第七話 入学式と意外な出会い
年が明け、入学の日が迫ってきた。
今回の移動は、しばしのお別れという事でセバンツや父の部下が気を使ってくれ、親子水入らずでのリガリアへの小旅行という形になった。後、サネラ先生は、引き続きシロエの教育係として。ガイル先生はシロエがもう少し大きくなるまでは、母の護衛として、大きくなったら武術の先生を引き受けるという事になり、引き続きメイナー家に仕える事となった。ガイル先生はオルナと最近怪しい仲らしいが、そのへんが関係してるのかもな。
「クロエルド様、体調の管理は怠りなさらぬよう」
「坊ちゃま~早く帰ってきてくださいね~!」
「おにいたなー がんばってー」
暖かい送り出しにちょっとジンとくる。これが某妹なら、これで周囲の空気が少し綺麗になりますね。とかいいそうだ。いっててちょっと泣けてきた。
シロエはたぶんよくわかって無いだろうな。お兄ちゃんの事忘れないでね!
「じゃあみんなもお元気で!」
「クロエはもうどんな魔法を覚えるか考えてるの?」
「う~んまだ朧気ですね。そういえば父様と母様は、どうして今の魔法を?」
「私は、まだ若かった頃に、デンゼルがよく怪我をしててね。無茶ばっかりする人だったの。だから少しでも治して上げたくてね。ただ、魔力も才能もいまいちだったから、未だに大した治療はできないの。ふふ」
そうはいっているが、母は、女神式包帯術という治癒系魔術の使い手で、魔力によって創られた包帯を巻きつけ、その部分の治癒を早めるという、なかなかすごい術だ。ただいうように重傷だったりの場合、そこまで期待はできないらしいが。
「私は魔術より気術の方が単純に合っていたし強いと思ったからだな。魔術の才能はそこまでなかったしな。」
父は魔術をほとんど使わず、気術に特化したタイプだ。まああれだけの事ができれば確かにそうなるか。
俺はどういう魔法術を目指すか... なんとなくのイメージはあるが、まだまだ勉強不足、学校に入ってからゆっくり構成を固めていくつもりだ。
「そういえば、クロエとこうやって遠出するのは初めてね。ふふ、デンゼルばっかりずるいって思ってたけどやっと一緒に出れたわ」
「北が落ち着いてくれればもっと家でゆっくりできるのだがな... 上も未だ曖昧な対応しかしておらぬし、困ったものだ。っとこれは内緒だぞ。はっはっは」
「戦争なんて早くやめて欲しいですね。そういえば母様、リガリアは初めてですよね。どこに行きたいですか?」
「そうなの!まずは美術館、後はお芝居もみたいし、流行のドレスもみたいし...」
「全部回りましょう。僕も楽しみです」
そんな感じで盛り上がりながら、俺たちは馬車の旅を満喫し、リガリアを回り倒した。
そして入学式当日。
学園内は基本部外者は立ち入り禁止となっているので、親の参列は無し。という訳で
大学前でお別れとなった。
「無理だけはしないでね、クロエ」
母はそういって少しだけ涙を見せ、父に肩を抱かれていた。熱いぜパパン。
「ではいって参ります。父様、母様、お元気で...!」
ーーー
会場に入ってからまず思ったのは、人数少なっ!という事だった。
ぱっとみて40~50人くらいだろうか。まあ狭き門だといってたし、こんなものなのかね。
これが今年集まった全国のエリートと言うわけだ。自分もその一員だと想うとちょっとニヤける。前世ではありふれた私大だったしな。
「静粛に。え~私がこの大学の校長を勤めております、セルゲイ・バジリフと申します。まずはみなさん、入学おめでとう」
壇上に現れたのは、いかにも魔導師といった風貌の老人だったが、ちょっとびびるくらいのオーラがでてるやばそうな人だった。
「魔法術というのは無限の可能性を秘めております。そもそも魔法術が現れた...」
風貌ではビビらされたが、お話の内容は所謂一般的な校長の長話で、催眠魔法でも含まれてるかのような話し声に何とか抵抗していると、何とか夢の世界に旅立つ前に話は終わってくれ、次にでてきたのは、イケメンなお兄さんだった。
「え~校長の長話でみなさんお疲れのようなので僕からは短めに。生徒会長を拝命しております。リーベルト・フォーリーです」
校長の機嫌がチョー悪そうになったけど大丈夫なんですか会長。
「魔法の可能性は無限だ!といわれても、まだピンときませんよね。ではまずこれをご覧下さい」
そういって会長は分身した。ナニこれすげえ
周りも、ざわざわし始めた。ってかこんな事までできるのか、夢が広がるわあ。
「ちょっとは驚いて貰えたようで何よりです。これはほんの一端ですが、みなさんが思う以上に、魔法というのは自由で、努力次第で本当に様々なことができてしまいます。それだけに恐ろしい部分もあります。この大学でしっかりと励み、素晴らしいさも恐ろしさも知り、その上で、その素晴らしき魔法術の才能を開花させていってくれればと思います。では最後に後ろをご覧下さい」
後ろを振り返ると、なんと超巨大な校長先生のホログラフっぽい物が立っており、
そしてその直後、炎の柱に包まれ、悶えながら巨大校長は消えていった。ワロス。
他の人も驚きと共にクスクス笑っていたが、校長が滅茶苦茶不機嫌オーラを出し始め、シーンとなってしまった。
あの二人喧嘩でもしてんのかね...
