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無幻の黄昏   作者: ふみりえ
第一部 命の始まり
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第十一話 日常

「ん....あれ...僕は...」


 店主が起き上がり、周りの様子を見渡す。


「やっと起きたわね、今から質問するけどいいかしら?」


 店主はしばらく無言だったが、首を頷いた。


「それじゃ、1つ目、なぜ私たちを襲ったの?」


 店主はポケットからゴソゴソと何かを取りだし、俺たちに見せた。


「君たちはある家から指名手配されているんだ、大抵の人は知らないけど」


 店主が見せた紙にはアルン、ルーナ、パールの名前があり、下に報酬金が書かれてあった。


「アルン、これって」


「まぁ、私たちの両親でしょうね....」


 アルンは少し俯くとすぐに顔を上げ、2つ目の質問をした。


「大抵の人は知らないって、じゃあなぜあなたは知ってるの?」


「ある人から言われたんだ、君たちを捕まえれば報酬金が貰えるって。ある人ってのは僕にも分からない、顔がフードで隠れてたから」


「なるほど。じゃあ最後、なぜあなたはその依頼を引き受けたの?」


 アルンがそう質問すると、店主は着いてくるように言い、洞窟から店に出た。


 そのまま店の2階に行くと、そこには子供が数人いた。


「この子達は?」


「僕の兄妹だよ。僕達は貧乏でね、ここの店を僕が切り盛りしてなんとか暮らしてきてるんだけど」


「そう、それで私たちを捕らえたらその金で楽できるって言うわけね」


 店主が頷くと、部屋にいた子達が集まってきた。


「兄ちゃん兄ちゃん、この人達だあれ?」


「えと、この人たちは....」


 店主が言いにくそうにしているとアルンが


「こんにちは、私たちはこの人のお友達よ。私はアルン、この人は輪、よろしくね」


 と言い、店主の兄妹たちを抱きしめた。


 兄妹たちはキャッキャといい、アルン達と色んな遊びをした。


「店主さん、あなたの名前は?」


「僕はイル。アルン、ごめんなさい、あなた達を捕らえようとして。兄妹たちは関係ないんです。なにかするなら僕だけで」


 イルは怯えた様子でアルンに言った。


「別にいいよ、怪我した訳でもないし。ね?輪」


「うん、新しい技も試せたし」


「え......」


 アルンが窓の外を見るともう辺りは夜になっていた。


「それじゃ、私達も帰ろうか。今後のことも考えなきゃだし」


 そう言って帰ろうとするとイルに引き止められた。


「あ、待って、ご飯食べていかない?今日のお詫びに。お金もないんでしょ?」


 昼の時のことを覚えていたようで、俺たちの顔が赤くなりながらも頂くことにした。







「はい、おまちどおさま。」


 部屋の真ん中に小さなテーブルが置かれ、そこにひとつの大皿に乗ったおかずと1人ひとつずつのお椀を手に持ち、食べてった。


「おいしい。これすごく美味しい」


 アルンの言う通り、すごく美味い。


 野菜とお肉がいい具合にバランスが取れていて、なおかつお腹にたまりやすい。


「毎日こんなご飯なんだ。これぐらいしか僕らは作れないなら」


 イルもそう言いながら食べる。


 兄妹たちもどんどん食べていき、食べ終わる頃には皿が綺麗になっていた。


 あと片付けの手伝いをし、そろそろルーナ達の元に戻ることにした。


「ご馳走様、美味しかったわ。ありがとう」


「ありがとう、今日は本当にごめんなさい。わかったんだ、お金なんかなくても、僕にはこの子達がいればいいんだって」


「イルは賭けとかはしないの?」


「僕たちの親は賭けで大負けして出てっちゃったからね。やらないようにしてるんだ」


 アルンは そう と言いながら苦笑いをしていた。


「それじゃあね」


 アルンと俺は手を振りながらイル達から去った。










「ねぇ輪、もう少しこの街を歩こうか」


 歩きながらアルンがそう言い、今後どうするかもまだ浮かばなかったのでそうすることにした。


 夜は屋台が沢山あり、色々な食べ物があった。買えないけど。


「あ〜いい匂い、お金があればなぁ。」


 と、アルンが物欲しそうに色々なものを見ながら歩いた。


「さっきご飯食べたでしょ.....あ、あれは?試食できるって。」


 試食という看板を見つけ、アルンに伝えると、アルンは走ってその店に行った。


「試食できるよーどうだい!おっ、そこのお姉ちゃん食べるかい」


「食べる食べる!」


 店の人から2人分を貰い、一緒に食べる。


「美味しいこの揚げ物、輪も食べなよ」


 と言い、食べ物をいきなり口の中にぶち込まれる。


「あつっ、あっつ!あ、でも美味い。カリカリしてて中はプリプリ、美味しい!」


「あっはっは、そうだろそうだろ!揚げ物はうちがこの街で1番だよ!」


 店の人が大声でそう言うと、周りの屋台から


「はぁ?揚げ物は1番はうちに決まってんだろ!」


「違うねぇ!揚げ物は俺んとこが1番なんだよ!」


「なんだと!」「やんのか!」


 と大騒ぎになってしまった。


「あわわわ、どうしようアルン」


 しかし、そこでアルンが


「待ったーー!」


 と言い、騒いでいた人の視線がアルンに向く。


「ここは私があなた達の揚げ物を食べてどれが1番か決めることにしましょう!」


 それお前が食いたいだけじゃん


 それを聞いた人達はしばらく考えたあと、アルンの言うことに賛成し、すぐに調理に取り掛かった。


 調理中、2人で調理の様子を見ていくと、揚げ物を揚げる音がとても食欲をそそった。








「はいよ、おまちどお!」


 最初に出来上がったのは丸井店。


「それじゃぁ、いただきまーす!」


 アルンが一口食べると、周りが聞いても分かるくらいサクッと言う音が聞こえ、思わずヨダレを垂らす。


「美味しい!衣がサックサクで中も噛みごたえあって美味しー!」


 勢いが止まらないままどんどん食べていき、食べ終わる頃に2つ目の店、新八店の揚げ物が完成した。


「それでは、いただきまーす」


 今度はサクッという音は聞こえなかったが、代わりに凄まじい匂いが漂った。


「うまそー」「いい匂い」 「ジュルッ」


 周りの見物人も食べたそうな顔をしていた。


「んー!美味しい!プリプリで美味しい!」


 新八店の店主が腕を組み、仁王立ちでフッと笑った。


「どいたどいた!今度は俺のを食ってもらおうか!」


 今度の揚げ物は衣がたくさんついており、見ただけでサクサクいいそうな見た目だった。


「いただきまーす!」


 予想通り、サクッと大きな音がし、アルンはどんどん食べていった。






「ご馳走様。では一番を発表します」

 見物人と店の人が見る中、アルンが出した答えは


「人によります!」


 と大きい声で言った。


「ふざけんなー!」「ちゃんと決めなさいよー!」


 という声が聞こえ、そりゃそうだと思った。


 しかし、アルンはそんな声を聞いて


「じゃあ、みんなもそれぞれの食べ物を食ってみなさい!私が言った意味が分かるから」


 周りの人は言われた通り、それぞれの食べ物を口にすると、

「確かに」「それぞれに違った良さがあるな」「どれも美味しい〜」


 結局、どれも美味しいということで話がつき、タダ飯を食らったアルンは満足した顔だった。


「食べることしか考えてなかったから、どれが1番とかしったこっちゃないわ。」


 さすがに夜も遅いのでルーナたちの元まで帰ることにした。

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