第31話 魔法の花火
侍女に連れられ玉座のある部屋に、父と母、カイン様、それに私が通された。
こんな所に入るのは生まれて初めてだ。王族の方たちが座る席には、アン様やアルベルト様もいる。
父は促されて、先ほどの大広間で発表した話の詳細を王様に申し上げ始める。
書記官だろうか、忙しげにペンを動かしている人が、なんだかんだと父に確認し、その度に父は誇らしげに答えていた。
父の話が終わると、ドラフォレス王が言った。
「カイン様、まずは国賓として待遇いたしましょう。カイン様の住む部屋もこの城内に用意いたします」
カイン様は別のことを考え込んでいるようだったけれど、部屋を用意するという話を聞いて面倒臭そうに応えた。
「余にも住む場所はあるのでな。その話は遠慮しよう」
カイン様はこちらを向いて聞いてきた。
「ところで、レイチェル、先ほどの詠唱中に何か思い出さなかったか?」
詠唱中に色々な思いが浮かんできたのは確かなんだけど、思い出すのとは違うかなあ……
本当は聖女の記憶が戻るはずなのだろうか……
「不思議な感覚はありましたが、これと言って、思い出すということはなかったです」
そう答えると、カイン様はまた考え込んでしまった。
その後、議論となったが、クリスさんが居ないので、特に結論らしい結論は出ず、また会議を開くということだけを決めて、この会議は終わった。
会議後、楽しんで行って良いと言われたので、私たちは夏至祭の料理と共に、大広間から続くテラスに出た。
夏至だけはあって、まだ外は明るい。
それでも明るい星は見えていて、しかも、この広いテラスが貸切状態なのだ。あんなことがあった後ではあるけれども、なんだか楽しくなってしまう。
「そう言えば、レイチェルは花火という物を知っているか?」
カイン様が私に問い掛ける。
花火?
父から聞いたことがあるような……
うーん……
「ええと、知りません」
正直に答えた。
「花火とは火薬という物で作るのだが……綺麗な物だ。確か、こんな感じだったはずだ」
カイン様は腕を少し広げて、掌を空に向けた。
やがて、天空の一点から放射するように光が広がっていく。
それが終わると、また異なる点から光が広がり、それらが次から次へと様々な色の光が広がっていく。そして彩り豊かな光が天空を埋め尽くした。
綺麗……
これが花火……
多分、カイン様の魔法で再現してくれている花火なので、本物とは少し違うのだろうけど、華やかで綺麗な花火だった。
「流石です。カイン様!」
「なに、レイチェルが楽しんでくれれば容易いものだ」
カイン様は嬉しそうに微笑んだ。
父や母は、花火を見てビックリしていた。
聖女の記憶は全然戻らない私だけれど、この花火は何年経っても思い出すのだろうなあ。
花火の季節ですねえ。
それはさておき、ブックマークなり評価なり付けていただけるとモチベーション上がりますので、よろしくお願いします。また、感想もお待ちしております。
ただ、プロットは書き上げてしまったので、ストーリーに関する要望は受け付けられません。ご了承ください。




