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とある研究者たちの一幕  作者: 鎌瀬 狗
2/2

彼の場合

男性用1人用台本



【研究職の男性】

彼女に告白された

そして……つい振ってしまった


僕は彼女のことが好きだ

嫌いじゃない

むしろ大好きだとマントルを超えた先の住人にまで届けてみたいほどだ


……実際にやったら彼女は赤面し、僕のことをぽかぽかと可愛らしく殴ったあとにその行為についての非合理性を永遠と語るだろう


まぁ、その姿すら愛おしいと思うのだけれど


それは置いといてだ

僕が思わず振ったのには理由がある

それは単純明快にして複雑な理由


プライドだ


僕のちっぽけなプライド

自分の口から言いたい等という理由から断ったのだ


僕はすぐさま告白し返した


僕たちの相性を数値で表すと97.92%

幼い頃からの付き合いや共に寝食をしたことや今でも研究を共にしていることがこの数値に現れている


100%ではないのはこれからのデートや愛という不確定なものを肥大化させ、今研究している脳の電子化プロジェクトが成功したら一緒に愛をプログラムする、という未来的観測を込めてだよ、と


しかし、彼女はなにも応えはしなかった


……いや、出来なかったと言った方が正しいか


彼女は振られたという事実が受け止め切れずに固まってしまっている


きっと脳内で色々と考え、纏まらずに焦っているのだろう


その証拠に顔中から汗が噴き出してきている


僕はその状態から直す術を知っている

しかし、しかしだ


告白すら勇気が出ずに彼女に先を越されてしまったヘタレなこの僕にその様なことができるのだろうか?


……いや、いやいや、ここでやらなければ男ではないだろう


僕は研究者である前にひとりの男だ


この研究だって、彼女には言っていないが、彼女とずっと一緒に居られるように始めたものなのだから


さぁ、さぁ、さぁいけ!

身体よ動け!


お前の身体はなんのためにある!

お前の身体は彼女を愛すためにあるのだろう!ならば動くんだ!


(間)


……これがホンモノのキスというやつか

キスは甘酸っぱいさくらんぼのようだと摩訶不思議なことを先輩は言っていたが味なんてしないじゃないか

これだから詩人ぶって喩える人は嫌いなんだ


だけども、なんだかキスをする前よりも彼女が一段と可愛らしく

……というより愛おしく思える


なんだ、なんなんだこの現象は……

僕の知らない現象だ


もっと、もっと彼女が欲しい

もっと深く愛したい


……そうか、そうかこれか!

これがさくらんぼか!


あぁ、脳の感覚が麻痺してくる

これは麻薬だ!

これは合法麻薬だ!

愛は合法麻薬なんだ!


依存性も高く、なんとしてでも手に入れたくなってしまうなんて危険なんだ!

僕の手元から絶対に離さないぞ!



……あや、彼女が限界を超えて気絶してしまった


結局、僕の告白は聞こえのだろうか

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