第44話
また、違うイメージになった。
「この度の掃討作戦での活躍、見事であった」
重々しい声が響く。
魔王がドラフォレス国王に謁見しているようだった。美しく黒々とした髪は魔王のそれだが、聖女様の力によってなのだろう。瞳までも黒くなっている。恭しく頭を下げる姿は、まるで一幅の絵のようでなんとも言えない魅力があった。国王の側に控える聖女様も満足げに微笑んでいる。
それを遠巻きにしながら重臣たちが囁き合う。
「聖女様の御推薦とは珍しい……」
「それに、あの黒髪に青白い肌……まさか魔族では?」
「しかし、今回の魔族掃討作戦では目覚ましい活躍をしたとか……」
「分かりませぬぞ、それも魔族の間で打ち合わせ済みの茶番劇という可能性も……」
「何にせよ、今のところは彼奴を評価せざるを得ませんな」
「だが、これでは宮廷魔術師殿の立場がありませぬぞ」
噂が噂を呼びつつも、魔王は順調に活躍しているようだった。そして、その姿を憎々しげに見据えるローブ姿の老人がいた。おそらく宮廷魔術師殿と呼ばれていた人なのだろう。白く長い髪はクリスさんを思い出させるが、温和なクリスさんとは対照的に激しい感情を表に出すタイプのようだった。
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また、暗転する。今度はなかなか次のイメージに切り替わらない。そのかわりに目の前にたくさんのキラキラした光球が浮かんでいる。多分、このどれかを手に取れば、新しいイメージを見られるのだろう。
ただ、いい加減、この状況を整理したいと思っていたので、その前に、状況の整理をやってしまうことにした。
おそらく、私が見ているイメージは聖剣の記憶だと思う。だから、嘘偽りは無いと思って良いだろう。
また、父が言っていた、魔王が実はカイン様であるというのは間違いだ。でなければ、魔王がドラフォレス国に攻め込んだり、聖女様に吹き飛ばされたりはしないはず。魔王はやはり魔族の一員であった。そこは確定したと思って良い。
父には悪いが、現実はそう甘くはないのだ。
それからイメージの時系列の問題だ。おそらく、順番に決まりは無いのだと思う。過去から順番だと考えると、魔王がドラフォレス国王を捕虜にした後に、国王への謁見となるが、それでは話がつながらない。謁見の後、魔王が正体を現し、ドラフォレス国へ攻め込んでドラフォレス国王を捕虜にしたと考えれば、話としては成立する。
その後は、何かがあり、魔王が魔族を滅ぼして、ドラフォレス国を守るようになった。そういう順番だろう。
ドラフォレスを守るようになった時に何があったかは、
>「汝らが暴れれば聖剣の力を弱まるかと思ったのだがな……どうにも駄目なようだ」
この魔王のセリフが鍵だと思う。
つまり、魔王は聖剣の力を弱めたかった。そして、それが出来ないことが分かり、今度はドラフォレスを守るようになった。
なぜ弱めたかったんだろう?
自らの命のため?
確かに魔王にとって聖剣は唯一と言って良いほどの脅威だ。ほとんどの攻撃が効かない魔王でも聖剣だけは特別らしい。
だから弱めたかった?
ううん。だったら、ドラフォレス国に攻め込み、国王を捕虜にした時に、壊してしまえば良かったんじゃないかなあ。それにドラフォレス国を守るようになったのもおかしい……
うーん。何か違和感があるのだけれど、それが何かはっきりとはしない。そして、私は考え込み、そして、ある問いに到達した。
聖剣とは一体何なのか?
聖剣が、ドラフォレス国に伝わり、常に国を守ってきたという歴史はドラフォレス国民なら誰でも知っている。
それでも、誰が作ったのか?
とか、いつ作られたのか?
そういう話は、誰からも、父からでさえも、聞いたことが無い。
そもそも、聖剣とは言え、剣に記憶があるという時点でおかしな話ではなかろうか?
私は目の前の光球の中から、聖剣誕生の記憶を探す。
そして、多分これだという、1つの光球を選び出し、掌に乗せた。




