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鯉は恋をした-19-
◇ft.雫
雫は湖の中でボンヤリとした様子で今夜のことを思い出していた。
雫は自分の胸に手を当て、瞳を綴じる。
海渡に抱き締められた時のことを思い出すと、心臓の音が早鐘し、瞳を綴じてもその音が自分の耳に聞こえていた。
胸は苦しくて痛い。けれど、嫌ではない。
(凄く、ドキドキしている…)
雫は空を見上げる。湖の中からでも綺麗な月は見えていた。
ユラユラと水が揺れると月も同じように揺れる。これが三日月だった場合、きっと、揺りかごのように見えるだろう。
「人魚姫も、こんな気持ちを味わったのね…」
(彼ともっと話したい。触れたい…)
自分の願いは叶ったはずなのに、次々と新しい願いが生まれ欲が出てしまう。
自然と口から溜め息が溢れる。溜め息は小さな泡となり、上空へと上がっていった。
「早く明日が来ればいいのに…」




