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鯉は恋をした-14-
◇ft.海渡
海渡は歌う。会いたい、彼女のことを知りたいと思う気持ちが歌に出るように。
すると何処からか、自分の歌声と重なるように別の声が聞こえてきた。
«君が笑う世界が好きで»
「っ!!」
«穏やかな日々が好きで»
「……やっぱり、彼女の声だ!」
«かけがえのないもの見つけた»
歌声は聞こえるのに彼女の姿が見当たらない。湖の何処かにいるのは間違いないけれど、海渡に姿を見せることは無かった。
それでも海渡はガッカリせず、彼女と一緒に歌い続ける。
«すべての思い出達が私の物語»
「すべての思い出達が私の物語」
二人の歌が重なり新しいメロディーとなる。姿は現さないけど、海渡はお互いの距離が一歩進み嬉しかった。
そして、海渡と雫は、また何気ない日常へと少しずつ戻って行った。




