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第37話

アン様の表情の変化を見れば、アン様が主犯であることは明白であった。


しかし、なぜ?

アン様がカイン様を亡き者にする必要は無いはずだ。カイン様が王族だとは言っても、おそらくカイン様には王位を望むような野望は無いし、今は国賓扱いだ。王位継承に拘るアン様にとって、カイン様に刺客を差し向けるメリットが無い……


考え込んでいる私に、アン様は怖い顔を止めて、優しい表情で言葉を連ねる。

「レイチェル、可哀想なレイチェル、そんな乱暴狼藉を働くような輩の言葉に惑わされるなんて……」


表情も言葉も凄く優しいのだけど、先程の表情の変化を見ているので、かえって怖い。


カイン様が香炉のような物を拾って来て、そして言う。

「道化芝居もその辺にしておくが良い。あたり一帯の魔法を無効化する魔香、武器は異なれど統一された格闘術を扱う手練れ11人、これらを揃えるだけでも、明らかに相当な権力と財力が必要であろう。この者どもが偶々ここを襲ったという言い訳は成立せんぞ」


「そうねえ。言い訳は無理かしらね」

アン様の顔がまた一瞬だけ凄く怖くなり、また優しくなった。


これ以上ないという笑みを浮かべてアン様はカイン様に問い掛ける。

「ところで何故11人だけだと思ったの?」


アン様が手をパンパンと叩くと、さらに何人もの兵が現れた。さきほどの刺客とは違い、鎧兜で完全武装している。でも、ドラファレスの兵装とは少し違うような……


「なるほど、他国の兵を引き入れたか……まったく愚かな王女よ……」


カイン様の言葉にアン様は目を細めながら言う。

「その愚かな王女に殺される貴方は何なのかしらね?」


カイン様が嘆息しながら言う。

「余も安く見られたものだな……この程度の兵数で足りると思うたか……」


そして兵たちに向き直る。

「魔王が、魔の法を使わずに相手をしてやるのだ。感謝するが良い」

そう言うが早いか手近な兵に襲いかかった。カイン様が掌底を兵の腹に叩き込むが、先程の刺客とは違い、鎧を着込んでいるので、それほど効かないようだ。


今度は兵たちが剣を突いてくる。細身の剣を呼吸を合わせて突いてくるので、流石のカイン様もやりづらそうだ。


隙を見つけて1人突出した兵から細身の剣を叩き落とし奪い取るが、細身の剣では完全武装の兵たちにはそう効かない。


それでも、先程の戦い同様、魔法無しでも圧倒的な強さを見せるカイン様だったが、流石のカイン様も完全武装の兵たち複数相手に細身の剣で戦うのでは、決め手に欠ける。


ただ、私はさきほどのカイン様のセリフが気になっていた。魔王?


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