人格形成 3
多分修正加筆すると思います。
殴りかかられた俺は、自分から手を出すのは止そうと決めていた。
幸い、バイト漬けの日々だったせいもあり、体力自体には割と自信があったので、勉強漬けになっている優等生グループとの体力には隔絶した差があった。
言ってみれば、アスリートと一般人程度には動きの差があったため、避けること自体には然程苦労しなかったのである。
が、このまま避け続けていても、相手はグループ、埒が明かないので俺は奴等を転がす作戦に出た。恐らく運動不足だろうし、足腰は大して強くないはずだ、と踏んで。
そう決めたら後は大して難しいことをするわけではない。殴りかかってきた奴が手を伸ばしきったところを、肩を軽くつかんで足を引っ掛けていなしてやればいいだけである。瞬く間に、優等生グループは地面とご挨拶することになった。
「く、くそ・・・・。勉強だけじゃなくてケンカも強いとか・・・。どこのチートキャラなんだよ・・・・。」
吐き捨てるように優等生グループのリーダー格の一人がそう言うと、奴らは脱兎の如く逃げ出していった。
俺は軽くため息をつくと、最早遅刻寸前となっていたバイトへと急ぐ。
この時、俺は周囲のことに注意を払っておくべきだった。そのことを後悔するのは翌日のことだった。
翌日、俺はいつも通り早朝のバイトを済ませて登校した。
自分の席につき、一眠りしようかと机に突っ伏そうとした瞬間、下がる頭を何者かに支えられた。驚いて眼前を見ると、一人の女子生徒が立っていた。
確かこの子は、柔道部のマネージャーをしていた子だった気がする。
名前は全く知らないが。
「広田くん、昨日あなたが矢上くん達とケンカしてるのを見たよ。柔道をあんな使い方するなんて、どういうことなの?」
矢継ぎ早に、そもそも柔道とはという歴史から始まり、ケンカに柔道を使うことの愚かさ、また上位者が手を抜かずに下位者に対して柔道を使用することの危険性などを一気にまくし立てられる。
・・・いや、ケンカどうこう以前に俺は柔道なんか使った覚えはないんだが・・。
仕方ないので、俺は望まない言い訳をすることにした。
「まず最初に断っておくが、俺に難癖をつけた挙句、手を先に出してきたのはあいつ等で、面倒ごとは真っ平な俺は最初のうちは避け続けることに徹していた。ただ、俺はその後用事があったんで、事態を収拾するためにあいつ等を転ばせようとしただけだ。お前はその場面だけをみたんだろ?」
「そ、そうね。私が見たのは、殴りかかる彼らを、貴方が出足払いで一方的に倒していくところだった。傍から見たら、貴方が一方的に彼らを倒していくようにしか見えなかった。事情を知らなければ、ね。」
「そういうことだ。俺は望んでああいう事をしたかったわけじゃない。だが俺には差し迫った抜けられない用事があった。ただそれだけの事だ。そもそも俺は柔道なんて知らない。」
「色々突っ込みたいところはあるけど、気になったことだけ聞くね。『柔道なんて知らない』って、本当なの?」
「ああ、全く知らない。子供のころオリンピックで柔道やってるとこくらいしか見たことがない。」
「だって、ウチの学校授業でも柔道やるじゃない?」
「ああ、俺は柔道じゃなくて弓道のほうを選択したからな。知らないんだ。人と取っ組み合いになるってのがどうにも好きになれなくてな。」
「それであの体捌き・・・・只者じゃないわよアンタ」
いつの間にか二人称がアンタになっている。ま、いいが。
「で、何が聞きたかったんだ?俺が柔道を知っているかどうかがそんなに大事だったのか?」
「アンタ、今日から柔道部ね。異論は認めないわ。」
「どうしたらそうなるんだ?」
この日から、厄介な女子マネに猛烈なアタック(深い意味はない。不快だが)を受けることとなった。
だんだん路線が・・・・。