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戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー  作者: たきわ優


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第9話 普通の息子

 朝が来た。

 ばぁばに「朝ですよ、坊っちゃん」と促され、眠い目を擦りながら、「おはにょぉ」と布団からずりずりと這い出る。

 朝の支度をばぁばに手伝って貰ってまだ半分夢の中でふわふわしていると、大好きな時間が訪れる。


「リア、おはよう。良く寝れたかしら?」


 母上が朝の挨拶と共に迎えに来てくれるのだ。

 その声で、母上大好きがいっぱいになり、一気に目が覚める。


「ははうえーおはようごじゃいましゅ……す!」


 そう言って、呪いを誤魔化しながら挨拶しつつ、全力で母上の方へ走り込む。

 母上の足にぎゅっと抱きついていると、僕の頭を撫でながら母上が屈んでくれて、そのままよいしょっと僕を抱き上げてくれる。


「リアはどんどん大きくなるわねぇ」

「えへへ」

「今日もほっぺがぷるぷるねぇ」

「えへへ」


 いつもの優しい母上の香りがして幸せに包まれる。

 そうしながら僕は大好きな母上の抱っこで食堂まで連れて行って貰うのだ。

 マルス兄さんもルーク兄ちゃんもして貰えない僕リアだけの特権に浸れる至福の時間を堪能する。

 でも、幸せは長くは続かなくて……すぐに食堂まで来てしまい、悲しみの中で僕の定席(じょうせき)に着く。

 ちょっと前までは、母上と一時も離れたくなくてイヤイヤしていたけれど、ばぁばの「奥様にお褒め頂けますよ、坊ちゃま」と言う助言で涙を堪えて我慢したら、母上に「凄いわ、リア!」と褒められて以来、涙を呑んで我慢している。

 でも、日に日に後悔が増す悲しみの時間だ。


 そうしていると、使用人が「今日は坊ちゃまの大好きなアレが入ったおにぎりですよ」と朝食を運んでくれて、その言葉で沈んだ気持ちは一気に向上。アレとは何だろうとわくわくが止まらない。

 母上の抱っこ程ではないけれど、とっても幸せな時間が訪れるのだ。


 夢中で味付けしたチーズ入りのおにぎりを頬張り、お腹いっぱいでにこにこしていると、違和感に気付く。

 何だろう?

 何かが可怪しい……。

 右を見て、左を見て、もう一度右を見て………気付く。


 ルーク兄ちゃんがいない――。


 そうだ、昨日僕は泣いていた。

 何故ならルーク兄ちゃんが僕を置いて何処かに行ってしまうから……。

 それを思い出した途端に、この世の絶望かと思う程の悲しみが押し寄せ、今日も再び泣き出してしまう。


「びえーん。にいちゃ……うぐっ…にいちゃがぁぁ……びえーん」


 椅子からずり降り、ギャン泣き状態で、ルーク兄ちゃんを探し求め必死に食堂の中を滲む視界の中探すがどこにも見つからない。

 あれ? 父上もいない……マルス兄さんもいない……。

 そう、ここにはルーク兄ちゃんだけでなく、父上もマルス兄さんもいないことに気付き、更に絶望が広がる。


「あらあら、もう気付いちゃったわねぇ……」

「ええ、お気付きに……。例の件、来週の予定でしたが早めましょうか?」

「そうね。全くルークってば、伝言だけで飛び出すのだもの……数日は帰って来ないだろうし……ええ、早めるわ。お願いね」

「ええ、畏まりました」


 三兄弟の母であるジゼル・マギュロは、ばぁばと小声で相談を終えると、大泣きしているリアをあやしに席を立つ。


 次男は、生まれた瞬間からとんでもなかった。

 天上ではなく地上で間違えて生まれてしまったかのような、神々からの寵愛の塊。

 乳児なのに意思の疎通が出来、子育てをした感は薄く、あっという間に超人となった……。


 長男は、次男より人の子供らしかったかと言えばそうでもない。

 可愛らしく拙かったのは最初だけ……。

 この子も言葉が早く、所謂天才児で、気が付いたら大人顔負けの所作も身に付けていた。

 もちろん子育てをした感は薄い。

 家族愛は深いが、子供特有の感情の起伏もあまりなく、神色自若(しんしょくじじゃく)な子だと思っていたら、一目惚れで狂人に……。


 何で自分の子は普通じゃないのだろうと幾度も悩んだ。

 普通の反応と成長をする周りの子供を持つ母親を羨ましく感じたりもした。

 だが、二人共愛する我が子達。

 狂人だろうが、超人だろうが、普通の子育てとは違うだろうが、他者と比べず、精一杯愛を伝えて注いで、母となれた幸せを子供達に返していこうと決意した矢先、三度(みたび)の妊娠発覚。

 心は正直で、次はどんな普通じゃない子が生まれてくるのかと戦々恐々と妊娠期間を過ごし、そうして生まれた三男は……普通の子だった。


 ジゼル的には、初めての……()()()子育てのようで、実は毎日が楽しくって仕方ない。


 こうやってすぐに泣いてしまうのも愛らしくてたまらない。

 上二人は三歳の頃に泣いていた記憶がない……。

 そう、普通の子は泣くものなのだ。


 全力で悲しみを爆発させ、自分の胸の中で咽び泣く末の息子。

 早くその悲しみを取り除いてあげたい気持ちと、小さな手で必死に抱き着いて愛情を求める可愛さに、ずっとこのままでいたいとも願ってしまう。

 よしよしとあやしながら抱きしめていると、泣き疲れてえぐえぐと泣き声が収まるが、しばらくするといつもハッとしてまた大絶叫の繰り返しだ。

 ばぁばによれば、途中で何で泣いていたのか忘れて、思い出してを繰り返しているのだとか。

 ああもう……可愛くって仕方ない。


 そうして、ジゼルは息子をあやしながら、母としての普通の子育てから得る幸せに浸るのだった。

お読み頂き有難うございます!

次話は、ルークの活躍を敵国目線から…です。

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