そんなサプライズ魔法もあったりな入学式を終え、各自教室へと向かうことになった。
人クラスの人数は10名ちょっとだった。少なめに分けているのは何か意味があるのだろうか?少人数でしっかり教えようってとこだろうかね。まあ人数は少ないが、くせのありそうな感じの面々で、退屈はしなさそうである。
二人ほど獣人族の人もいるようだ。一人は犬か狼といった感じの人。もう一人は猫かな、そんな感じのかわいいお姉さんだ。是非仲良くなってお耳などを触らせて頂きたいと思います。
「やあ、初めまして。僕はレニっていうんだ、よろしく。君は?」
周りを観察していたら、隣に座ってたどこかほんわりした感じのお兄さんに話しかけられた。
「僕はクロエルド、クロエって呼んで下さい。これからよろしくお願いします」
「クロエくんか。気になってたんだけど君、何歳なんだい?」
ですよね!周りを見ても、年上っぽい人ばっかだもんな。できればかわいい弟ポジを獲得したいところだ。前世から考えると明らかに俺が一番おっさんなのは忘れて下さい。
「今年11歳になります。年上の方ばかりで緊張しちゃってました」
「若いね!確かに君くらいの子はいなさそうだけど、ここは年はあまり関係ないから気にしなくていいと思うよ。僕も君も、みんな年も種族も関係なく集まった、才能を認められた同士達だしね」
おお、いい人そうだ。是非お友達にならねば!才能を認められた同士かーいいねいいね。
「ありがとうございます。レニさんがいい人そうで安心しました」
「ははは、まあこれからよろしくね。っと」
なんて話してると、担任らしき先生が入ってきた。
「はーいお静かに~。みなさん初めまして。私がこのクラスを受け持つことになりました、マリカ・メルトといいます。ええと、一人遅れてるそうですが、先にお話ししちゃいますね~」
なんだか緩い感じの可愛らしい先生だ。が、なぜか髪の色がドピンクだ。あれ地毛なのかな...
「今日はみなさんの自己紹介と今後についてと、寮についての話で終わりですので、もう少し...」
ガラッ
話を聞いていると、遅れたらしい生徒が到着したのか入室してきた。
綺麗な銀髪に淡いグリーンの瞳、まだ幼いが将来有望そうな整った顔立ち、まるでソラナのような女の子だ。っていうかソラナ本人だこれ。
ええええ!!なんでここにいるのよ。あなた王族でしょうが!
「あ、ソラナさんですよね?良かった、間に合いましたね~今丁度自己紹介を、っていってた所なんです。と言う事でソラナさんから自己紹介張り切ってどうぞ!」
「え、あ、はい。では... ソラナ・ソル・アーセナルと申します。一応王族の末端では御座いますが、気にせず、仲良くして頂ければと思います」
と、優雅に挨拶し、完璧なカーテシーで締めた。まるで貴族みたいだな。いや王族だけど。
そして俺と目があったソラナは、ちょっとびっくりした表情を見せつつもさりげなく俺の隣へ座った。
そうして、とりあえず後でゆっくり話そうとだけいいあい、クラス全員の自己紹介と明日の予定、寮の説明や各施設の説明の後、みんなで場所を確認した後、解散となった。
「お久しぶりですね、クロエ。息災でしたか?」
だれだこれ。
「ひ、久しぶり。ソラナだよね?しゃべり方が気持ち悪いけどどうしたの?」
ズンッ!
