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戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー  作者: たきわ優


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第八話

 歩廊の中央後方で一人の老兵が、北の敵陣を見据える次代の領主たるマルスを目を細めながら見ていた。

 年老いて、昔のように戦うことは出来ずとも、後方で新兵を教育することは出来、まだまだ重宝してくれる領主に報いようと、日々背中を伸ばし軍人たる気概を持って勤めている。

 その性格は、至極真面目で実直。振れない忠誠心を未だに衰えさせない忠義の人だ。

 そんな老兵は、マルスに孫を見るような慈愛ではなく、仕える領主へと向けるように敬愛を込めた視線を送っていた。


 まだ戦場へ出たばかりの十五歳。

 前評判は、稀代の(人基準での)天才であり、知能も魔法も武芸も申し分ないと聞いていたが、すぐに才能を発揮し、類稀なる軍才も備えていたことに歓喜した。

 ただ、一部で流れていた噂では、年上の美しい婚約者に溺れており、どういう意味だか「狂人」などと言う者もいくらかいて、若気の至りだろうと思った通り、訓練時も戦場においてそんな様子は皆無であり、噂とは全く馬鹿なものだと苦笑したのはいつだったか……。


 今回の敵国の奇策、まさか魔法で雷を模した攻撃の出来る敵兵個人の力か、はたまた武器――今回のそれは剣――かはまだ不明だが、それを新たに用いるとは思わず、久しぶりに冷や汗が出たのはつい最近。

 その攻撃が、雷と同様のものであり、老兵は知識がなかったので後に説明を受けて知ったが、避雷針なる雷を誘い出し、攻撃を受け止める策をすぐに立てて実行させた。

 その手腕は見事としか言えず、老兵は、マルスに希望と未来を感じていた……のだが、ここに来て、マルスの「狂人」部分を見せられるとはこの時はまだ思いもしなかったのである。





 避雷針を用いた回避策で以って、北の攻撃を無力化したにも関わらず、馬鹿の一つ覚えのように、毎日同じように攻撃を仕掛けて来る。

 今日も朝から、いつものように例の攻撃が放たれ、雷は避雷針に誘い込まれ、どぉぉぉぉぉんという、低い地を這うような音を響かせる。

 敵軍、南としては、新たな攻撃方法で以って、一定以上の成果を出さざる得なく、こうやってしつこく無駄に打ち続けているのだろう。攻撃し続ければ、其の内こちらの避雷針が壊れると思っていそうだ。

 馬鹿なことを……。

 きっと雷に関する知識不足なのだろう。

 大昔の智者が広め、ただの金属棒を家の屋根上に縛り付ける程度は、南北が完全に対立した三百年前にも知られていた事。その特性を理解し、ある程度高さのある建物に設置すべきだと、正式に避雷針として運用されだして南では既に二百年は経っていると言うのに……。


 まぁ良いだろう。

 この戦場で攻撃を受け続けたことで新たな発見もあったのだ。


 通常の天候による自然発生した雷と違い、魔法による雷は魔法故か少々通常の雷とは異なる性質を持つようだった。

 避雷針に引き寄せられた雷の攻撃は、一時的に金属に留まりしばらくの間バチバチと魔力が飛散されるまでその効力を残留させる。そして、その残留魔力はどういうわけか、同じ雷を生み出す魔法を引き寄せるようで、数多く避雷針を設置したが、其の内、最初にその攻撃を引き寄せた避雷針にのみその後の雷の攻撃が集中するようなのだ。

 敵が中央、左右、どの向きに放っても例外なく初撃を受けた避雷針にのみ攻撃が注がれる。

 おかげで、注視すべきはその日最初に攻撃を引き寄せた避雷針だけで良く、なんとも対処しやすい特性で、作戦立案する立場としては敵方が哀れにも思うほどだ。

 だが、敵が諦めないことには、このままだと同じ日がこれからも続くことになる。


 さて、そろそろ頃合いだろうと、マルスは、傍に控えるマークに目線を送る。

 マークは、丁寧に一礼し、すたすたと歩廊から砦内部に続く階段へと降りて行く。


 例の攻撃は、魔力を使い切るまで続き、昼頃にはその脅威はなくなる。その魔力量は、自身を超えるものであり、敵国南で一番だと言われても納得せざる得ない程。だが、それも所詮()()()だ。

