第21話 褒められた?
やっぱり、私たちの準備は深夜までかかってしまった。
同僚のおじさんたちが手伝おうかと声をかけてきたけれど、すべて断った。これはスージーと私の仕事なのだ。
「手伝ってもらえば良かったのにな〜」
と、スージーがぶつくさ言うが、そんなことよりも手を動かすのだよ。心を無にして、裏ごしをすれば、ほら呼吸さえも忘れて……
「大丈夫か……」
と、ジョン主任も心配そうに聞いて来た。
「大・丈・夫です!」
変な抑揚を付けて答える。
実際、後ちょっとだ。こんなところで中途半端に手伝ってもらって、恩を着せられたら堪らない。ジョン主任は少し様子を見ていたようだが、状況がそこまで差し迫っていないと分かったのか、何も言わずに去っていった。
なんとか、すべてのジャガイモの裏ごしを終え、宿舎に向かう。
外に出たスージーが空を見上げて言う。
「うわー、もう明るいよ」
「白夜みたいだねえ」
「なんだい? その白夜っていうのは?」
「ドラフォレスよりも北の国では夏至の頃、空が真っ暗にならないんだよ。その現象のことを白夜って言うんだ」
夏のドラフォレスは白夜までは行かないが、真っ暗になる時間は相当に短い。私たちは急いで宿舎に帰り、明日に向けて寝た。
翌朝、早くに厨房に入った私たちは、昨日裏ごしをした物にミルクを加えてのばして、塩胡椒で味を整える。と言ってもレシピがあるので、分量は迷いようがないのだけれどね。
「ジョン主任!」
「なんだ?」
「一応、味を見てもらえますか?」
ジョン主任を自発的に呼んだのは、これが初めてかもしれないなあ、と思いつつ、
ジョン主任の味見をする横顔をそっと見る。
背はアルベルト様よりも少し低いけれど、切れ長な黒い瞳は綺麗だし、鼻筋も通っているし、意外と整った顔立ちをしているんだよねえ。
「うん。合格だ。頑張ったな」
ジョン主任がニッコリ笑顔になった。
ビックリした。あのジョン主任が私を褒めて、さらに笑顔になったのだ。これでビックリしなかったら何でビックリするというのか。
「あ、ええと、ありがとうございます」
ちょっとタイミングを逃してしまったけれど、お礼を言った。
出来上がったスープを、スージーが大きな金属製の容器に入れる。
「それじゃあ、冷やしに行きますか」
「あれ? 流水で冷やすんじゃないの?」
「おいおい、これを流水で冷やしていたら、どんだけ水をいると思っているんだ。こういうときは風穴に持って行くんだ」
「風穴?」
「レイチェルには教えていなかったっけ? まあ、行けば分かるさ」
スージーに連れられて、お城の裏手に向かう。そこには大きな洞窟があり、その奥から冷たい風が湧き上がってくる。これが風穴なのだろうか?
「ここに2、3時間、置いておけば、キンキンに冷えた冷製スープの出来上がりってね」
スージーは得意げに教えてくれたが、私は風穴の方に興味が湧いていた。
どうしてこんなところに風穴あるんだろう?