「もう!もう10歳だしお淑やかにいこうと思ってたの!」
お淑やかな人は、そんな手慣れた腹パンは撃てないとおもうよソラナさん。
解散になった俺達は、大学内にある食堂へと移動していた。喫茶室を兼ねているようで、お茶を飲んでいる学生もちらほらいる。腹パンの痛みに耐え、紅茶を2つ購入し席へと着いた。
「ともあれ、元気そうで良かったよ。でもまさか、ソラナと一緒になるとは思わなかったな」
「私もその予定は無かったんだけどね。クロエ、私に手紙くれたでしょ?あれを見て、お兄様に話したの。そしたら、ちょうどいいからソラナもいってみてはどうだい?っていわれて... 気術は私も多少は使えるようになってたしね」
「ちょうどいい?」
「うん。実はね...」
周囲を確認し、小声でソラナが話してくれた内容は、なんとも困ったお話しだった。
あの砦事件の後、第二王子であるアルセルが、事件の黒幕お突き止めようと捜査を開始するも結局到らず、それ以降も王位継承者同士による派閥争いは今も続いており、特に第一王子と第二王子の争いが激しくなっていっているらしい。アルセルも、自分を慕ってくれているソラナを狙われた事で、むきになっている部分もあるのだとか。王子同士も暗殺や失態に気をつけねばならないが、中立の立場にある第一王女派は双方取り入ろうと画策しているくらいだが、第二王子派であるソラナは排除される可能性が未だ続いている。
そして、このままではいつまたソラナが狙われるか分からず、王族とて容易に手が出せないであろう魔法術大学への入学となっったそうだ。
「ここなら下手に手を出そうものなら魔法術協会を敵に回す可能性があるし、安全なの。お兄様は好きだけど、派閥争いなんてどうでもいいし、早く落ち着いて欲しいわ。ほんとくだらないんだから!」
ここへ来る途中も、入る前に殺っちゃえ☆といわんばかりに盗賊やらに襲われ、入学式に間に合わなかったらしい。まあここに入れるくらいの才能があるんだし、魔法術を磨かれ強くなったら余計邪魔になるだろうしな。卒業までにはさっさと決着をつけておいてもらいたい所だ。
「まあまた会えて嬉しいよ。クラスのみんなも面白そうな感じだし、今から楽しみだね」
「そうね。私も楽しみだけど、魔法術では負けないわよ。王族としての意地もあるし、トップで卒業して見せるわ」
「お手柔らかにね。そういえば、あの砦の事件の後、図書館で面白い料理の文献を見つけてね...」
なんて、あれからの近況を遅くまで話し込み、見回りの先生に早く寮に戻りなさい!と怒られてしまい、また明日と手をふって寮へと向かったのだった。
寮に入ると、なにやら騒がしい。何かあったのかな?
訝しみつつ、割り当てられた部屋に(なんと一人一部屋の割り当てなのだ)向かおうとすると、丁度お昼に紹介された寮長さんがこっちへと歩いてきていた。
「あ、ええっときみは、今年の入学生だったかな」
「はい、クロエです。今日からお世話になります」
「ふむ... 実は、今大学から知らせがあってね。実験用の貴重な動物がこちらの方へ逃げてきてるかも知れないらしいんだ。ハムロップイヤーという、白色の体毛に黒っぽいたれ耳があるネズミみたいな動物らしいんだ。もし捕まえたらお礼も出るそうだから、見つけたら捕まえて知らせてくれないかな?」
「分かりました。ちょっと見て回ってみますね」
「ありがとう。まあちょっとみるくらいでいいから。きてそうそう済まないね!」
動物実験とかまでやってるのかここ。いろいろやってんだなあ...
というわけで、軽く見て回ったが、結構他の人も、お礼目当てか探しまわっているようで、早々にあきらめた俺は、部屋に戻った。
部屋は、6畳くらいのワンルームで、ベッドと机、本棚は備え付けだった。
なかなかいい部屋だ。前世の部屋をなんとなく思い出した。そして、部屋をぐるっと見渡すと、ふとベッドの上に何かが置いてあるのに気付いた。
違う。あれネズミじゃん。
おお、さっきいってたのってこいつか?たしかにたれみみだし間違いないな。しかしえらいかわいいな!
とにやけたが、寮長の言葉を思い出し、ゆっくりドアを閉めた。
すまない、捕獲命令が出てるんだ。大人しく捕まってちょうだい!
ゆっくり近づくが、あちらもこっちに気づいたらしく、俺を凝視しているネズミ。にじりよる俺。
「ちょちょちょちょちょっとまっって!!ああ、違う!」
...なんと、ネズミがしゃべりなすった。
日本語を。
このままいってもいいんだろうか...