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酔って候

これマジでほんとの話なんだけどさ。





昔さあ


隣の市の、美男美女の夫婦が顔見知りにいた訳よ。


確か酒屋さん経営してたと思うんだよ。


子供もお人形さんみたいな、ほんと可愛い女の子でさあ


「あー、この人たちっていいな。何の苦労もしないで生きてるんだな」


そう思った訳。


なんであたしばっかり苦しい目に あたしばっか あたしばっか


ものすんごうく卑屈な時期でね


そんなとき、知ってる人に誘われて


ちっちゃい子供が音楽会やるから来てくれって


枯れ木も山の賑わいだからって


まあ日本語の使い方わかっちゃいねえと思ったし


そんな余裕ねえよとか思った訳 あたし。


それこそ「着て行く服がない」だよ。


でもしょうがないから行ったさ


そしたら、隣市お住まいの美男美女夫婦が来てんじゃん


なんで?隣の市なのに?って思ったよ


保育所の空きがないからこっちに来ていたみたいだね 。


そんでわざわざ隣の市まで音楽会かよ アホかとバカかと。


日曜日なのに。


そしたらさあ


すんごい物静かで知的なキレイ可愛い、美人奥さんの膝の上に


明らかに重度の脳性マヒの男の子が寝てんの。


まばたきする顔とか、もうほんっと脳性マヒの子供さんなの。


えっ って思ったよ


自営業で不安定かもわかんない家計かもしれないけど


賢くって美人の奥さんと 優しい男前の御主人と


えくぼが可愛い、お人形さんみたいな御嬢ちゃんと


絵に描いたようなホームドラマのテンプレート家族に


いきなり生まれてきた脳性マヒのお坊ちゃんだよ


その日は晴れていて、陽の光が、美人妻の全身を照らしていた。


あたしには後光が射しているのかと思った。


美人妻=「おかあさん」は静かな笑顔で、ずーっと子供のお遊戯とか見ててさあ


もう、ほんっと。静かな笑顔なの。


この夫婦はここまで来るのにどれくらいの悲しみを乗り越えたんだろう。


これから先にどれくらいの覚悟を決めて行かないとならないんだろう。


そう思ったらさあ


あたし泣いてたよ、人の眼がいっぱいあんのにさあ。


ばかみたい。




恥ずかしかった。




けど思った。他人の見えない苦労を察することができる自分になりたい。


見えない努力を感じられる人になりたい。


なんにもないよ、あたしの掌の中は。だけど


そう思ってしまった強烈な出来事は


驕っているときに姿かたちを変えて、静かな笑顔で、自分を叩く訳よ。




忘れちゃいませんか ってね。







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