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無幻の黄昏   作者: ふみりえ
第一部 命の始まり
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第十話 一日を過ごす

学校の教室に入ると、人が数人いたが、その誰にも声をかけずに自分の席に座る。


 やがて教室にいる人たちも各々の席に座り、教壇に人が立つ。


 空いた席は一つだけ、俺の隣の席には誰も座っていなかった。


その机はカッターで切り刻まれ、中にはたくさんの紙が入っていた。


それを他の人たちは気にもとめず、教壇に立っている人の話を聞く。


 帰り道、電車に乗り、イヤホンを耳につける。


イヤホンの外の音は何も聞こえないが、目は見えていた。


俺から少し離れたところに年老いた人と同じ学校の人が言い合いをしていた。


 バレないようにこっそりと目を向けるが、イヤホンで耳は聞こえてないのでどんな内容なのか分からない。


 言い争いは終わらないまま降りる駅に着いたので、電車から降り、そこで意識がなくなった。








「....またあの夢か」


 この世界に来てから2度目の前世の世界での夢を見た俺は頭を上げ、周りの様子を見る。


「輪、起きたのね。大丈夫?」


 目の前にはアルンがおり、上を向くと、あそこから落とされたのだろう、穴があった。


「上で何かあったんでしょ、なにがあったの?」


 ルーナ達を呼びに行こうとした瞬間誰かに押され、落ちてしまったことを話すと、


「そう、それじゃあ飛んで戻ってもその落とした人がいるかもしれないね。一緒にこの先に進みましょうか」


 そう言ってアルンが指さした先には先が真っ暗でよく見えない通路だった。


 アルンが大丈夫と言い、手のひらを広げるとそこから光の玉が現れた。


「魔法の光だよ。これを照らして先に進もう。」


 魔法使いってすごいな、と改めて思い、アルンのあとをついていった。


「輪、猛獣がいるわ。気をつけて」


 少し進んだ先でアルンがそう言い、魔法の弓矢を構える。


 俺も剣を抜き、両手で構え、眼鏡を外す。


 しばらく待つと暗闇からゆっくりと猛獣が飛び出してきたので、すぐに横に回り、首を斬る。


 アルンの方を見ると、アルンも弓矢を構え、数匹の猛獣を仕留めていた。


 眼鏡をかけ直すと、


「まだ居そうだから、気をつけて」


 剣を構えながらゆっくりと進んでいくと


「来る!」


 とアルンが言ったので再度眼鏡を外すと、またも暗闇から猛獣が出てきたので横に回ろうとすると斜め横から2匹目が飛び出てきたので、一旦そっちの方向に剣でガードする。


 しかし、先程はすぐに斬ったのでよく分からなかったが、この猛獣が思ったより力が強く、地面に膝をついてガードするので精一杯だった。


 まずい、これじゃ1匹目の猛獣にやられる。


 そう思った瞬間、襲ってくる猛獣の横腹に矢が貫き、そして俺がガードしている猛獣にも続けて二本目が貫く。


「輪、大丈夫?」


 アルンが手を差し伸べ、そう言った。


「うん、大丈夫。ありがとうアルン」


 お礼を言い、差し伸べられた手を掴み立ち上がる。


「ここはあの猛獣の住処だったみたいね、ということは抜け道があると思う。もう猛獣が出てくる気配はないから大丈夫だよ。」


 そう言われ、剣を戻し、光を頼りに歩いていく。


 しばらく歩くと分かれ道があり、一方の道はそのまま続いていたが、もう一方はたくさんの障害物があり、進めそうにはなかった。


「この先って」


 障害物がある方向には俺でもわかるくらいたくさんの魔力が集まっていた。


「多分、この先が私たちの目的地ね。ここは後でルーナ達と行こうか。」


 障害物の方を後にし、もう一方の道を進んでいく。


「ねぇ、聞いてもいいかな」


「なに?」


「パールから聞いた話だと、アルンは最初、両親の元から離れるのは乗り気じゃなかったみたいだけど、今はどうなの?」


 しばらく歩いてる途中、そんなことをアルンに聞いた。


「もちろん、今は大丈夫。あの時は突然だったから乗り気じゃなかっただけで、それからはルーナ達と一緒の考えだよ。」


 俺の質問にアルンは即答し、さらに俺は質問をした。


「じゃあ、いざって時、両親と戦えるの?」


 その質問をした途端、アルンは顔を俯かせ、立ち止まった。


「わからない。会ってみないと、そんなのわからないじゃない」


 確かにそうだと思い、質問したのを謝ると、アルンはふふっと笑った。


「初めてだね、君から話しかけたの。」


 そういえばそうだと思い、アルンが少し嬉しそうにした。


 なぜ嬉しそうにしているのかは俺には分からなかったが、アルンは やっぱり と言い、その気分のまま歩いていった。







「あそこが出口ね」


 出口の光が見え、アルンが走っていった。


 俺もアルンを追いかけ走りに行くと、アルンがいきなりふりかえり、魔法の弓矢を構え、すぐに打ってきた。


 慌てて横に滑り込み、矢の方向を向く。


そこには顔の頬に矢が付けた傷を負った人がいた。


「あなたね、私たちを襲い、輪を穴に落としたのは」


 その顔は見覚えがあった。


「店の店主....」


 店主は傷ついた部分に手を添え、魔法で治していく。


「いつから僕がいると分かったの?」


「出口が見え始めた頃よ。真っ暗の時は別の道にある大きな魔力で分からなかったけど、出口の光が見え始めて、さすがに大きな魔力を感じなくなった時、2つの小さな魔力を感じたのよ。輪ともう1人、あなたよ。ちょっとお粗末なんじゃないの?魔力を隠すならもうちょっとちゃんと隠さなきゃ」


