第39話
「え? なに?」
「地響きだな……火山の方角だ……」
この獣の咆哮のような音はまさか火山の噴火なのか……
カイン様が魔法陣で封じてあるはずなのに……
「理由は色々考えられるがな……そこの王女よ……心当たりがあるのではないか?」
「知らないわよ」
アン様はしらを切るが、雰囲気的に明らかに何かありそうだ。
カイン様の魔力がアン様を包む。まるで言い訳など絶対にさせないとばかりに。
「王女よ。もう一度問う。心当たりがあるのではないか!?」
「ああ、もう! 隣国の兵士たちを、あの風穴を通して引き入れたから、魔法陣が壊れちゃったのかもしれないわね!」
アン様は投げやりに自白した。王家の秘密だと言うのに、この女性は……
「やはりか……」
カイン様は少し考え込むが、
「今更、とやかく言うても始まらんな。レイチェル、クリスを見てやれ。余は火口に向かう」
「私も行きます」
「そうか……好きにするが良い」
カイン様と火山の火口に駆けつけてみると、アルベルト様が聖剣を持って立ち尽くしていた。火口からは溶岩が溢れ出して来ている。
「アルベルト様、大丈夫ですか!?」
「レイチェル……僕もさっき来たばかりなんだが……火山が噴火を始めてしまっているんだ……魔法陣で封じられているはずなのに……」
そこで、アン様が引き入れた他国の兵が、魔法陣を壊してしまったことを告げた。
「なんということを……」
アルベルト様は目を剥いて驚く。実の姉が国を裏切っていたのだ。相当ショックではあろう。
「突っ立っていても仕方があるまい。溶岩を止めるぞ」
カイン様は溶岩が流れていく先に走って行く。私も付いて行く。
溶岩を止めるべく、カイン様が魔法で壁を築くが、すぐに壁と大地の間を溶岩が埋め尽くし、壁を超えてくる。流れる方向を変えたり、凍結魔法も試してみてはいるが、なにしろ溶岩の量が多く、カイン様1人ではどうなるものではない。
「やはり、魔の法だけでは不足なのか……」
悔しそうに呟くカイン様が、はっと気付いたように周りを見回す。
「ドラファレスの民草の避難は!?」
応えようがなかった。だが、私たちが魔法陣で十分に火山は封じられていると報告しているのだから、火山の噴火を想定した避難はなされていないことは容易に想像できた。
赤く燃え立った溶岩が、私たちの目の前をゆっくりドラファレスの街に向かって流れて行く。まるでトカゲがのんびり歩いていくようなスピードだが、私たちにはどうすることも出来なかった……




