第34話 想い人
魔法陣のある部屋で、頰に風を感じた私は、風が吹いて来る方向に興味が湧いた。もしかして更に奥があるのかもしれない……
そちらに歩いて行こうとすると、急に、アン様に遮られた。
「さあ、帰りましょうか」
「いや、ちょっと奥が……」
「さあ、帰りましょうか!」
怖い……
アン様の深い青色の瞳が私を捉えている。表情は優しいのだけど、それが逆に怖さを引き立てている。
まあ、きっと王家の秘密というやつなのかな?
平民の私が、ここまで入れただけでも、感謝するべきなのかもしれない。
それでも、なんだかアン様が怖いので、帰り道はアルベルト様の後ろで、仕掛けを外すお手伝いをすることにした。アルベルト様は嬉しそうだ。
来た道をそのまま戻れば良いのかと思っていたのだけれど、そう単純でもなく、行きと帰りで違う道を通るようになっているらしい。良く工夫がなされている。
それらの仕掛けをアルベルト様はどんどん外していく。間近で見ると、アルベルト様の筋肉の動きがよく分かってドキドキした。顔からは分からないけれど、アルベルト様は意外に筋肉質なのだ。出会ったときにツンツンした感触を思い出して、また少し顔が赤くなる。
が、やっぱり仕掛けはワンパターンなので、申し訳ないけれど、だんだん飽きてきた。
そこで、さきほどのアン様の話で気になっていた聖剣授与の話を聞いてみる。
「そう言えば、聖剣授与はどうなったのですか?」
「ああ、夏至祭の夜に行うのが伝統なんだけどね……今年は出来なかったし、国難が迫っているのであれば急いだ方が良かろうということで、夏至祭にこだわらず、実施することになりそうだよ。そのときはレイチェルも出席してくれるのだろう?」
やっぱり、そうなるか……
「はい。もちろんなのですが、もう少し先延ばしすることはできませんか?」
何かある前に聖剣授与を行っておきたいという事情は分かるのだけれど、アン様のお気持ちを思うと、もう少し待ってあげて欲しいと思ってしまう。
アルベルト様は私の方を振り向いて、探るように問いかけてくる。
「それは出席したくないということかい?」
優しいなあ……
深い青色の瞳が私を見ている。優しいという単語がこれほど似合う人もいないだろう……
アン様と同じ深い青色の瞳なのに、なんでこうも印象が違うのだろう。
「決して、そのようなことはございませんが、もう少し待って欲しいのです」
私は罪悪感に駆られながらも、なんとか、希望を伝えた。
「そうか……」
アルベルト様は心底がっかりしたようだった。
******
「火山の噴火については大丈夫ということで納得いただけたかな?」
カイン様が得意げに、皆に問う。
アン様もアルベルト様も頷いて同意した。確かに、あれなら問題無いと私も思う。魔法陣の問題点としては、物理的に壊されやすいというのがあるのだけれど、あれだけの仕掛けがあるのであれば、魔法陣を壊そうにも王族の方以外は侵入さえできないだろう……
だけど、そうなると国難とは何だろう?
そんな疑問を抱いているときに、急にカイン様が私の手を取り、膝を着いた。
なんだろう?
「レイチェル、余と結婚してはくれまいか?」
え!
ええー!?