 店主は図星のように顔をグッとした。


「あなたを捕まえて、あいつらに差し出せば、僕達はもっと楽に生きていけるんだ!」


 店主は腕を前に向け、魔法陣を3つ作り出す。


「輪!どいて!」


 その声を聞き横に移動した途端、アルンの方向から4つの矢が飛んできた。


 その内の3つは店主が作り出した魔法陣ひとつずつに当たり、魔法陣が消える。


 残りのひとつは店主をスルーし、後ろにいつの間にあったのか、四つ目の魔法陣に当たる。


「なっ!」


「言ったでしょ。魔力を隠すならもうちょっと上手くやんなさいって」


 今度は4つ所ではない、たくさんの弓矢が現れ、矢が発射される。


 店主がまたも腕を前に向け、今度は防御の魔法陣を作り出す。


「くっ!くそぉ!話が違うじゃないか!このままじゃ!」


 店主の言ったことが少し気になるが、矢はいくつもの防御魔法陣を貫き店主の体に突き刺さる。


「痛!畜生!こんなはずじゃ!」


 衝撃で後ろに転がり、そのまま店主が奥へと走っていく音が聞こえる。


「追いかけるよ、輪」


「待った!さっきの店主の言ったことが少し気になるんだ」


 追いかけようとするアルンを止め、さっき店主が言った 話が違う のことを話した。


「私たちのことを誰かに聞いたということかな、でも私たちはこんな遠くまで来たのは初めてだし。恨みを買うようなことなんてここに来てからはやってないし」


 ここに来てからはって今まではやってたんかい


 そんなツッコミをしたかったが、今はそれどころでは無いのでスルーした。


「とりあえず、あの男を捕まえて、一緒に問いただしましょう!」


 アルンが走っていき急いで追いかける。








 しばらく店主を追いかけていると、最初にあった分かれ道の行かなかった場所にあった瓦礫がどかされていた。


「この先ね、行こう」


 その道を進んでいき、奥まで行くと、そこには大きな魔法陣が描かれてある部屋があり、その中央にさっきの店主がいた。


「追い詰めたわよ、色々聞きたいこともあるし、降伏するなら四肢切断だけで許してあげるわ!」


 アルンがいくつかの魔法の弓を出現させ、矢をいつでも打てるように準備する。


 俺も眼鏡を外し、剣を抜く。


「遅いよ、もう準備は終わっているんだ」


 店主がそう言った途端、部屋に描かれてある大きな魔法陣が光だした。


「これは、まさか」


「確かに彼女の言うとおり、僕は未熟者だ。だが、こんな僕でもこのたくさんの魔力と魔法陣があれば、君たちを捕まえられる!」


 魔法陣がさらに光だし、そこから何本もの鎖が現れた。


 鎖は俺たち目掛けて飛んでいき、とんでもないスピードで俺たちを縛ろうとする。


 俺は目の能力でギリギリでかわし、横に回る。


 だが


「アルン!」


 アルンは鎖に四肢を縛られ、動けない状態だった。


「くっ、こんなことしたところで、すぐに解けるわ」


 そう言い、魔法を発動させようとするが、上手く発動しない。


「これはっ、魔法無効の鎖、鎖だけならともかく、魔法無効なんて!」


