4月16日-2 始まりの数字は氷漬け②
本当は前回とひっつける予定でした。
「--出ろ、な!! ……な?」
「……ここどこだ……って寒っ!?」
「さ、さ、寒いっ!!」
「……雪?」
「雪ですね」
光が収まった時、俺らは銀世界にいた。
見渡しても雪しかない。降ってはないものの、空は黒い雲で覆われており、そこそこ暗い。
変わった点はそれだけじゃない。
「あれ、本が……なんだこれ、な?」
持ってたはずの本が無くなっており、代わりに腕輪が一個増えていた。
宝石が1個はまっていて、その中にあの本が見える。本に気付いた瞬間、宝石から本が飛び出てきたが、光ったりする様子はない。中を見ると、何も書かれてなかったはずなのに1ページだけ魔法陣が描かれていた。この魔法陣、石碑のと同じだよな、な……?
戻そうと思うとすぐ宝石の中に入ったから、俺の意思で出し入れできるみたいだ、な……
「……寒い、な」
「あかん、私と拓海以外が寒さで動けてない」
……本のこと先に考えてたのは現実逃避もあったんだよ、な。
「た、助かった……」
「突然冬になるとか絶対あり得ない、と思ってても準備しといて良かったな、な」
「さ、さすが……」
リュックの中に、万が一を考えて防寒着も大量に入れていたため全員に貸し出す。
冷気、というか寒さにめっぽう強いひいや、ロボである拓海は必要なさそうだけど、な……
その後、道のような窪みを発見し、それに沿って歩くことにした。ここに留まっても助けとか来そうにないからな、な……
「……なぁ、圭。ここどこか知ってるのか?」
「俺も分からない、な……多分異世界だ、な」
「い……えっ、異世界!? 嘘……じゃないみたいだね……」
「流石にこの状況で嘘は言えんわ、な……」
「僕のデータにも、該当する地域は入ってません……和さんがインプットし忘れた地域があるとは思えませんし」
「どー考えても、あの魔法陣でどっか飛ばされたんでしょ……はぁ、久々の異世界沙汰だよ……」
「……前に話は聞いてたが、異世界行きまくってたってのは嘘じゃないんだな」
「えっそうなの!?」
「なー……流石に一面銀世界に飛ばされたのは初めてだが、な」
……俺やひい、拓海は慣れてるけども、な……行人と彩花は大丈夫か、な?
もしもの時は守らなくては、な……
「……そうだ、これを渡しておく、な」
「えっ? ……ネックレス?」
「和……折原和の事は知ってるよな、な? そいつが作った言語翻訳機だよ、な」
「はー……って、翻訳機? なんでそんなもん俺らに渡すんだ?」
「異世界って言っただろ、な? 言語が通じない可能性が高いんだよ、な」
「これを着けていれば通じるの?」
「らしい、な」
「……ナニモンだよコレ作ったやつ」
……なんだろう。異世界行くたびに誰かに説明したり渡したりしなきゃならん気がする、な。
……いや、異世界に何度も、しかも初の人巻き込んで行くとか無いよな……無いよな、な?
「……あっ、家がある!」
暫く歩いていると、遠くに村らしきものを発見した。
雪国テーマのアニメで見るような丸太で出来た家が並ぶ……が、近付くにつれて違和感を感じた。
「……あれ?」
「柊?」
「あの町、真っ暗だね」
「……なー。それか、な」
ひいに言われて気付いたが……村に明かりが見えない。更に近付くと、どこの家明かりがついてない事に気が付いた。
普通なら、電球とか火とか付いてて明るいはずなんだが、な……街灯らしきもんもあるが、それも明かりがついてない。
「……ってことは、ここ人いないのか?」
「そうみたいですね……捨てられたか、あるいは避難しているか」
「うーん……寒くて死にそうだけど……勝手に借りたらダメだよね……」
「なー……だが、背に腹は代えられん、な。空き家を見つけて勝手に借りようか、な」
「……村を捨てて逃げたのでしょうか?」
更に数分後。村に着いたが……どの家も鍵がかかっていた。流石にこじ開ける気はまだない。
しかし……窓を覗くと、誰かが住んでいる気配はなく、どの家もかなり放置されてたかと思えるほど埃が積もっていた。
鍵を閉めて村から離れてそのまま……というのはあり得るが、なんか嫌な予感がする。
「どうすんだよ……俺、死ぬのか?」
「絶対死なせねぇよ、な……って言いたいが、フラグになりかねないんだよな、な」
「……今、普通に言ったよなお前。フラグ立ててたら末代まで呪うぞ……」
「そこ、漫才しないで……ここからどうする?」
「テントなら入れてるが……寝てる間に何かあったら対処できない、な……そもそも暖を取らないと死ぬんだよな、な……」
その時、村の外れに少し大きな屋敷が見えた。
しかも、光が灯ってる事にも気付いた。
「お、おいアレ……!!」
「……行くしかない、な」
運がいいのか、それともシナリオか。
「すみません! 誰かいますか……!?」
開けて出迎えてくれたのは、ダウンジャケットのようなものに身を包んだ少女。
「旅のものなんですが、一晩泊めてくれませんか……?」
「……」
無言で中へと手を示す少女と、入ろうとして違和感を感じ、立ち止まるひいと拓海。
そして、その違和感の正体である、入り口で立ち止まる俺ら3人。
「……行人、彼女は敵か、味方か、な?」
「……どっちでもない、んだよなぁ……」
「ありがとう、な……疑ってすまない、な」
「……」
彼女は無表情のまま俺らを見る。
「けー……圭君?」
「……いや、なんでもない、な」
「ご、ごめんなさい。ちょっと知り合いに似てて……」
謝りつつ、俺らも部屋に入る。
「……名前を聞いてもいいですか、な?」
「……レム」
「レムさん……ありがとうございます」
彼女……レムさんは、個室を貸してくれた。どうやら元旅館だったらしい、な。
目で異能者かどうか見えないから、人ではないことは分かった。
だが、それは関係ない。
ある個室に5人で集まる。
「圭さん、行人さん、彩花さん。レムさんを見たときから様子がおかしいですが……」
「……誰が説明するか、な」
「圭くんじゃない……?」
「だな」
「えっ、私と拓海に隠し事?」
「隠し事ってわけじゃないけどな、な……」
宿泊学習の帰りに起きた、謎の現象を話す。
「あの時の……そういうことですか」
「えっどういうこと?」
「俺らが見た5人の中の1人、レムさんなんだよな、な」
「うん」「だな」
「……えっ?」
「……やはりそうでしたか」
最小の素数「2」が導く始まりの話。
そして、俺らの物語の本当の始まりである。
「今思うと……暖取り、彩花が何か描けば良かった気がするんだが」
「寒さで忘れてた……色ペンあるから絵の具出せなくても何か描けたんだけど……あー! 絵の具凍ってる!!」
「寒かったもんね……」
「そういう問題か、な?」
「とりあえず絵の具も暖めましょう」