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スピカ

掲載日:2016/07/14

自ら輝く星のようになりたい


 人は亡くなるとお星様になる。


 そんな話を聞いたのは、小さな子供の頃の話であって、今となってはそんな話を信じているような年齢でもないし、特殊な信仰を持っているわけでもない。


 もしこの年齢になった私が口癖のようにそんな事をいっていたら、きっと周りからかなり痛い奴という目で見られるのは間違いないだろう。


 だけども、もし自分が死んだ時にお星様になるとしたら、私はどの星になるのかと、見上げた夜空に輝く星を見て思う。


 冷静に考えれば、肉眼で見えるかどうかギリギリのラインではないかと思う。


 むしろ、遥か彼方で自ら輝く恒星ならまだマシな方で、月や金星みたいに太陽の光りに照らされて光る惑星と言うならば御免被りたい。


 灼熱の炎で焼かれそうだし、誰かのお情けで光るというのもなんだか哀れなような気がするのだ。


 出来る事であるならば、どんなにささやかな光りでも私は自ら輝きたいのである。


 もちろん、そんな事は無理であるというのは百も承知の事であり、どうやら自分は惑星すらになれそうもない事も。


 良くて小惑星、悪くて宇宙に漂うデブリでしかない。


 恒星の放つ光が届かない、暗黒の空間に浮いているだけなんじゃないかと思う。


 それでも、そこに存在するという事は何か意味がある事なのだろうかと思うのだ。


 意味は解らないし、それが解る日は来ないかも知れない。



 

 少し時間を遡る。


 私は中学時代にクラスメイトだった人のお通夜に出ていた。


 すでに中学を卒業してから何年も経っており、いくら地元暮らしとは言え、元同級生達と顔を合わせるのは久しぶりの事だった。


 とは言え、私はクラスの中でも目立たなく、特別に仲の良い友達もいない人間だったのでとても浮いていた。


 「山田さん、久しぶりね。ねぇ、聞いた?」


 通夜が終わった後、式場を出たところで、そんな私に声をかけてきたのは、当時からお喋りだった特に仲が良かったわけでもない内田さんだった。


 「何が?」


 私は話しかけられたのと、何の事か解らないと言う事で、すこし上ずった声で聞いた。


 「百々村くん、自殺だったんだって。今日の夕刊の地元欄にもそう出てるわよ。歩道橋から飛び降りたうえに、車に轢かれて即死だったっんですって」


 「嘘?お通夜では、事故って言っていたのに」


 「さすがにお通夜じゃ、自殺だと言えなかったんじゃない?前の日からお酒を飲んでフラフラしていたんですって」


 彼女は何故か楽しそうにそう言うと、他の元クラスメイトを見つけて、自分が持っている情報を伝えに走って行った。


 彼女の声が大きかったのか、どうやら親類らしい参列者に睨まれ、その視線に耐えきれず、私は逃げるように会場を後にしたのだった。



 中学時代の百々村君は、運動も勉強も出来て、その容姿からも、人気者だった。


 気さくな性格は教師受けも良く、生徒会長もしていた。


 底辺校に進学した私とは違い、進学校に進んだ百々村君の噂は県中に轟き渡り、神童とも呼ばれ、末は博士か大臣かと言われていた。


 百々村君の噂を聞かなくなったのは、東京の大学に進学してからで、そんな百々村くんに久しぶりに会ったのはつい一週間前の事だった。


 「ひさしぶりだなぁ、山田さん。元気だったかい?」


 道端で偶然、久しぶりに会った百々村くんは、昔と変わらない笑顔で私の前に立っていた。


 変わったのは、少し出たお腹と、ボサボサの髪の毛に、延び放題の無精髭だった。


 「こっちに戻ってたんだ。元気?と言うか、良く私の事を覚えてたわね」


 私がそう言うと、百々村君は笑って言った。


 「クラスでいちばん目立っていなかったからなぁ、山田さんは。だから覚えているんだよ。僕はすっかり東京で身体を壊しちゃってね。それで先月、療養の為に戻ってきたんだよ」


 百々村君はそれじゃあ、病院に行くからと言って、私の前を通っていったのだ。

 


 時間は戻る。


 百々村君と私のエピソードは、エピソードとは言えないくらいのこの程度のものである。


 別に恋仲になったとか、甘酸っぱい片思いの思い出があるというわけでもない。


 だけども、亡くなった百々村君の事を思い返して夜空を見上げれば、漆黒の闇の中に輝くスピカとダブって見えた。


 夜空に輝くスピカの様な人。


 人は死んだら星になる。


 実際にはそんな事は無いのだけれど、百々村君の事を思い出せばそう思わずにはいられなく、遠い宇宙の向こうで孤独に輝く彼の事を事を思えば、少し悲しくなったのだった。


 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、誰もがなれるわけではない。

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