 今は、魔力を八割程消費した頃合いだろう。

 脅威がなくなれば、それ以前と同じく、前進し長距離の攻撃魔法による総攻撃から始まり、その日の作戦により、騎兵を使ったり、歩兵による剣での打ち合いなど近距離での作戦が展開される。


 だが、今日は違う。


 第三要塞前に整列し展開する兵達から、大きくはないざわめきが聞こえてくる。

 マルスは、目線をそちらに下げ、表情は崩さず、心の中で自慢げに笑う。

 マークに先導され、爪先から頭までフード付きのローブですっぽり隠れた華奢で小柄な人物の後ろ姿が見える。


 そう、ルークである。


 十歳の男児にしては背が高いが、それでもまだ百五十センチ程度。体の線の細さから、一見小柄な女性にも見える。

 性別の区別なく個の強さを高める魔法がある以上、女性兵士も多い。その多くは、魔法を主とした部隊へ配属されている。

 だが、ローブで姿を隠しながら現れたことで、「一体何が……」「あれは誰だ……」と、音声を受信する魔道具からも、歩廊にいる兵達からも動揺した声が漏れ聞こえていた。

 兵達は、全員が同じ軍服を着用している。連合軍であることから、腕にそれぞれの領地や国の腕章が縫い付けられており、それとは別に階級を示す襟章がある。

 だから、この戦場でローブ姿は、かなり異様に見えるのだ。

 ちなみに、北は装飾の多い儀礼服のような服装や、鎧を身に纏っている者など様々で、こちらとは全く異なる。


 兵達の前、一番前線まで歩き進んだルークを確かめると、音声を送信する為の魔道具で、マークは声高々に話し始める。


「皆、これまでよく頑張ってくれた!この膠着状態を脱し、北に大打撃を与える()()()切り札を用意した!全員その場でしっかりと見届けて欲しい!我ら南に勝機があることを!卑怯な北に鉄槌を!」


 おお!と各所から驚きと、徐々に歓喜の声が上がり、全員が、敵である北側への意識をしつつだが、要塞上のマルスに期待を込めた視線をチラチラを注ぐ中、ある程度落ち着いたのを見計らって――マルスは一層大きな声で叫んだ。


「俺のマリアが待っている!行け、()()()!初陣だ!」


 ぎょっとして誰も声を発せず、驚愕と混乱の静寂中、まだ声変わりをしていない高く子供らしい声が響く。


「了!行ってきます!()()()!」


 と同時に、ルークのいた場所に砂煙が立ち上がった。








 マルスの後方に控えていた老兵は、その光景を見て腰を抜かし、側にいる新兵に支えられながら混乱していた。


 え?ええええ?ルークって、あのルーク(若様)か?

 訓練で何度か顔を合わせたことがある。その力は想像を絶するものだが、まだあどけなさも残る子供ではないか……。

 それに、俺のマリアが待っているって………え?……え?まさか、あの噂は本当だと言うのか?!

 私情の、それも恋情の為にまだ幼いある弟を………え?……え?


 混乱する中、頭の中で思い出される「狂人」と言う言葉。

 軍機を厳守してきた軍人としても、常識ある大人としても、これほど混乱したことのない老兵は、その言葉に至った故に、茹った頭が処理できなかったのか、白目を剥いてぶっ倒れるのだった。

評価有難うございます!嬉しいです!


ここまでお読み頂き有難うございます!

本作タイトル「辺境貴族家三男は最弱最強の兵器」ですが、辺境と言う表現がしっくり来なく‥‥副題もあったほうが良い気がして‥‥で、昨晩突然ですが「戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー」に変更しました。

引き続き更新頑張りますので、今後もお読み頂けると嬉しいです!

あと、カクヨムでも同作の連載開始しました!

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