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4、sea
大切なものはなんなのだろう、と女は思った。
いつも感じていたぬくもりが、気配が、そばにはない。 女は一人だった。
「また、忘れるのね」
どこまでもどこまでも続いているような、そんな景色が目の前にあった。
初めてできた恋人と女はキスをした。
女はまだ若く、愛らしい少女であった頃のこと。
「あなたといられて、私は幸せだわ」
女は幸福の中で、柔らかく微笑む。
目の前にはきらきらと光を反射する、青い海が広がっている。
砂の感触を素足に感じながら、バシャバシャと音をたてながら、冷たい水の中にかけていく。透き通った水は、砂浜に打ち付ける。
貝殻からヤドカリが顔を出した。
女は黒い髪を振り乱し、黒い瞳は涙に濡れていた。
「繰り返している、の? それなら私は一体・・・・・・」