第11話 クマのぬいぐるみ
お城に戻った私は医務室に向かった。魔王から貰ったクマのぬいぐるみを拾うためだ。魔王はベッドの下に落ちていると言っていたが……
「すみません。ちょっとベッドの下を見せてください。」
「ベッドの下?」
と医務室にいたクリスさんは怪訝そうな顔をしていたが、有無を言わさずベッドの下を見る。
あった!
あれ?
随分小さい?
夢で見たクマのぬいぐるみよりも随分小さいクマのぬいぐるみにビックリしていると、クリスさんが言う。
「あ! そのクマのぬいぐるみ、ベッドの下にあったんですねえ……」
「え?」
「それは、前にここで寝ていた女の子が持っていたぬいぐるみなのですよ。無くなったと大騒ぎをしていたのですが、そうですか……ベッドの下に入っていたとは思いませんでした。これで持ち主に返せますね。」
「いや、これは……」
そもそも、魔王から貰ったクマのぬいぐるみよりも小さいのだ。まさか、これは私が魔王から貰った物だと主張する訳にもいかず、ベッドの下から拾い上げたクマのぬいぐるみは、クリスさんに渡すことになってしまった。
やはり、魔王は結界の中で、私は夢や幻覚を見ているのだろうか……
そもそも、魔王が結界の中にいるかは確認できないのだから……
私が考え込んでいると、
「どこでその話を聞きました?」
いつもは穏やかなクリスさんが怖い顔をしていた。赤茶色の瞳が私を見据えている。どうやら私は独り言を言っていたらしい。
「その話とは何のことですか?」
「魔王が結界の中にいるか確認できないのだから、という話です。」
「その話なら、父からです。」
「レイチェルさんのお父上からですか……」
ふーむと、今度はクリスさんが考え込み始めた。クリスさんの銀髪がキラキラと輝きとても綺麗だ。
「確か、お見舞いに来ていらっしゃいましたよね?」
「ええ、泊まり込んで私の面倒を見るって騒いでいました。」
フフと、やっとクリスさんは笑顔になった。
「もし、よろしければ、お父上の話を聞かせてはいただけないでしょうか?」
「はい。いくらでも。」
私の父は、いつも変な研究をしているが、おかげで大体のことは知っている。おかげで私も特定の分野については、先生よりも詳しかったり、教科書に載っていないことまで知っていたりするのだが、それがどういう訳か学業に活かされないのが不思議でならない。
そういった話をクリスさんにした。クリスさんは、先ほどの怖い顔が嘘のように、ウンウンと笑顔で聞いてくれた。
「是非、お父上にお会いしたいですねえ。」
「父は暇なので、クリスさんの都合の良い日を教えていただければ、すぐに会えるように手配しますけれど?」
「では、明日の夕方はどうでしょうか?」
「はい。聞いておきますね。」
様々な研究を行っている父にとって、宮廷魔術師で穏やかなクリスさんは相性が良いのでないかなあと思った。




