5、本来の時間軸は
本日2話目の更新にして、最終話です。
「こんな本、入れた覚えがないのだけど・・・・・・」
女は古びて色あせた、赤い表紙の本を手に取った。
そこには驚きの内容が書いてあった。
あなたへ
あなたがこの本を読む頃、あなたは記憶を失い始めることでしょう。
過去のあなたからあなたへ、真実をお話しましょう。
あなたは、人間ではありません。
運動神経は人並み外れており、とにかく頑丈。 病気にかからず、両親とは血は繋がっておらず、子どもを産むことができません。
それがあなたです。
記憶の容量が足りなくなった時、あなたの記憶は少しずつ失われます。そして記憶を完全に失った時、あなたは別の人間として、新たな人生を歩み始めるのです。
時には赤子になり、人に拾われ、家族を作ることもあります。
年若い少女の姿になり、恋人を得ることもあります。
老婆となり、スラム街をさまようこともあります。
そうやって何百年もの間、あなたは生きてきました。
そうしているうちに、あなたはいつしか自分自身が何者なのか、全く分からなくなってしまいました。
記憶の容量は、減り続けています。長く生き続けた弊害なのでしょう。
記憶の容量がなくなった時、あなたがどうなるかは誰も知りません。
だから、あなたはあなたの人生を楽しんで下さい。
いつか来る終わりを、後悔しないために。
姿が変わっても、記憶を失っても、あなたはあなたです。
あなたに幸がありますように。
過去のあなたより
金の髪に青い瞳をした女は、本を取り落とした。
「私が・・・・・・人間じゃない・・・・・・? 嘘よ、嘘!!」
けれど書いてある文章に、心当たりがあった。
女は小さい頃から運動神経は人並み外れており、とにかく頑丈だったのだ。 病気にかかったこともありませんし、両親とは血は繋がっていない。
夫はいるが、なかなか子どもができないので、ひそかに悩んでいる。
「私は記憶を失うの?」
大切な記憶が少しずつ失われていく。それは考えただけでも、ひどく恐ろしいことであった。
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見たところ体に異常はなく、どこにも不調はなさそうだった。 その場からゆっくりと立ち上がる。女は地面に寝転がっているのだった。
「・・・・・・ここは、どこ」
女は、目覚めた。
伏線が分からない方
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覚えていないと思いますが、最後の段落は1話めの最初の部分を下から読んだものです。
そして今回のサブタイトルと合わせて考えて見て下さい。
ということは・・・・・・。