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GottJagd -神狩り-  作者:
巻き戻してやり直し
15/18

ヘクター

『Hector』って、あの時の敵の神のコカトリス?

人型になった時は、こんな人間っぽくなかったよね?

なんか、3メーター近い化物だったよね?


それが、年の頃は12歳位かな、ごく普通の人間に見える。

そして、全身フルプレートの高そうな装備に身を包んでいる。

腰に下げている剣も店売りで一番高いやつだ。


「人間って、防具で防御力上げなきゃならないから面倒臭いぞ。

 金かかるし・・・金で防御力を買うって感じなんだな。」


なんて事を言っている。

金持ちだなー・・・って、そんな事より


「どゆこと?てゆーか、何でここに居るの?」

「やー、あの時は悪かったねー」


なにこの気安さ。

元々こういう人なの?

これもロールプレイってやつ?お芝居?


「そうだよ。あの時の俺は魔王設定だったから。

 畏怖というか、恐怖支配というか、人間にとっての絶対悪というか、そういう設定でね・・・」


あー、神というか、魔王って事でやってたのね。

なんだよ魔法設定って、自分設定だったのかよ。

自分で作った設定に沿って、一所懸命演じていたわけね。


「で、それはいいけど、なんでこっちに居るのさ。」

「いやね、恐怖支配は良かったんだけど、いや、良くないか・・・

 皆に嫌われまくっちゃってね。

 まさか、あの土壇場で味方に裏切られるとは思ってもみなかったよね。」

「で、こっちに逃げてきたと」

「そうなんだよね。神性を失った後に討伐隊組まれちゃってさ。

 でも、俺って結構強いじゃん?神性によるステータス補正と一緒に『エクストラ防御』失ってもそこそこ強いわけよ。

 なにせ、創成期からプレイしている廃人だしね。

 だから、全員返り討ちにしてやったら、いつの間にかアラインメントが反転してブルーネームになってたじゃん?」


「「「なってたじゃん、じゃねーよ!」」」


「それで、仕方なしにこっちに亡命して来たってわけ。アルギヌと一緒だろ?」

「全然違うから。私はそんなのじゃないから。」


「知らなかったんだけどさー、アラインメントを反転させて境界を超えると、面白いのな。

 体内時間巻き戻って姿も人間っぽくなるのな。

 まあ、あの地下坑道でアルギヌのピンクの幼生ドラゴン見た時は吹き出しそうになったけどな。

 でも戦闘中に笑っちゃだめだろ?ちゃんと演じないと、相手に失礼だろ?」


新たにキャラを作り直したのかと思ったら、どうやらアラインメントを反転させて領地境界を超えると、体が再構成されるらしい。

能力とか、スキル、財産なんかは持ち越せるみたいなんだけど、ステータスは巻き戻されて子供からやり直しになってしまうとのこと。

そこからまたステータスアップを図るのは、結構大変みたい。

一見、キャラの作り直しと大差無い様に見えるけど、敵からは狙われまくるし味方からも相手にされなくて、パーティーに入れてもらえないとか、嫌がらせされるとかがあるので、いっそ名前変えてキャラ作り直してしまったほうが楽なんだとか。

唯一の利点は、向こうから持ち込めるスキルが使える事なんだけど、よっぽど思い入れが有ったり有用な物でない限り、こっちにも類似の魔法やスキルは存在するから、それほど拘る必要もないみたい。

そして、ボクの方に向き直って


「知ってるか?向こうに居た時のアルギヌは、真っ赤な鱗のドラゴンで、恐怖の焔龍、真紅のファフニールって呼ばれてたんだぜ。

 その心は、口が悪くて口から毒を吐く・・・・・・」


ゴイ~~ン・・・・・・


全部言い終わらない内にアルギネ杖が振り下ろされてヘクターの脳天にヒットした。

ボクはその話題は地雷なんだと認識した。


「・・・ってー!!・・・くはないけど、キャラはちゃんと痛そうにするのな、面白い。

 それはともかく、こっちに亡命したのはいいとして、俺って有名人じゃん?悪い意味で。

 だれもパーティーに入れてくれないわけよ。

 こっちでも討伐されなかったのは良かったよ。

 人間側はモラルあるわー。

 それで、ひょっとしたらお前らならパーティーに入れてくれるんじゃないかなーと思って待ってたわけ。」


よく喋るわー、この人。

ヘクターの中身の人ってこんな感じだったんだとちょっと親近感が湧いた。

しかし何故ボク達なら入れて貰えると考えたのだろう?


