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鯉は恋をした-13-
◇ft.雫
雫は湖の中から空を見上げ、頭上にある月を眺めていた。
心は、このなだらかな川のように落ち着いている。
「私の願い……私の勇気……」
月の光は深い湖の中でも小さく光っている。まるで、小さな希望の光のように。
すると突然、何処からか声が聞こえてきた。
それは歌声だった。
(あれ?この歌――)
雫は、恐る恐る歌声がする方に行き、見つからない範囲まで来ると物陰の水面から顔を出した。
そこには一人の人間が座っていた。
「あれは……」
(海渡……?)
雫の胸がドキリと鳴る。楽しそうに歌っている海渡を見ると、胸の奥がギュッと絞められているような気分になった。
痛いけれど辛い痛みではなく、愛おしいと思う痛みだった。
雫は自分の胸に手を当てるとゆっくりと深呼吸をし、この胸の痛みを和らげる。
そして――――