「この魔法陣と沢山集まった魔力でできたんだ、残りの君もすぐに捕まえてやる....」


 店主は疲れているのか息切れをしていた。


「逃げて輪!私が1人でなんとかする。状況が変わった!」


 アルンがそう叫び、動けない体をガシャガシャとうごめく。


 確かに俺もこの状況はまずいと思うし、逃げたいと思う。


 だが、逃げたらアルンがどうなるか...


「ここであいつを倒す!俺の目なら近づける!」


 アルンは口も鎖で喋れないようにされていた。


 だが、何を言おうとしてるのかは分かる。


 ダメだ、早く逃げて


そう言いたいのが伝わるがそれを無視する。


 剣を構え、店主に走って近づく。


 店主は驚いた顔をしながら、ギリギリで防御魔法を作り、俺の斬撃を防ぐ。


 地面からまたも鎖が現れ、後ろに飛び、左手に魔法陣を作る。


 アクアソード


 この部屋のおかげで、こちらも詠唱を言わずに魔法を使える。


 店主の方向から鎖が飛んでくるが、それを右手と左手の剣でギリギリで弾く。


 速い....この目がなければ、アルンみたいにすぐに捕まる。


 しばらく剣で鎖を弾いている間に、店主に潜り込む隙を探すが、最初とは違い、入り込む隙間がない。


 しかし、確かにこの店主、俺と同じで魔法があまり得意では無さそうだ。


 パールやルーナだったら、剣で弾いた鎖も操って、後ろやら横から攻撃してくる。


 そうだ、だったら


「くっ!」


 左手の剣で鎖を弾こうとし、すんでのところでそれをやめる。


店主はそれを見逃さず、すぐに鎖を剣に巻き付け、思い切り引く。


 俺は剣ごと鎖に引っ張られ店主の方へ飛んでいく。


「!!」


 そして剣の間合いに入ったところで、左手の魔法の剣を解除し、鎖から引っ張られるのが止まる。


 店主はまずいといった顔をし、次の鎖を出現させようとするが、遅い。


 ここで俺はこの世界に来て、初めて覚えた剣技を繰り出す。


「切り裂け...かまいたち」


 剣を上向きに切り裂き、すぐに下に斬る。


そして剣をくるりと回し、右に構え、そのまま剣を突き刺す。


 店主は衝撃で壁まで吹っ飛び、アルンにかけられていた魔法が消える。


 途端、アルンが俺の方に来て、興奮した様子で


「やったね輪!今の技ターナから習ったの?」


「いや、俺が作った技だよ。ターナに自分の技を作っとけって言われたから、まだこれだけだけど」


「へぇ....そう...そうなんだ、つまり、あなたも戦えるってことね、じゃこれからよろしくね。」


 アルンが手を差し伸べる。


業の里の人達って握手するのが好きなのかな?


「それ、ルーナと全く同じことを言われたよ」


 俺も手を差し伸べ、アルンと握手をする。


「それで、どうする...あの店主」


「とりあえず、起きるまで待とう」


 俺たちは店主が起きるまで待った。

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