「俺はかまわないぞ。丁度お前位の子供探してた所だし。」

「私も、構わないわ。」

「じゃあ、ボクも。」

「おっ!そうか、ありがとう。助かったわー!。

 アルギヌ、アーサー、そしてダイスケ、よろしくな!」


あ、入れてあげるんだ。

拘らないんだ。

アルギネとか、ロールプレイング推奨派だもんね。

それにしても、ヘクターのすごい笑顔。

これは、中の人も今笑顔ってわけだよね。

本当に悪い人ではないんだろうなー。

って、ボクの方もついうっかり嫌そうな顔しないように気を付けなくちゃ。


ボク達は、4人パーティーを組んだ。

大陸側の緩衝地帯まで来ると、何組かは既に戦っている。


「じゃあ、アーサーと俺とダイスケが前衛で、後衛がアルギヌな。」

「なんであなたが仕切るのよ。」

「まあまあ、妥当だろ?」


「ちょっとまってーー!!

 何でボクが前衛なの?デコピンで死ぬんだよ?世界終わっちゃうよ?いいの?」


マジで無理でしょ。

何で皆スルーしてるの?!



そんな抗議をしている間にマッチングが完了したらしく、戦闘が開始されてしまった。

相手は前衛がスケルトンとオーガの2体で、後衛にアラクネとハルピュイアの2体が居る。


「まってーーー!!!」


ボクの血の叫びは華麗にスルーされ、敵のスケルトンの持つナタがボクに向かって振り下ろされた。

ボクは必至にその一撃を紙一重に避けると、アーサーの大剣の一撃が前衛の一匹を屠った。

続けざまにオーガの棍棒がボク目掛けて振り下ろされたが、それも間一髪避けると、アルギネの攻撃魔法が炸裂する。


「なんでボクばっかりー?!」


アラクネの縛糸がボクに向けて発射されたが、それもなんとか避ける。

すかさずアルギネの火炎魔法がアラクネを包む。

そして、アーサーがハルピュイアを仕留めて、戦闘はボク達のパーティーの勝利となった。

経験値が分配されて、ボクは2歳になった。

流石に反則級に強いよこの2人。相手を一撃だよ。

普通これをパワーレベリングって言わないの?

大丈夫なのー?

あの時みたいに一気に10歳以上瀑上げしなければ、少々は見逃されているみたい。

だって、相手が承認しなければ、そもそも戦闘は成立しないのだから。


一戦を終えて


「ひどくない?!ボクばっかりタゲられたよ?!」

「でも、攻撃当たらなかったろ?」

「ま、まあ、避けたけどさ・・・・・・怖いよ!」

「大丈夫大丈夫、当たらなければどうということはない。」

「ヘクターは、なんにもしてなかったよね?」

「ダイスケお前、『エクストラ回避』持ってるんだろ?当たらないって」

「そんなの持ってないよ!」

「「「えっ?!」」」


「持ってないよ・・・」

「いや、よく見てみろ、ステータスパネルの所に書いてあるだろ?」

「何も書いてないよ?」

「あれー?おかしいな、獲得スキルは巻き戻しでは無くならないと思ったんだけどな・・・」

「そのはずよ。」


「ええっ?ひょっとして、回避じゃないのか?」

「一所懸命避けてるんですけど?」

「まさか、素早いだけ・・・なのか?」


どうやら皆、神性で付与されるエクストラ能力の内の、『エクストラ回避』をボクが持っていると思っていたみたい。

ヘクターなんか、絶対そうだと確信していたみたい。

実際戦った本人だもんね。

素早さだけで必死に避けていただけだったとは・・・


ちょっと作戦会議。

実は、ボクをタゲらせて、一回分の攻撃をスカらせて、その隙にこっちの攻撃を当てる、という作戦だったらしい。

偶に攻撃が当たっても、戦争での死亡以外なら蘇生出来るので、取り敢えず心配はしてなかったんだと。


「ヤバイじゃん?」

「ヤバイわね。」

「ヤバイな・・・」


作戦変更。

ボクをアーサーの後ろの後衛に下げて、タゲられたらアーサーが盾になる事になった。



第二戦。

今度の相手は5人(匹?)パーティーだ。

前衛がラミアとアラクネとゴブリン、後衛がセイレーンとゴースト。

戦闘開始とともに、アルギネがボク達に物理防御と魔法防御の魔法を全員にかける。

2魔法同時詠唱だ。かっこいい!

