犬も歩けば棒に当たる(棒=魔法少女)
「え〜っと、これはどういう状況なんだ?」
目を覚ますと、魔法少女が倒れていた。
何を言っているのか分からないだろうから詳しく説明しよう。
魔法少女とは、比喩でもなんでもなくみんなが想像したまんまの存在だ。服はフリフリのゴシックドレスで、ステッキを持っている。さらに、近くに喋る小動物なんていようものなら完璧ではないだろうか。
俺は朝食の時に、妹が見ていた魔法少女を題材とした夢のあるアニメを一緒に見ていた。だから、間違いなく分かる。
今、俺の目の前に倒れているのは間違いなく魔法少女だ。
いや、魔法少女が何かなんてみんな知ってるだろう。考えるべきはそんなことじゃない。
自分でも何を言っているのか分からないが、一旦状況を整理すべきだろう。うん。そうしよう。
「確か、学校に行こうとして、いつも通り空から愚民どもが歩いているのを眺めてたんだよな、、。」
まあ、学校の試験でも俺はドベだしあいつらの身体能力的に俺が飛ぶより遥かに早く着くし、どっちかというと俺の方が愚民なんだろうが、、、
「そんで、ふと前を見上げたら黒い毛玉が落ちてきて、近づいて掴んだらいきなり喋り出して。びっくりして空中で3回転半ひねりしながらバク宙したら何かにぶつかって、、そこで意識飛んだのか」
我ながら華麗な身体捌きだったと褒めてもいいだろう。力は弱いけどコントロールだけなら誰にも負けないからな。
まあ、それで事故を起こしていては元も子もないが、、
「プリチーな僕に向かって毛玉とは失礼なやつめ!それに、いたいけな僕の麗華にぶつかるなんて!そもそも、魔法少女でもないのに、空を飛ぶなんて、、さっきの挙動といいお前怪人か?」
「いや、突然毛玉が喋ったら誰でも驚くだろ。てか、誰の挙動が怪人並みの変態機動だってんだ。」
ん?待て、今何が喋った?この辺にいるのなんて倒れてるこの子と、俺くらいだぞ?あれか?俺は空を飛んでる時にこの子とぶつかって頭でも打ったのか?
てか、死んでないよな?攻撃力皆無の俺が能力使って殺人なんて笑えんぞ?そんなことになったら免許剥奪からの両親からの折檻は免れまい。
「あの〜、おーい。生きてる?てか、生きてて?」
「魔法少女はそう簡単には死んだらしないから安心していいぞ。というか、そもそも気絶だってそう簡単にはしないはずなのに、お前なにものだ?それに、ここはどこだ?というか、僕を無視するな!」
質問が多すぎて何が聞きたいか分かんないっての。
てか、こんなにはっきり幻聴が聞こえるって俺けっこうやばい感じに頭ぶつけたのか?というか、頭の中ってよりかは後ろから声が聞こえる気がするんだが、、。
ふむ、まあ、周りには誰もいないしな。
「ふぅ、さっきからうるさいぞ。誰か知らんが少し静かにしろ。」
、、、。そうですよね!誰もいませんよね!はい、やった!恥ずかしいやつ!けど、誰もいないからセーフ!
いやー、こんな痛いところ人に見られたら生き恥もいいと…
「どこに向かって喋ってるんだ?僕は上だぞ。」
「ふぁ!?誰だ!?、、ってさっきの毛玉?見間違いじゃなかったのか?」
「人の話を聞かない奴め!僕は毛玉じゃないって言ってるだろ!質問には答えないわ、1人で勝手に喋ってるわ、お前友達いないだろ!」
「失礼なやつだな。これでも、友達は多い方だ。まあ、変なやつってのはよく言われるがな。」
「そんなことはどうでもいい。お前はなにものだ?怪人か?それに、ここはどこだ、アースにしては魔力の波長が違うし。もしかして、違う世界なのか?」
また怪人か、魔法少女といい、こいつの存在といい、もしかしてそういう事なのか?いや、待て。そんなファンタジーみたいなことそう簡単には起こらないだろ。
それよりも、ハトが人形術使ってドッキリを仕掛けている可能性の方が高いだろ。いや、学外での能力使用は人に向けちゃ駄目だし、真面目なあいつがこの少女まで操ってるってのは流石にないか。
「なあ、逆に聞かせてもらうが、怪人ってなんだ?それに、アース?この星も英語で言えばアースだが、地球って分かるか?」
「なっ、地球だと!?そんな遠くまで、いったいあいつは何を考えているんだ!」
だーめだこりゃ、俺に人の話聞かないとか言ってたけど、こいつも大概人の話聞かないやつだわ。
とりあえず落ち着かせて、状況の共有をしないとな。