第22話
「さあ、帰ろう、帰ろう」
と促して来るスージーに、私は聞いてみる。
「ねえ、風穴の中はどうなっているんだろうね?」
「中? まあ、何処かに通じているんじゃないか?」
そうだよねえ。風が吹いているということは行き止まりではないよねえ。
「ちょっとだけ見てこない?」
「馬鹿言うな。私たちの準備は終わったけど、他に雑用があるかもしれないだろ」
なんという正論。普段、正論を言わないスージーだけに変に説得力がある。
「いやあ、そうなんだけど。まあ、ちょっとだけ」
「絶対、嫌だ」
うーん。でも行きたいなあ。煽ってみるか。
「あれ、スージー怖いの?」
「そんな訳あるわけないだろ」
「じゃあ、行こうよ」
「1人で行って来い」
「しょうがないなあ」
「しょうがないのはどっちだよ」
はい。私が一番よく分かっております。でもこういうとき我慢できなくなるんだよねえ。
という訳で、私は風穴探検を始めた。と言っても、灯りを何も持っていないので、あまり奥には行けないけどね。
風穴の中は、湧き水だろうか、少し湿っている。そこに凄い勢いで風が吹き抜けて行くので、夏なのに凄い寒い。
大体雰囲気は分かったし、そろそろ入り口からの光も届かなくなってきたので、そろそろ帰ろうかなあと思ったところで、足もとが無くなった!
暗くて分からなかったが、崖のようになっていたようだ。
バランスを崩して、私は……
崖の底に叩きつけられるかと思っていたら、誰かが私を受け止めてくれた。
「まったく汝は手間がかかる」
魔王だった。私の頭をポンポンと叩く。
あれ?
ということは、これは夢なのだろうか?
でも、こんなハッキリとして夢ってないよねえ。
まあ、お礼は言うべきかな?
「あ、ありがとうございます」
「そう、かしこまるでない。汝は特別であるゆえ」
なんで私は特別なんだろう?
でも、これを聞くと魔王は怒っちゃうんだっけ?
黙っていようか……
しばらく沈黙が続く。けれど魔王の金色の瞳が私を愛おしげに見ていた。
ようやく、魔王が口を開いた。
「何をしていたのだ?」
「ええと、夏至祭の準備でスープを冷やしに……」
「そうか、夏至祭か……」
魔王は少しだけ物思いに沈んでいたが、顔を上げて、
「ならば、名残は惜しいが急がねばならんな。入り口まで送り届けよう」
魔王が右手を軽く振るった。気がつけば、私は風穴の入り口の前にいた。
「さあ、帰ろう、帰ろう」
と、スージーは何も無かったかのように、促してきていた。




