表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/46

第22話

「さあ、帰ろう、帰ろう」

と促して来るスージーに、私は聞いてみる。


「ねえ、風穴の中はどうなっているんだろうね?」

「中? まあ、何処かに通じているんじゃないか?」


そうだよねえ。風が吹いているということは行き止まりではないよねえ。


「ちょっとだけ見てこない?」

「馬鹿言うな。私たちの準備は終わったけど、他に雑用があるかもしれないだろ」


なんという正論。普段、正論を言わないスージーだけに変に説得力がある。


「いやあ、そうなんだけど。まあ、ちょっとだけ」

「絶対、嫌だ」


うーん。でも行きたいなあ。煽ってみるか。


「あれ、スージー怖いの?」

「そんな訳あるわけないだろ」

「じゃあ、行こうよ」

「1人で行って来い」

「しょうがないなあ」

「しょうがないのはどっちだよ」


はい。私が一番よく分かっております。でもこういうとき我慢できなくなるんだよねえ。


という訳で、私は風穴探検を始めた。と言っても、灯りを何も持っていないので、あまり奥には行けないけどね。


風穴の中は、湧き水だろうか、少し湿っている。そこに凄い勢いで風が吹き抜けて行くので、夏なのに凄い寒い。


大体雰囲気は分かったし、そろそろ入り口からの光も届かなくなってきたので、そろそろ帰ろうかなあと思ったところで、足もとが無くなった!


暗くて分からなかったが、崖のようになっていたようだ。

バランスを崩して、私は……


崖の底に叩きつけられるかと思っていたら、誰かが私を受け止めてくれた。


「まったく汝は手間がかかる」

魔王だった。私の頭をポンポンと叩く。


あれ?

ということは、これは夢なのだろうか?

でも、こんなハッキリとして夢ってないよねえ。

まあ、お礼は言うべきかな?


「あ、ありがとうございます」

「そう、かしこまるでない。汝は特別であるゆえ」


なんで私は特別なんだろう?

でも、これを聞くと魔王は怒っちゃうんだっけ?

黙っていようか……


しばらく沈黙が続く。けれど魔王の金色の瞳が私を愛おしげに見ていた。


ようやく、魔王が口を開いた。

「何をしていたのだ?」

「ええと、夏至祭の準備でスープを冷やしに……」


「そうか、夏至祭か……」

魔王は少しだけ物思いに沈んでいたが、顔を上げて、


「ならば、名残は惜しいが急がねばならんな。入り口まで送り届けよう」


魔王が右手を軽く振るった。気がつけば、私は風穴の入り口の前にいた。


「さあ、帰ろう、帰ろう」

と、スージーは何も無かったかのように、促してきていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