紅莉栖だから、アゲハだから
「……あのね。あの……」
どうしても、言葉が詰まる。自分の弟、そう理解していても、一番に好きな人。異性として愛してる。前世では血の繋がった姉弟……日本の法律では絶対に結ばれない恋だった。
両親を早くに事故で亡くした私たち姉弟。ゆーくんとはひとまわり近く、歳が離れていた。
私は家事が全く出来ないダメなおねーちゃんだったが、日本人女性にしては長身、そして中性的な見た目でモデルとしての『王子様』の異名が付く位には私は人気者になった。
私がモデルとして稼ぐ裏側で、ゆーくんは小学生の内から料理や洗濯など家事をするようになった。最初は冷凍食品が多めのお弁当や、レトルトを温めただけの食事だった。年の離れた弟に家事を任せっきりで申し訳ないとは思っていた……。
あっという間に、ゆーくんは料理の腕をあげ、家事全般もテキパキとこなすようになった。正直、ゆーくん無しではまともな生活を出来ない自覚があるレベルで私は家事が……壊滅的である。
そう、米は洗剤で洗って良いのかな……?
ゆーくんはあっというまに家事全般の腕をめきめきと上げ、料理の腕は体調及び体重維持に特化した栄養士のような専門的なレシピをこなす様になった。掃除や洗濯もそつなくこなす、ゆーくん……正直に言えば、弟にブラやショーツを手洗いしてもらっている始末。『陰干し、陰干し♪』なんて鼻歌まじりに。ああああ!姉とはぁ!いったいっ!神は死んだっ!
こんな過去回想を走馬灯のように再生してしまうくらい、いま現在、アゲハは錯乱している。
今年の7月7日勇者の実姉の弔いの宴の最中に、紅莉栖の転生者アゲハは前世の想いを伝えて、いまここに、転生し生きていることを伝えようとしていた。が、いざそうしようとすると言葉が出てこない。
結局、『あの……』『えっとね……』を繰り返しているうちに『……なんでもないの』と勇者に言い残し、アゲハは夜の空高く飛んでいった。
勇者の頬にポツポツっと雨水があたったような気がした。




