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第32話 対策会議

朝になり、詠唱後の虚脱感は無くなっていた。ふむふむ。聖女の力を使っても1日寝れば回復するようだ。

そこで昨日の詠唱をもう一度やってみようとしてみたところ、ほとんど覚えていなかった。

やたら長かったし、やっぱり聖女の記憶が戻らないとダメかな……


とりあえず、クリスさんの執務室に行ってみる。クリスさんは普通に書類を整理していた。


「クリスさん、大丈夫そうですね」

「あ、レイチェル、貴女を守るどころか、助けられるとは……申し訳ない」


クリスさんの声はいつもの落ち着きを取り戻していた。


「私は貴女に助けられたときの記憶がほとんど無いのですが、聖女として私を救ってくれたときは、どんな感じだったのですか?」


「不思議な感覚でした。心の奥底から色々な感情が湧き上がってくるような……」


クリスさんは私の話に相槌を打ちながら、熱心に聞いてくれた。


「もし、何か手伝えることがあれば、いつでも言ってくださいね」

「はい!」

元気良く返事をした。


クリスさんの目を見てみると、初めて会ったときの頃の赤茶色の瞳になっていた。やはり、魔道具で魔法を使うという行為は、クリスさんに無理を強いていたのだろう。


じーっと見ている私に向かって、クリスさんは困り顔で言う。

「本日の会議に向けて、文献を整理しなくてはならないので……」


あ!

そうでしたか。と私は別れの挨拶をして、今度は厨房の方に向かう。スージーがいた。


「ねえ、スージー、今日はお休みしたいのだけれど、大丈夫かな……」

「聖女様に料理をさせる訳にいかないだろ。ジョンには伝えておくから安心してくれ」

スージーは笑顔で言ってくれた。


あれ、私が聖女としての力を使っていたとき、スージーはジョンの手伝いに厨房に戻っていたはずだけど……

何処かで聞いたのかな?

それでも、普段とあまり変わらない、スージーの物言いになんだか救われる。


というか、むしろ普段より上機嫌かな?



******



玉座のある部屋で会議が始まった。


昨日同様、父がおおまかにカイン様とドラフォレスの成り立ちについて説明を行い、その真偽について議論となった。


意見は色々出たが、クリスさんの

「レイモンドさんの言うことが正しいとして、文献を読み直してみましたが、辻褄は合います。十中八九間違いはないでしょう」


という発言が決め手となって、議題は対策内容に移った。


まずは国難とは何かという話になった。


「色々考えられますが、他国の侵略、疫病の蔓延、自然災害などが挙げられます」

クリスさんが文献を見ながら言う。


「他国の侵略の可能性は低いでしょうな」

騎士風な男性が発言する。


「ほう、その理由は?」

司会役の大臣が問い質すと、騎士風な男性は話し始めた。


「現在、ドラフォレスと国境を接している国は2つほどありますが、どちらもドラフォレスとは親密と言えるほどの状況です。しかも、その2カ国からドラフォレスに攻め込むには、細い海沿いのルートを踏破しなくてはなりませんからな。以上を鑑みるに侵略の可能性はほぼ0と言えると思いますな」


すると対策すべきは疫病と自然災害か……


以上のような話し合いを経て、今まで流行った疫病や自然災害の洗い出しを行い、個々に対策をするということで会議は閉会となった。


それにしても、疫病にしても自然災害にしても、聖女の力が必要なのだろうか?

私が想像している以上の大規模なものになるのだろうか?

だとしたら、聖女の記憶が戻るのをのんびり待っていて良いはずがない。



******



「聖女の力の使い方を教えてくれませんか?」

と、カイン様に頼む。なにしろ、カイン様は聖女の詠唱を知っていたのだ。他にも知っていると思うのだけれど……


「それは……教えられぬな……」


教えられない?


「ええと、それはどうしてですか……まだ早いということですか?」


「早い遅いではなく、教えられぬ」

カイン様は断固として言う。


「クリスさんを助けたとき、『まだ早いのだが……』とおっしゃっていたではありませんか。今こそ、聖女の力の使い方を覚えるときなのでは?」


少し不敬かなとは思ったけれど、カイン様に詰め寄ってしまった。


「状況が変わったのだ」

カイン様の金色の瞳が少し困ったような光を発したけれど、それでもカイン様は教えようとはしてくれなかった。


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