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元村娘のレナ


「あはは、またひろってきたんですか?」


 ゆーしゃさまが冒険者ギルドのクエストからかえって来ると、知らない女の人を連れてきた。

 ポイ捨て。ダメ。ゼッタイ。と両手をばってんにして首を横に振ってる。ゆーしやさまはその言い回し好きですよねぇ? 

 出会った頃は無学なあたしにはよくわからないと思ってた。長く一緒にいて、その場のノリで生きてるっぽいのはわかった。

 

 アンナが女の人をお風呂の方へ案内していく。あぁそう言えばアンナが拾われて来たときも、こっちの男はシジョチュー? ユニコーンなんかな? とか訳のわからんこと言ってたよーな……。ユニコーンは魔物でしょ。長い角でゴブリンもオークもブッさして食べちゃう凶悪な魔物だよ。村娘だったあたしだって知ってるのに。


 テキトーなゆーしゃさまだから、あたしは今ここで生きて笑ったり呆れたり出来てる。なにしろあたしはゴブリンの巣からゆーしゃさまに助けてもらったんだから。



 あの頃、あたしのいた村は飢饉でみんな飢えていた。ぐーぐー鳴くお腹をおさえ、山に木の実か山菜を探しにいったんだ。

 村の近くは取りつくされ、気がつけばかなり森の奥にきてしまった。これがまずかった。すこし離れたところゴブリンがいた! 2匹って! すぐに来た道を戻ろうとした瞬間、いつの間にか後ろにいた別のゴブリンに組み敷かれた。


 そりゃ抵抗もしたさ? お腹減りすぎて、ぜんぜん振り払えない。すぐに巣に連れ拐われ、手足を押さえつけら、あぁ、あたしの苗床人生スタートォ……なんて、やけっぱちなこと考えいたら、なんとびっくりっ!


「ゴブリンって! 順番守るのォ!?」


 状況を忘れ大声を出してしまった。きっとゴブリンに苗床は貴重なのだろう。知らんが。この体験を後日ゆーしゃさまに話したら、ゴファッ! ゲフゲフッ!と紅茶を吹き出しむせてた。ちなみにこの話はあたしの鉄板ネタだ。


 脱線してしまった。まぁそのあとは覚醒と気絶をなんども繰り返し、何日たったかもわからない。起きてる時は『はやく死にたい』しか考えられない。


『ぅぅん?』何だろう、桶で水を撒くような音が何度も聞こえてきた。近付いてくる。首を回し眼を向けると、黒髪の男の人がゴブリンをズバズバ切り捨ててた。


 女の子? ポカンとした顔で呟き、あたしと視線が合う。あたしが次に何と告げるか解っていたように、「魅了最大で発動」と憤怒と悲哀をない交ぜにしたような顔でスキルを発動させていた。


 すうっと死にたい気持ちが消え、ここであったことも、昨日の夢ように薄ボンヤリとなる。

 ぼうっとしていると、帰る場所があるか聞かれた。


「……穢れた村娘に行くとこなんて……親にも村にも捨てられる……」


 黒髪の男の人はギリギリと歯を食い縛ると絞り出すように『ならば僕が拾う』と言うと高額そうなマントであたしを包む。


「よごれちゃうよ……」


 汚くなんてない! もう死なせない! って、これは分かる。いくら無学なあたしでも分かる。彼は過去の誰かとあたしを重ねてる。

 抱き締めて、慰めてあげたい……ゴブリン汁まみれだけど。


 ここからは速かった。あたしを抱き上げると、彼は全速力で走り出した。あっと言う間に森を抜け、風より速く草原を抜け王都についた。


 そのまま門番も無視し、すっごい豪邸に運ばれた。ヤダッて言ってるのに、ひっろいお風呂で全身洗われた。お風呂が終わるとゆーしゃさま自ら野菜をすりつぶしたスープとすりおろしたリンゴを、アーンでたべさせてくれた。


 お腹が久方ぶりにいっぱいになり、うとうとしだすと、大きなベッドへと運ばれた。そのままゆーしゃさまの添い寝ですぐに眠りに落ちた。


 もうすぐ夜明けかというころに、ゆーしゃさまの苦しそうな寝言に目が覚めた。「ねぇさん、ねぇさんいかないで」と。ゆーしゃさまをぎゅっと抱き締め、髪を何度も撫でてあげる。やがて、ゆーしゃさまの顔は安らいだ物になり、スースーと寝息を立てていた。


 次の日からも、甲斐甲斐しくゆーしゃさまに介護される日々。体調も戻り、ゆーしゃさまと初めて市場に行ったあとからゆーしゃさまは徐々に変わっていった。


 栄養不足の影響で、あたしは成人とみなされる15才なのに、身長は140半ば、胸などつるべったん! そばかすあるとか子供にしか見えないっ。


 ただでさえ、過去の魅了スキルもちのせいで、傾いたことのある王国は魅了もちのゆーしゃさまを露骨に避ける。


 どう考えても魅了のゆーしゃさまが村娘(しかも子供)を無理矢理連れてきたようにしか見えない。弁解しようとしていると、ゆーしゃさまは自死と真実を語ることを禁止された。ずるい。


 だんだんとあちこちから気に入った女をさらってくるような言動を、街中ではするようになった。ゴブリン苗床のあたし、ではなく、村で気にいった幼女をさらってきたような言動をするようになった。


 あたしを救い、自分の在り方を確立したらしくしばらくすると、ひろっちゃったー。と自重止めたゆーしゃさまは世の中の理不尽に絶望した女を連れてくるようになる……。





 ふふっ、良かったですね、ずっとずっと気にかけてた剣聖さまが()()()ですね。

 剣聖ゲットだぜー! じゃないんですか? ぐぬぬ? あたしをにらんでも無駄ですよ?

 ぜーんぶ知ってるし、ゆーしゃさまの最初ですよ? 元村娘ですが、ここでは王族や貴族だろうがあたしの意見は無視出来ないでしょ?


 さっさと剣聖さまのとこいって、ぜんぶ吐き出してこいシスコン!(だっけ?)


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