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第36話 刺客

この話から戦闘シーンが続きます。心の準備をお願いします。

山道の方を厳しい表情で見ていたカイン様が、その表情のまま、私に問い掛ける。

「レイチェル、見えるか?」

「ええと……」


何がだろう?

私には何も見えないが……


「どう見ても、客ではないな。しかも数が多い……」


私には見えないが、侵入者がいるようだ。


「この私に挑もうとする時点で、数など関係ないが、レイチェルに怪我があってはならんからな」

そう言うと、カイン様は不敵な笑みを浮かべて、魔法の詠唱を始めた。あたりに魔力が充満していくのが良く分かる。


だが、チャペルの奥から人の気配がした。


「カイン様!」

私は小さな声で叫ぶ。私の声にカイン様は頷き、そして呟く。


「なるほど……魔法の無効化か……用意が良いことだな……」


その次の瞬間、カイン様の体が一瞬で部屋の隅に移動する。その腕の先には黒い衣装に身を包んだ男が苦しそうにしていた。


速い!

カイン様は魔法だけじゃないんだなあ……

と、ぼんやり思った。


「魔法以外での攻撃など久しぶり過ぎてな。どうにも加減ができる気がしないが……誰に頼まれたか吐けば命までは取らんぞ」


そうカイン様が言っているうちに、男は血を吐いて意識を失った。


カイン様は苦々しく呟く。

「舌を噛んだか……良く訓練されている……」


その後も、刺客たちが私たちが滞在しているチェペルに侵入してきたけれど、カイン様が次々と制圧していく。カイン様の強さは圧倒的であった。


それにしても、その刺客たち全員、一切、言葉を発しないのは驚愕に値した。


******


カイン様が一通り制圧し終わり、休憩しているところに、チャペルの戸を叩く音が聞こえてきた。


「カイン様!、レイチェル!」

アン様が兵を連れてやって来てくれたのだ。私たちが無事なのを見て、嬉しそうな笑みを浮かべる。


その笑顔はあくまで自然。

だけど、こういうとき、こんな自然な笑顔ができるものだろうか……


それより何より駆けつけるのが早過ぎないか?


もし、アン様が事前にこうなる事を知っていたとしたら?


様々な疑念が私の頭の中を渦巻く。


「無事でよかったわ」

嬉しそうに微笑むアン様に、私は問いかけずにはいられない。


「アン様、なぜですか?」

「何のことかしら?」

アン様は目を細めながら、私を困ったように見つめる。まるで、駄々っ子をあやす母親のような慈愛溢れた表情……


「刺客の1人が吐きましたよ……アン様……なぜですか?」

一応、外れた場合も考えて、解釈の余地は広めに、鎌をかけてみる。


私の問いに、アン様は、さきほどの表情からは想像もできないような怖い顔になった。

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