敵のゴブリンが後衛のボクをターゲットして攻撃するが、それをアーサーが城壁の盾でブロック。

アルギネが魔法でズドン。

ボクが攻撃のチャンスと一歩踏み出したら、アルギネがボクの襟首を掴んでひょいと後ろへ下げる。

ラミアがボクに毒攻撃をすると、アルギネの防御魔法のバリアーがパリンと砕け、効果を相殺した。

その隙きにアーサーの大剣がラミアを屠る。

ボクが必殺の正拳ナコーをお見舞いしようと一歩踏み出すと、アルギネがひょいとボクを後ろへ下げる。

アルギネがボクに防御魔法をかけ直し、アラクネとセイレーンに火炎魔法攻撃。

3魔法同時詠唱だね。かっこいい!

ボクが残るゴーストに電光フィストを叩き込もうと一歩踏み出すと、アルギネがボクをひょいと持ち上げて後ろへ下ろす。

同時にアーサーの大剣がゴーストを屠る。

ボクらのパーティーが勝利!

ボクは3歳に成長した。


「って、ちょっとまてーーーー!!!

 面白くない!面白くない!!活躍したいー!!」

「だって、お前すぐに死ぬじゃん」


ヘクターがニヤニヤしながら言う。


「そういえば、二戦ともヘクターは何もしてないよね!?」

「ま、居ても居なくても良い数合わせ要員だから。」

「ひっでー。毒吐きファフニール。」

「ヒーラーを敵に回すとはいい度胸ね。

 戦闘中に何故か被毒したり、いつの間にかステータスダウンしていない事を祈るわ。」

「うっわ、こええ。」


「本当にやるからな、気を付けろ。」


アーサーがそっと耳打ちしてきた。

マジかー・・・


さて、ボクの苦情を聞き入れてもらい、前衛に戻して貰うことになった。

大体、武闘家を後衛に入れてどうするんだよって話だよね。

はいはい、一所懸命避けますよ、どうせ攻撃力無いし・・・いまにみてろー。



第三戦。

今度はヘクターも攻撃に参加することになった。

参加せざるを得なくなった・・・だよね。

戦闘中に気が付いたら毒に侵されてたなんて嫌だもんね・・・・・・

今度のマッチング相手は、ゴブリン、スケルトン、ジャイアントオーガー、マンティスのパーティーだ。


「・・・」

「・・・・・・」

「?!!」


あれ?どっかで見たことの有る様なパーティーだぞ?


「あ!!!」

「お・・・おま・・・・・・ばっ・・・!」

「アルギヌじゃねーか!!!何でOK押したー!!!ヘクターも居やがるー!!!」

「ヘクター、やっておしまい!ブレス攻撃!」


どこの悪玉美魔女ですか?


「チッ!」


すごく嫌そうだ。

ヘクターはコカトリス・・・ぽいものに変身し、石化ブレスで4匹を一瞬で石化した。

そして、アーサーが横に薙いだ一太刀で4匹を粉砕。一瞬で勝負は付いた。

そして、アルギネは爆笑して腹を抱えてその場で転げ回っていた。

アーサーは気の毒そうにヘクターを見ている。

ボクはどっちの態度を取ったらいいのかわからず呆然と立ち尽くしていた。


「だから嫌だったんだよ!」


そこに居たのは、黄色いひよこ。

でっかいひよこが居た。

上半身は黄色いひよこで、下半身は青いトカゲの変な生物。

正面から見ると、大体ひよこに間違い無い。

そういえば、体内時間が巻き戻るって言ってたっけ。


「哀れみの目で見るんじゃねー!

 そこ、いつまで笑ってんだー!!」


アルギネはまだ立ち上がれないみたいだった。

ボクは4歳になった。

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