第17話
クリスさんと父が別室から出て来た。随分、盛り上がったのか、クリスさんも父も上機嫌だ。どんな話をしていたのか、少し気になるなあ。
「それでは、そろそろ失礼いたしますね」
とクリスさんは言う。
「もう少しゆっくりなさっていったら良いですのに……」
「これ以上いましたら、居心地が良すぎて住み着いてしまいそうですので……」
フフと笑って、母が言う。
「それでは、レイチェル、大通りまで送って行ってあげなさい」
「いやいや、道順は覚えながら来ましたから大丈夫ですよ……」
と、クリスさんが断ろうとするが、母は言い出したら聞かないからなあ……
「クリスさん、時間の無駄です。まあ、大通りまでなら直ぐですので……」
「そうですか……」
父と母に見送られて、私とクリスさんは歩き出した。
クリスさんは意外と飲んだのか、目の下が赤くなっている。
「随分、飲まれたのですか?」
「ええ、あなたのお父上に勧められまして……それにしても、レイチェルのお父上はなかなか博学な方ですねえ」
クリスさんは、随分、気持ち良さそうだ。
「レイ……」
え?
なに?
聞こえない。
「なんて言いました?」
と、聞き返す私に、クリスさんは私の肩に手を置いて、顔を近づけて来た。
「レイチェル」
クリスさんの顔が私の耳許に近づいてくる。こんなに近づいたのは初めてかも?
銀髪だから老けて見えるけど、意外とクリスさんは若いのかもしれないなあ、
とドキドキしていると、
そこに魔王が現れた。
「汝。何をするつもりだ?」
黒い髪に黒い服、銀髪のクリスさんとは対照的な魔王の登場に、クリスさんはビックリしたように、飛び退る。
そして、クリスさんは懐から、砂時計を2つ取り出した。
あれが魔道具なのだろうか?
クリスさんは砂時計2つを左手に持ち、右手を魔王の方に向けた。魔法が発動しているのか大気が震える。
しかし、クリスさんも苦しそうだ。大丈夫なのだろうか?
「魔の法の基礎も知らぬと見える」
魔王はそう呟くと、こともなげにクリスさんに近づき、砂時計に手を置いた。すると大気の震動も収まった。
「そんな……」
クリスさんが驚愕する。見れば、砂時計の砂が消えて無くなっていた。
「汝の命を救ったのだ。むしろ、感謝してもらいたいところなのだがな……」
と、魔王は不敵に笑う。
「ならば」
とクリスさんは更に何かを取り出そうとするが、
「飛べ」
と、魔王が言うと、クリスさんは消えた。
「クリスさん!」
「なに、心配には及ばん。子供は家に帰る時間だったというだけのことだ」
と、魔王は言い、そして消えた。




