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第3話 パスタの茹で加減

落ち着くまで見ているように言われたが、広い厨房でも料理人たちがせわしなく動き回るので、邪魔にならないようにするだけでも大変だ。しかも、スージーが働いている区画がちょうど大量のパスタを茹で上げているタイミングだったので、料理人たちは殺気立っている。


確かに、パスタの茹で加減は難しいんだよね。一度、私も家でチャレンジしたことがあるが、アルデンテとは真反対のふにゃふにゃのパスタになってしまった。大体、お店でもなかなか美味しいアルデンテ状態になって出てくることは少ないから、相当に難しいのだと思う。


スージーもその区画にいるということは、あれを私もやることになるのかな?

ちょっと無理じゃないかなあ、と思っていると、スージーも大きな鍋を掴んでザルにあけている。するとすぐに、他の料理人たちが大きなフライパンに入れて炒め始めた。流れるようだった。


スージーたちが鍋からパスタをザルにあけて、料理人たちが炒め始めるという流れ作業が一段落したと思ったら、今度はスージーたちがお皿を並べていく。そこに魔法のように料理が盛り付けられていく。どのお皿も均等に盛り付けられているのは流石の一言だ。


そんな工程を間近で見ながら、邪魔にならないようにしていると、


「おい!手が空いているなら、持って行け!」と茶色い髪の男性に怒鳴られた。

「え?」私は見ているように言われたんだけど……


スージーがお皿を3枚も持って、私に言う。

「お皿を運ぶだけだから。手伝って。」


私はお皿を3枚も持つなんて真似は私は出来ないので、両手に1枚ずつお皿を持ってスージーの後に続いた。ドレスが汚れないか気が気ではない。


廊下には大きなワゴンがあり、スージーはそこに持っていたお皿を並べて行った。私も同じように並べて行く。


私が並べ終わった頃、スージーはまた戻ってお皿を3枚持ったところだった。私も負けじとお皿を運ぶが、ドレスが気になってスージーの半分も運べなかった。全て運び終えたと思ってホッとしたのも束の間、


「さあ、運ぶよ。」とスージー。


スージーが大きなワゴンを押して行く。ええと私は?

手持ち無沙汰になりながらも、スージーの後を追う。


着いたところは、南向きの大きな部屋のドアの前だった。この部屋がダイニングなのだろう。スージーは部屋の外で控えているウェイターになにやら声をかけた。


「ここから先は、ウェイターの仕事さ。料理人としてのやるべきことはやったというやつだね。」

とスージーはニヤリと笑った。


両手を頭の後ろで組み、帰ろう帰ろうと促してくるスージーと一緒に帰ろうとした瞬間、ドアが開いて中が見えた。


あ、アルベルト様だ。


アルベルト様もこちらに気付いたらしく、急に席を立ってこちらに向かって来た。陽の光に照らされて、金髪がキラキラ輝く。


「来てくれたんだね。」深い青色の瞳は相変わらず美しかった。


「お、お招きいただき、ありがとう、ございます。」

私は何を言っていいのやら、訳が分からなくなって、変な言葉を口走っていた。これでは私が料理人ではなく、来賓か何かのようではないか。


アルベルト様も面白かったらしく、少し笑顔になりながら、

「本日は、ごゆっくり、お寛ぎください。」

と芝居掛かった口調で応えてくれた。


それから2人で顔を見合わせ、声をたてて笑ってしまった。

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