、俺は剣を手放してしまった。


 剣はすぐには取れなさそうな距離に飛んでしまい、相手がすぐに俺の首元に剣を突きつける。


 俺の負けだ。


 降参しようと思ったその時、相手が後ろに飛び、俺の目の前に剣撃が飛んだ。


「大丈夫ですか!」


 ターナが走って俺の元に来てくれた。


「輪!早く剣を」


 そう言われ、すぐに自分の剣を取りに行き、ターナの元に戻った。


「おいギルガ!何やってんだよ!もう少しであの兄ちゃんが降参しそうだったのによ!」


「悪いな、あの嬢ちゃんが思ったよりも強くて、俺じゃ勝てそうにねぇ」


 相手のふたりがそんな言い争いをしている最中、俺達ももう一度作戦を立て直した。


「いいですね、輪。行きますよ!」


 今度は俺たちが真正面から攻めていき、相手もそれに気づき、剣を構える。


 まず俺が先に剣を横切りで思い切り攻める。


「ふん!」


 相手はそれを防いだあと、すぐに俺に反撃する。


 だが、


「せいっ!」


 俺が横切りをした瞬間、後ろからターナが斜め切りをする。


 相手が慌てて反撃するのをやめ、ターナの攻撃をガードしたが、次に俺が今度は斜め下から剣撃を繰り出す。


「くっ!」


「こいつら! 隙がねぇ!」


 そんな攻撃を何回か繰り返し、相手が疲れてきたところで、


「かまいたち」


 ギルガにかまいたちをかまし、場外に落とす。


 もう1人はターナが仕留める。


「潔白流、大蛇」


剣を構え、縦にターナが刀を降った瞬間、ターナの後ろにたくさん顔があるヤマタノオロチのようなものが見え、いくつもの斬撃を繰り出し、相手を場外に落とした。


「勝者!ターナチーム!」


「やりましたよ輪!  やったやった!」


 ターナがジャンプしながらはしゃぎ、俺は傷の痛みも忘れ、そんなターナをじっと見ていた。


「輪!」


 ターナがハイタッチを促したので、俺もそれに答えた。


 残りは、3回戦、準決勝、決勝だけだ。







 控え室で傷の手当をしていると、ターナが歩いてきた。


「輪、闘技場を見てください。ロフの番です。」


 そう言い、闘技場が見える場所に歩いていき、勝負の様子を見物する。


 ロフの老人の相手は5人チームだった。


「爺さん、降参するなら今のうちだぜ。1人だからって容赦しねーからな」


 5人チームのリーダーらしき男がそう言い、周りの男たちはひひひと笑った。


「勝負に降参するのは自分が負けたと思った時だけじゃ。それ、始めようか」


 ゴングが鳴り、5人チームが全員ロフに走っていき、ロフは腰につけた刀に手を置くが、まだ抜かない。


「おら死んじまいなー!!」


 5人の剣がロフに当たる瞬間、いつの間に抜いたのかロフの刀が相手の剣全てを防いでいた。


「なっ!?」


 そのままロフは刀を大きく振りかぶり5人全員を闘技場から外に落とした。


「勝者!ロフー!」


 歓声が沸きあがり、ロフは表情を変えずに控え室に戻って行った。


「ロフ......いい試合が出来そうですね」


 ターナがそう呟き、控え室の椅子に座り、刀の手入れを始めた。


「ターナ、ロフの老人と一体一で戦いたいの?」


 ターナは恥ずかしそうな顔をしながら首を縦にふった。


「じゃあ、良いよ。決勝はターナ1人で」


「それはダメです!輪、あなたは私の相棒です。」


 ターナが慌ててそう言うが、俺は


「いや、ターナがあの人と戦いたいなら、俺はそれを尊重するよ」


ターナはしばらく考える素振りを見せたあと、


「輪......ありがとうございます。私、1人で決勝は戦います。しかし、それまではあなたと一緒に戦います。あなたは私の、私たちの、相棒なのですから」


 その後、俺たちは決勝までの勝負を一緒に勝ち抜いた。


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