第30話 父の研究成果
「まあ、待て」
大臣風な人が父を止めに入る。
「この者が言うことが間違っていないとも限らん」
「私がここで申し上げていることは、私の長年の研究の成果でありまして……」
と、父が猶も主張しようとするが、遮られる。
「お主の言うことを分からんではないが、このような議論を目前にすれば、民草の中には不安を覚える者もいよう」
なるほど。確かにみんな不安そうに父を見ている。今まで信じてきた事実をひっくり返されるかもしれないのだから、命の不安は無いにしても不安になるのが普通なのかも知れない。
大臣風な人は更に続ける。
「なにより、宮廷魔術師殿の回復を待ってからでも遅くはあるまい」
そういえば、クリスさんの周りの黒い霧は晴れたけれど、まだクリスさんはまだ回復していない。
「という訳だ。皆には悪いが、これにて夏至祭は中止。この者が申していることは後で纏めて、皆にも知らせよう」
大臣風な人が夏至祭の中止を宣言した。
ということで、残念だけど夏至祭は中止となり、一般人は城外に退避ということになった。
私はと言うと、聖女ということで、残っていて良いらしい。
確かに、先ほどの詠唱中の感覚……
私の中に別人格が宿っているような……
そんな不思議な感覚だった。
それにしても国難って何だろう?
父は分かっている感じだったけど……
父の方を見ると、母とイチャイチャしていた。
「ふー、やっぱりなかなか認めてもらえないなあ……」
「貴方なら大丈夫よ!」
もう、公衆の面前で、この馬鹿夫婦は!
でも、今のうちに聞いておくべきかな?
「おお、レイチェル、やっと分かったんだ。ドラフォレスの歴史、魔王の逸話、それらが昨夜つながったんだ!」
「へえ……」
物凄く父が興奮しているのが分かる。娘ながら、ちょっと引く。
「ドラフォレスに魔王は存在しなかったんだ。ドラフォレスに限らず、国難は国王もしくは元首のせいにされることが多い。対策が後手に回って二次被害が増えるようなら確かにその通りではあるのだが……」
「うん」
まあ、そうだろうねえ。
「それをドラフォレスでは魔王のせい、正確にはカイン様のせいにしたんだな。国難が発生すると、その対策のためにカイン様も現れるので、関連付けしやすかったというのもある」
ええ!
それって酷い!
「歴史は改変されるということだ。特に為政者の都合の良いようにな」
「でも、どうして、お父さんはそのことに気づけたの?」
だって、まるで見てきたかのように……
父だって改変された歴史しか分からないはずなのに……
「改変した事実は残ってしまうものなんだ。いかに巧妙に改変したとしてもな」
と言って、父はボロボロの紙切れを見せてくれた。
うっ。何が書いてあるのか分からない……
「とすれば、改変した事実を基に、どうして改変されたのかを推測すれば改変前の歴史が現れるんだ」
「結果、魔王という存在はドラフォレスにはいなかったということ?」
「その通り。だが、不満の捌け口として、魔王という存在が必要だったんだ」
傍で聞いていたカイン様は、ずっと黙って聞いていた。
カイン様の顔をちらっと見ると……
あれ?
笑ってる!?
「皆さん、こちらに」
侍女に促されて、私たちは玉座がある部屋に通された。




