2、forest
いつしか女は夜闇に包まれた、不思議な林の中を歩き続けていた。
「他の人はどこにいるのかしら」
それに水晶の木々の数はあまり多くなく、周りを様々な色の光が飛び交っている。時折笑い声やはしゃぐ声が聞こえる。 見た目は普通の木々であったが、それらはさわさわと音をたてていた。
「景色が変わってきたわ」
そこには、キラキラと発光する水晶の森が広がっていた。月明かりに照らされ、様々な色の光が飛び交う度に、色を少しずつ変えていく水晶たち。
どこからか、美しい音色が聞こえてくる。
「綺麗・・・・・・」
夜なのに、周りのおかげで昼間と同じくらい、明るく感じることだろう。
・・・・・・おいしそうな甘い物の匂いがしてきた。女は鼻をひくひくとさせてしまう。
『さぁ、召し上がれ!』
そこには幸せの形があった。
恋人に微笑む女の手には、銀の指輪が輝き、リビングのテーブルの向かい側には、温かな笑顔がある。
『すごくうまそうだな』
不安げな顔の女は恋人を見つめる。
少女は試行錯誤をして、作り上げたらしい。
愛しい愛しい恋人のために作った、イチゴのショートケーキだ。
漂ってくる匂いは、生クリームの匂いだ、と女は思う。
「それにしても、なぜ自分のことがほとんど分からないの・・・・・・?」
薬指にある銀の指輪がきらり、と輝く。