第10話 結界の情報
【第9話読み飛ばした人用まとめ】
夜中に現れた魔王は夢だったということで無理矢理に自分を納得させたレイチェルは、両親のもとに、いったん帰る。そこではいつも通りの日常があったが、夜中に突然の痛みと激情に襲われる。そこに魔王が現れ、レイチェルの痛みを和らげるのであった。
魔王と私が離れられない運命って、この痛みのことなのか?
この痛みは魔王のせいなのか?
魔王がこの痛みを和らげてくれるのか?
魔王は私を抱きしめて言う。
「色々聞きたいこともあるだろうが、今は答えられぬ。」
魔王の体はひんやりとしていた。さきほどから私を支配していた激情もおさまり、落ち着いてきた。
「結界に変化が無いって、魔王は結界の中にいるって、クリスさんが言っていたけど……」
「結界に変化が無いから魔王は結界の中に……それでは、汝の目の前にいる余は何者なのだ?」
と、魔王の金色の瞳が私を見据えた。
ということはクリスさんの言うことが間違っているということなのだろうか?
「目に見えること全てを信じるのもどうかと思うがな……見えていることを信じないのもどうかと思うぞ。そもそも、クリスとやらは、結界の中までは調べておらんのだろう?」
魔王は私の癖っ毛の髪を愛おしげに撫でながら言う。
「多分……」私は認めるしかなかった。
「それからな、クマのぬいぐるみがベッドの下に落ちていたぞ。汝にあげた物であるから捨てるなとは言わんがな。大事にされないと悲しくはあるな。」
そう言えば、クマのぬいぐるみこそ、魔王が現れた物的証拠になったのでは?
「ごめんなさい。あとで拾っておきます。」
「謝る必要は無い。汝は特別であるからな。」
「私が特別ってどういう意味……」
私がどうして特別なんだろう?
私が考え込んでいると、魔王は私の瞳を覗き込んで言った。
「汝の美しい緑色の瞳……変わらんな……」
ドキドキした。そう言えば、魔王が怖くなくなっている。
「ねえ、どうして、私は特別なの?」
魔王は答えず、半分怒ったような悲しげな顔をして、
「また、会おうな。」
と言って、黒い霧になった。
そして、気がつくと朝になっていた。あれも夢だったのだろうか?
こうやって、毎晩毎晩、魔王が枕元に立つというはどういうことなんだろう?
こういうときには父に聞いてみるに限る。父はいつも変な研究をしているだけあって、私が疑問に思うことは大体知っている。
「魔王が毎晩、枕元に、か……そんな話は聞いたことがないなあ……」
「そうかあ……」
父でも知らないことがあるんだな。
「それじゃあ、魔王を封じている結界にはついては何か知らない?」
「あの結界か……それについての文献はあるが……何が知りたいんだ?」
何が知りたいと聞かれても困ってしまう。
ええと、魔王が中にいるか調べる方法かな?
「結界の中に入らず、魔王が中にいるか調べる方法は無いの?」
ちょっと待ってろと行って父は書庫の方に行った。ボロボロの文書をいくつも持ってきて言う。
「残念ながら無いようだ。ちなみに結界の張り方はドラフォレスの聖剣と聖女がいれば良いようだぞ。」
「ドラフォレスに聖女様なんていたっけ?」
「聖女は魔王が結界を破りそうになると自然に現れるのだそうだ。」
それは随分、都合がいい話だなあと私は思った。




