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賢者 エレオノーラ


 はやく終わらないかな。


 ギシギシ軋むベッド。はぁはぁ荒い呼吸。耳障りだ。こんな無駄な時間があるならば、魔法研究か魔道具作成をしたいのに。さっさと射精してくれよ。本当に時間の無駄。





 やっと終わったか。持続時間は短いくせに、回数は多いとか。時間は有限なのだぞ。やっと研究に戻れるな。ただ、無駄にした時間に呆れる。



「はぁ……」



 瞬間、殴られた。立て続けに5回。



「………!……………!!!」



 なんか叫んでる。ああ、鼓膜が破れたのか。

さっぱり何を叫んでるのかわからん。まあ、高位貴族の俺をバカにしたなっ!とかそのへんだろう。



 はぁ、なんでこうなったんだろ。

エルは魔法しか興味ないのに。魔王討伐の褒賞に宮廷魔法師団長になることに。地位とか邪魔なのに、『賢者』だけでも邪魔なのに。


 任命され職場で3日もしない内に、副団長に一服もられたみたいだ。昏倒してるうち、ご丁寧に犯罪者用魔力封印の入れ墨を、下腹部に彫られてる。

 しかも、これ、エルが改良した強化型だ……。うん、効果は実証された。まったく魔力が動かない。

 なんでこうなる…………




 高位貴族の令息、甘やかされ、ただのバカに育った副団長。副団長の地位さえ親の権力で就いた、実力もない無能。そんなバカに馬乗りにされ、殴られ犯されるエルはもっとバカ。


 賢者?いいや、ただの愚者。


 エルは研究馬鹿だ、自覚はある。魔法を研究し、3日も御飯を食べ忘れる……よくある。

 

 勇者召喚をした王国。魅了スキルもち勇者。周りはうるさい、異性は近づくな、金の有るものは魅了無効のアクセサリーや魔道具をつけろと。

 勇者に近づこうとすれば止められ。しつこく説教。男に生まれてればなぁ。


 エル自身は、勇者に興味あったのに。聞きたいことが山ほどある。

 異世界のことなど2度と聞ける機会などない。向こうの魔法はどんなだろう。


 スキルだって教えて欲しい。鑑定の儀でスキル『魅了』と『勇者』だと判明してる。

 みんな気付けよ。スキル『勇者』だぞ。

 『賢者』『剣聖』『聖女』どれもスキルじゃない、努力の結果に得た『二つ名』なんだぞ。

 スキルってのは『属性魔法適正』とか『剣術適正』みたいに、個人の伸び易い資質が分かるだけだ。


 勇者にスキル『勇者』は何が出来るか聞きたい。すっごく研究したい。

 魔法も使っていた。訓練中に何か聞きたそうにしてたな。魔力操作の仕方とか、威力の上げかたなんか質問したかったに違いない。

 外野の視線を気にした勇者は、諦めて何処かにいなくなっちゃう。

 魔法を教えて、議論して高め合いたかった。


 無理か。エルは頭の中で色々考えて、そこで完結しちゃう。で、口下手。研究ばっかりで、ほとんど喋らなかったから。

 上手く会話できず、文がぶつ切りとか単語しか言えないもんな。

 どうせ、勇者と仲良く議論など、できなかったさ……。エルが1番わかってる。


 あ。4人での旅、夜営中。エルがいつも着ている黒ローブに黒三角帽子、いかにも魔法使いな服について質問されたなぁ。

 素材は良いのに草臥れているのが、気になったみたいだった。「……形見。…………師匠の」となんとか言葉を紡いだ。それは大切だね、という彼は優しい笑みに共感の目をしてた。


 そのあとすぐに2人が引き離しに来て、会話は強制終了となった。

 そのときの勇者の寂しそうな顔……もしかしたらエルと仲良くしたかったのかな。




「ぎゃっっ!」


 思い出に浸りすぎていた。またバカに殴られた。ボタボタ鼻血が垂れる。

 無視されていると思ったのか。


「…………!」


「おもいしらせてやる」唇動きで言葉を予想する。嫌な予感しかしない。

 懐からナイフが取り出され、エルの脚を押さえ付けられる。ニヤニヤ下衆い顔のバカ。


「っ、やめ、ぎいいいぁぁぁ!!」


 右内腿にナイフが刺さり、動かされる。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!」


 激痛。涙がこぼれる。耐えられず叫ぶ。




 何かが終わり、右内腿に低級ポーションをかけられる。止血がとまる。痛みが少しだけ和らいだ性か頭がまわってきた。



 ぐ、急に髪を掴むな。捨て子のエルを拾ってくれた師匠と同じ銀髪で、大事に伸ばしてるのにっ。


 太股??な、なんだこれ??

 たくさん付けられた傷。も、文字にみえる……



「性奴隷」



 な、ななんだ?息が出来ないぞ……。せ、せいどれい……かえれないってこと?ず、ずっとこのまま?バカに飼われ、アハハハ、笑うしかないわ。フ、フフフ。


 壊れてきた頭を自覚すると、ふっと勇者の優しい笑顔が浮かぶ。


 ほんとエルはバカ。自分が辛くなったらすがるのか。みんなと一緒に彼を避けた、冷たくした、ずっとずっと。

 そもそも何処だか分からない場所。届く訳がない声。でもでもでもでもでもでもでも……



「…………た、すけ、て………………ゅう、しゃァ」



 助けを聞いたバカが、ゲラゲラ嗤っている。


 

 わかってるさ。はぁ。バカの嗤い顔が嫌になり目をとじる。





「お待たせ。エレオノーラ」




 固まる副団長。目を見開くエレオノーラ。



 て、転移魔法!?失われた!エルが古文書から復活させようとしてた!?あんなに大きい魔法陣、はじめてっ!!ぁぁぁ、消えちゃう……


 残念に思いながら、勇者を見る。彼が何か言っている。聴こえないので、自分の耳を人差し指で、とんとんっとつっつく。

 察してくれたようだ。よかっ…………

 全身に鳥肌が立つ。冷や汗が止まらない。


 勇者が無表情、いや、無だ。こわい。


 バカが喚きながら剣に手を掛け、れない。

一瞬で勇者がバカの前に移動してた。動きが見えなかったよ?

 

 勇者の両手が動いた?え?バカの両耳に勇者の指が根元まで刺さってる?よ、よ容赦ないのね。

 

 指が抜かれ、血が吹き出す。ゴンッゴンッと殴り鼻の骨を砕く勇者。

 悲鳴を上げて転がりまわる男の太股を、器用に他の場所に当てないよう、剣でズタズタに切り裂く。

 ひとしきり苦しませると、首をはねた。



 終わると勇者に魔法を掛けられる。ごめんね先に治すべきだったって??耳が聞こえる!?傷痕にされた太股もツルツル!?跡は治癒魔法できえないんだぞ!再生魔法!?


「教えて教えて!さっきの転移魔法も!再生魔法も!スキル、スキル!魅了掛けて!知りたい!どうなるの?体験したい」


 興奮のあまり、まくし立てる私。精液と血がべったり着いたまま掴まれ、困る勇者。


「自害の心配がないから魅了しない?友達関係で良い?なるなる友達!だから魅了かけて!お願い!掛けてくれるなら、好きに犯していいから!」


 想像してた展開と全く違い、困惑する勇者。なにか諦めたように、ため息をひとつ。魔法を起動……


「転移魔法!」はぁー


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