閑話 サンドイッチ
短め
先日ソラナに生クリームどら焼きを食べさせてもらってから、
俺はある欲望に取り憑かれていた。
ーー前世の料理が食いたいでござるーー
それまではヒリアの作る料理に満足しており、特に思い出す事も無かったのだが、
特にアンコを食べたせいで、前世の料理に想いを馳せるようになってしまった。
といっても、この地方では米という物が存在していないようで、米食は難しい。
まあ俺は朝はパン派だったし、大学に入ってからは昼もパンが多かったせいか
そこまで米に飢える訳ではない。まあいつか見つけることが出来れば食べたいけどね。
で、思いついたのが、「マヨネーズ」だ!
この、神がもたらしたとも思える、全世界にマヨラーなる信者をもつ最強の調味料!
レシピは意外と簡単だし、何にでも使え、メイナー家の食卓に新風をもたらす事は間違いないだろう。
そして、俺の大好物だった、ポテトサラダサンドと卵サンドが今回俺が挑戦する料理である。
サンドイッチもこの街にはないっぽいので、家族の評価が高ければ誰かに出資でもして
お店を出すのもありかもしれない。街の名物になるかもだし、我が家の収入もアップするしな。
うぇっへっへ
ってな訳で、まずはマヨネ作りから始めます。
レシピの入手先は図書館でたまたま見つけた事にする予定。
ここメイナー領の領都ロヌでは、父と各ギルドが出資しあって割と立派な
図書館が存在している。
何度か行ったことがあるが、蔵書も多く、様々な分野の物が揃っているので、
ばれることは無いだろう。
ヌーベル・キュイジーヌ!
ーーオルナ視点ーー
今日は坊ちゃんが朝からヒリアさんと厨房に籠もって何かを作っているみたい。
なんでも、図書館で東大陸の料理に関する文献を発見し、そこで見つけた
レシピを再現してみるのだとか。
お昼にみんなで試食するらしいので、今から楽しみだわ。
昔から坊ちゃんは優秀な子でした。
幼い頃から知識欲が旺盛で、最初は教える立場だったのに、今では
教えられる立場になってしまった... それでも私を、姉のように慕って
くれる坊ちゃんは可愛くて仕方ないんですけどね!
さらに7歳には魔力回路を開いてしまった。そこで慢心せず、地道に
気術の修行をこなし、他の勉強も頑張っているのはさすがです。
でも、まだ子供なんだし、もっとゆっくりすればいいのにな...
デンゼル様から止められているので、坊ちゃんは知らないが
サネラ先生は「クロエルドさんは天才ですね」と、最高の評価をつけているし
ガイル先生は「あの魔力量と気術のセンスは、末はどうなるか恐ろしいくらいです」とこちらもすごく評価されている。
両者とも厳しい方なので、滅多にそんな事はいわないそうなの!
...でもガイル先生は普段が適当だけになんともいえないんですけどね。セクハラは
どんどん増えて行くし...
一度どこかの骨を粉砕してわからせてあげた方がいいかしら。ふふふ
あのセクハラさえなければかっこいいのになぁ。意外と優しいし?
武術の先生だから当然腕っぷしはあるし?笑顔が意外と可愛いし?
「オルナー出来たからみんなを読んでもらえるかな? ...何してるの?」
ハッ!いつの間にかお昼だわ!どうしましょっ!
...午後からがんばりましょう。うん!
そして使用人含めみんなが集められ、試食会となりました。
出てきたのは... 薄く切ったパンに、何かを挟んでいる?
たしかに見たことがない料理ですね。
「これは東大陸にある料理で、サンドイッチという物だそうです。まあまずは食べてみて下さい」
では、遠慮なく、いただきまーす。ぱくっ
こ、これは...!
「ぼぼぼ坊ちゃま!すっごく美味しいです!!」
「うぉ!そ、そう、よかったよ喜んでもらえて」
パンに挟むという発想も素晴らしいですが、なんといっても
この具がすごいです!単純な卵やジャガイモを使っているのに、
それに絡められたソースがそれらの具を別次元の物に変えてしまっています。
ほのかな酸味とえもいわれぬ旨味がなんともいえず、手が止まりません。
これは食べ過ぎちゃいますね。どうしましょうどうしましょう!
ふと周りをみると、みなさん黙々と食べ続けています。
うん、これはしょうがないですよね!さてもうひとつ...
「すごく美味しかったわクロエ。このソースは何なのかしら?」
「はいお母様、材料は意外と簡単なんです。卵と酢と油に香辛料をすこし」
「まあ、そんなものからこれが... 分からない物ねえ」
「好評のようですし、これを使った料理店を作ってみたらと思っています。上手くすればメイナー領の新しい名物になってくれればいいですね」
なんと、坊ちゃんはそこまで考えてらしたのか。さすがです!
しかしレシピの流出は怖いですね。屋敷のセキュリティレベルを一段階上げておきましょうか。
文武両道、探求心も素晴らしく、そこに留まらない柔軟な発想。メイナー家の将来は明るいですわ旦那様!
...はぁ、私の旦那様は何時現れるのかしら。
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