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第43話

どう考えてもカイン様が魔王だったというイメージを見せられた後、また違うイメージが見えてきた。


ここは……?


お城だろうか?

壁の装飾の意匠が、見慣れているドラファレス城に似通っているようにも感じられるが……

ただ、普段見慣れている装飾よりも壮麗な印象を受けた。


また、部屋というには、あまりにも広いスペースがあり、窓にはステンドグラスが嵌め込まれていて、幻想的な光が差し込んでいる。


そのスペースの中心には、金髪の女性だろうか……

巫女のような格好をした人がこちらに背を向けて跪いていた。おそらく神に祈っているのだろう。両手を前に跪いている背中は微動だにしない。

綺麗な金髪は後ろでアップになっていて、解けばきっと美しい金髪がステンドグラスの光に照らされて綺麗だろうなあ、と残念に思った。


そこにカイン様……いや魔王か……

魔王が現れた。いつもの黒い霧とかはなく、さっと現れた。

それになんだか、普段の威圧感が無い。普段は無造作にまとまっている漆黒の髪も、明らかに乱れているし、衣服も所々破れている。更に良く見ると、黒い血が点々と床に滴っている。

怪我をしているのだろうか……


「結界は張ってあったはずですが……」

と呟きながら振り返った女性の顔を見て、叫び出しそうになった。私なのだ!

いや違う……おそらく聖女様だろう。火山のそばで出会った時は精神体だったので目が闇に覆われていたが、今は私と同じ深い緑色の瞳をしていた。


「汝は……美しいな……」

魔王は、そう呟くと、見惚れたように立ち尽くしていた。


それに対して、聖女様は薄く笑ったような表情をして、掌を突き出した。

魔王は簡単に吹き飛び、壁に叩きつけられる。

弱い……

いや、聖女様が強いのだろうか?


更にそこに数人の魔族が現れた。

「その者は魔族の掟を破りし者、我々に預からせてもらう」

「ここは聖なる祈りの場、そこに魔族が入って良いなどという道理はありえません」

聖女様は掌を魔族たちに向けると、魔族たちは苦しみ出し、黒い血を吐き出し始めた。やはり聖女様が強過ぎるのだろう。大半が絶命した後、聖女様は言う。


「伝えなさい。ここに立ち入った魔族は全て命を落とすことになると。貴方たちの追って来た者もすぐに後を追わせて差し上げます」

その後、魔族の1人の姿が急に消えた。血を吐きながらも、運が良い魔族が離脱できたようだった。


聖女様は更に魔王の傍によると、魔王の額に手を当てた。とどめを刺すにしては不思議な動作だった。


「殺さぬのか?」

ボロボロになりながら、魔王は問う。金色の瞳に力は全く無い。ただ何故だろう。その瞳に心が掻き乱される。


魔王の言葉を無視して聖女様は呟いた。

「不思議……魔族なのに……貴方からは邪気が感じられない……」


そこで、また暗転した。


今度も祈りの間だった。ただし、夜だ。


聖女様と魔王が楽しそうに話をしている。魔王の傷も治っているようだった。

「そうか、魔の法とは、そういう仕組みであったか……それにしても汝は良く知っているな」

「私は、この国を守る聖女よ。何でも知っていなきゃダメなのよ」

私と同じ顔の少女が自慢そうな顔をする。微笑ましいという表現しか思いつかない光景であった。


「ねえ、貴方、宮廷魔術師にならない?」

「余は魔族だぞ。そのようなことができる訳があるまい。姿を変える魔法を使ってもすぐに判ってしまう」

「見た目そんなに違わないし、瞳の色だけ私の力で誤魔化せば大丈夫よ!」


自信満々の聖女様の様子を見て、なんだか落ち着かない気持ちになった。


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