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第45話

選び出した光球のイメージの中で、聖女様と魔王が喧嘩をしていた。

「誰のおかげでここまで来れたと思っているの!?」

「汝は余を奴隷のように扱っているだけではないか!?」

……


まあ、痴話喧嘩だ。父と母の喧嘩を見ているようだ。これが聖剣誕生と関係があるとは到底思えない。ハズレを引いてしまったなあ、と思っていると、魔王が部屋を飛び出した。



イメージが切り替わった。今度は、聖女様がドラフォレス国王の前で跪いていた。


「聖女が国を裏切るとは思えん。何か理由があるのであろう?」

「申し上げられるような理由はございません」

王自ら問うが、聖女様はあっさり否定する。


「魔族討伐中に魔族を受け入れる……しかも聖女の力を使い偽装までして。反逆の企みありと処罰されても仕方がないところだぞ」

「魔族の瞳の偽装をしたのですから、その罰として、これでは如何ですか?」


そう言うと、聖女様は自らの瞳に指を突き刺した。まるで涙のように赤い血が聖女様の頬を流れて行く。


唖然とする王、そして臣下たち……


「まだ足りませんか。それでは」


聖女様はもう片方の瞳にも指を突き刺す。


「分かった。だから、その目を早く治すが良い」

たまらず、王は止めに入る。


「これは罰です。治しはしません」



またイメージが切り替わる。今度は聖女様と宮廷魔術師の老人が話をしていた。窓の無い小さな部屋だが、聖剣と同じくらいの大きな剣が飾られている。


「しかし、驚きましたなあ。聖女様が魔族を推薦されるとは……あの色香に惑いましたかな?」

宮廷魔術師の老人が冗談のように言う。


「両目を差し上げたのに、まだ足りませんか」

「あれは聖女様、貴女への罰でございましょう? 魔族は討伐せねばなりませんからな……」

愛想笑いを浮かべながら、老人は少しずつ追い詰めるように話をする。側で聞いている私の方が気持ち悪くなりそうだ。


「私が協力すれば、あの者は見逃していただけるのですね?」

それでも聖女様はきちんと相手をしている。目が見えていないので、このいやらしい笑みを見なくて済んでいるというのもあるのかもしれない。


「ええ、もちろんです。それに、この話は決して貴女にとっても悪い話ではありませんよ。なにしろドラフォレスを永遠に救う力になれるのですから……」

実に胡散臭い。


「私の力が永遠にドラフォレスを救う……」

聖女様は唇を噛みながら考えているようだった。そして、黙って頷いた。


「おお、それでは手をこちらに」


何やら、儀式が始まるようだった。


******


魔王が帰って来た。

「……ん? なんだこれは?」


それを見た老人は下卑た笑みを浮かべる。

「聖女様は聖剣に力を封入することになったのだよ」

「馬鹿な! そのような外法が許されるはずが無い!」

「許されるも何も聖女様の御意志によるもの。この老いぼれはその助けをしたまで」


その老人の話を皆まで聞かず、魔王は掌を大きな剣に向ける。いや、いつ間にか、大きな剣は聖剣となっていた。


「もう、手遅れじゃよ。既にその剣には聖女様の力が宿っている。それを壊すということは聖女様を壊すことと同義。それがお前に出来るか? なにより聖女様がおらず、この聖剣も無くなれば、ドラフォレスが滅ぶぞ」


「くっ、ならば」

魔王は聖女様の亡骸を抱えて、掌を今度は大地に向けた。向けた先から暗闇が覆って行く。


「一体、何を……」

狼狽える老人をおいて、魔王は自らが作った暗闇に呑まれていった。



「全く、もう無茶をするわね」

闇の中で、聖女様と魔王が話をしている。


「聖剣をそのままに、汝を救い出すにはこれしかなかったのだ」

「魔族の転生の呪法……私も見るのは初めてだわ。まさか自分で体験することになるなんてね」

「魔の法の一種なのだが、副作用のせいで呪法として魔族の中でも忌み嫌われてはいるな……」

「どんな副作用があるの?」

「場合によりけりだな。周囲に相当の影響を及ぼす。とりあえず、余の活動できる期間が相当短くなったのは確かなようだ……」


なるほど、それで魔王は、普段、結界の中にいるのか……

封じ込められている訳ではなく……


1人で納得していると聖女様が、また話し出した。

「やっぱりね……ダメみたい。今の私より、あの聖剣に込めた力の方が大きいから……」

「馬鹿な……この呪法よりも強い力があるものか!?」


だが、聖女様の声が聞こえなくなる。また聖剣に封じ込められてしまったようだった。


魔王が1人呟く。

「あの聖剣の力を弱めるまでだな……」



すべてが、つながった。

魔王がドラフォレスで暴れた理由、

魔王がドラフォレスを守った理由、

聖女様が滅多に現れない理由、


そして、何より魔王が私にちょっかいを出し続けてきた理由


私は大事な依り代だったのだ。国難が起きるとき聖剣の力が弱まる。そのとき聖女様が私に憑依することで転生が完了する。その間だけ、聖女様と魔王は再び会うことができるのだ。


なるほど〜と思いつつも、猛烈に頭にきた。

なんだかんだ言って、結局、魔王も聖女も流されているだけではないか!


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