咀嚼
くちゃ、くちゃと口の中で音がする。
音は耳や口だけでなく、こめかみ、頭蓋骨へも響く。
べちゃっと手に食物の屑が付く。
もはや、食物は食べ物という奇麗なものではなく、
ただ、生命が食す、食物なのだ。
何度も、何度も、何度も、噛みしめては、
咀嚼音が体や外界に響く。
生きていくためなのか?
いや、そうじゃない。
この言葉に表せない苦しみを、
この表現できない切なさを、
この無力なこのわたしを、
ただ、吐き出すために
食べて、食べて、食べつくして。
食べても食べても満たされない。
胃は破裂しそうなくらい膨れて、
もう食べられないって体は悲鳴をあげるのに、
それでも私は食べるのだ。
吐いても、苦しんでも、食べるのだ。
このストレスといわれる悪から逃れるために。