たとえ離れていても、心が通じ合っていれば大丈夫だと、僕はそう思っていた
NTRっぽく書き出してますが、そんな要素はありません。
カノジョと遠距離恋愛になってしまった。
僕は家業を継ぐ、カノジョは都心の大学へ。
まあしょうがないといえばしょうがないことだ。
休みには帰ってくると言うし。
だとしたら、僕にできることは、また、僕のところに帰ってくるということを信じるだけだ。
ある日、カノジョからメールが来た。
カノジョはテニスサークルに入ったのだが、そのサークルの皆と合宿に行くらしい。
何でも孤島のリゾートだとか。
羨ましい限りだ。
ただ、集合写真を見たのだが、どう見てもチャラいイケメンが多いのは気になる。
彼氏としてはとても不安だ。
だが、カノジョを信じて送り出すとしよう。
僕は楽しんでおいで、土産話を待ってるよ。
そうメールした。
これが間違いだったんだ。
今の僕は、そのことに気づく由もなかった。
「やあ、噂の彼氏くん、見えてるかな」
カノジョからテレビ電話が来た。
だが、取ってみると、そこに出たのはチャラ男の一人だった。
「いやー、ほんとにごめんね。まさかこんなことになるなんてな」
そこには変わり果てたカノジョの姿が写しだされていた。
しいて言えば、巨大かつ冒涜的な神話生物めいた姿。
明らかにカノジョだとわかる顔が所々に生えており、そして奇声、嬌声、悲鳴、絶叫、様々な声をあげていた。
そして、よく見れば、電話をかけてきたチャラ男も重症であり、余命が幾ばくも無いように思える。
「本当にごめん、まさか、メンバーの一人が魔導書持ち込んで、カノジョを媒介に邪神召喚するなんて、思わなくてな」
そりゃそうだ。
そんな事予想できるやつがいたらすごい。
「カノジョはもうあんたの知る、カノジョじゃ、ない。どうか、」
そういったところで、カノジョだったものが振るった触手が、チャラ男を物言わぬ肉塊に変えた。
「あのとき、行かないでくれ、そういえば良かったんだろうか」
だけど、今更過去を嘆いても仕方がない。
チャラ男の最後の望みが何だったのかはわからない。
変わり果てたカノジョも何を思っているのかわからない。
ただ、僕は全てを終わらせるべく、家業の道具、対邪神用の装備に手を伸ばした。