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戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー  作者: たきわ優


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第六話

 戦争なんて微塵も感じない平和な時間を過ごす僕リア。

 そんな僕にも目下悩みがあり、その懸念事項をどうにかしようと日々躍起になっていた。


 ルーク兄ちゃんは、いつ見てもキラキラのエフェクトで煌めいている。

 生まれた時からそう見えていて、疑問に感じたことがなかったが、ぼんやり前世の記憶を思い出してからは、何故いつもキラキラしているのか疑問に思うのだ。


 ――人は普通、光らないのでは‥‥?


 疑問は解決しておきたい。だから、何でも知ってるばぁばにまず尋ねてみる。


「ねーねー、にゃ‥なんでりゅーく兄ちゃんはキラキラして見えりゅ‥りゅ‥‥るのかにゃぁ?」

「ルーク坊っちゃんは、ルーク坊っちゃんだからですよ」


 全く回答になっていない回答である。

 ちなみに、母上や他の人に聞いても同じような回答しか得られない。

 なら、本人に聞くしかないだろうとルーク兄ちゃんに直接聞く。


「そうかなぁ?リアの目には俺がそう見えるんだね。嬉しいな」


 ルーク兄ちゃん自身には、自分がどう映っているのだろう?

 もう、ルーク兄ちゃんとは、ルーク兄ちゃんであり、ルーク兄ちゃんであればそういう超常現象もありなのだろうと納得するしかない。

 普通、人は光らないという常識は、人より神に近いルーク兄ちゃんには当て嵌まらないのである。

 ルーク兄ちゃんが光るというのは、この世界の常識なのだろう。


 次に思ったのが、夜の暗闇の中で見たら、ルーク兄ちゃんはもっと光り輝いているのか?と言う疑問。

 昼間、燦々(さんさん)と輝く太陽の下で見てもキラキラのエフェクトが可視化されているので、夜ならもっと綺麗に見えそうである。

 ぼんやりした前世の記憶でも同じような記憶がある。

 チビっ子の頃に、誰しも一度は挑戦しただろう。

 サンタクロースの正体を見てやろう、と。

 なので、僕は、一緒に寝て欲しいとルーク兄ちゃんに毎晩お願いして共寝(ともね)して貰っているのだが、所詮三歳児。起きていられないのである。

 サンタクロースの正体をチビっ子が決して探れない法則が、この異世界でも働くのかの如く、暗闇でルーク兄ちゃんを確認することは叶わない。


 今日も、絶対に寝ないでルーク兄ちゃんを見るのだと意気込んで、お昼寝せずに踏ん張っている。

 きっと僕が三歳児でなかったらこの矛盾に気付くだろう。だが、現在の僕は三歳児。

 お昼寝を我慢したら、夜はぐっすりになり、起きるなど到底不可能なことに何故か気付かない。

 ずっと起きているんだ、と言う信念の元、矛盾にも気付かず本日もお昼寝の誘惑と戦っているのである。


 そんな無駄な努力をし続けて数日、ルーク兄ちゃんの肩車できゃっきゃしていた時の事である。


「若様、次代様から言伝を預かって参りました」


 ヒョロリと細身な青年は、中途半端な長さの癖のある髪で目元が隠れている。少し姿勢の悪いその青年は、ルーク兄ちゃんに話し掛け恭しく頭を下げる。


 この男の名は、マーク。マルス兄さんに絶対的な忠誠を誓う青年で、その忠誠心は常軌を逸している。

 マルス兄さんの命にしか従わないし、マルス兄さんの為なら命を捧げるのも厭わない狂人。


 少し前の夕食で、マリア姉さんと母上が、商人から聞いたと言う話で盛り上がっていた。

 フジー大山脈の中腹、人とは相容れぬ魔物の世界。そこに生息するクジャックという鳥型の魔物。その羽根は、光があたる度に青にも緑にも黄金にも輝くらしく、それはそれは美しいのだとか。

 その商人は、伝説とも言われるクジャックの羽根を、とある貴族家で一目見る名誉に与ったらしい。

 マリア姉さんが『素敵ね。私も一目見てみたいわ』と言うやいなや、密かにマルス兄さんが『マーク』と呟くと『御意』と了を返し、その十日後、ボロボロのマークが、クジャックの羽根を持ち帰った。

 マルス兄さんは、膝を付き仰々しくマリア姉さんに羽根を捧げたのだが、全員が、マークのボロボロの寂れ具合にドン引きしていた。


『マルスあなた、マークに何てことを命じたの?!クジャックはフジー大山脈の中腹にいると言うわ!命が幾つあっても危険な場所なのよ!それに、こんなにボロボロのマークに何の労いの言葉もなく嬉々と私に羽根を捧ぐなんて、あなたどうかしてるわ!』

『ああ、美しいマリア。羽根の為に、私が貴女の側を一時でも離れるわけにはいかないでしょう。たからこそ、私の代わりにマークを送ったのですよ。何がおかしいのです?』

『信じられないわ!』


 マルス兄さんもマークも、何が悪いのか全くわからないらしく、二人して不思議そうにしていた。

 何故そこまでマルス兄さんに忠義を尽くすのかは誰も知らない。

 マルス兄さんと言う狂人に忠義を尽くす、マークと言う狂人。この組み合わせは――最狂――の組み合わせである。

 次代のマギュロ家当主とその最側近に、誰もが不安を抱いているが、何分、優秀で有能なのも確かで、恐々としながらも見守っている状況である。


 ちなみに、城の使用人は、名前で呼ぶ者も多いが、領民や軍関係者から、マルス兄さんは『次代様』、ルーク兄ちゃんは『若様』、僕リアは『坊っちゃん』または『坊ちゃま』と呼ばれている。


「マルス兄さんから伝言‥‥?何だろう」


 戦場にいるマルスからルークに伝言。普段ない事にルークは少し戸惑う。


「はい。次代様が、若様にすぐに砦に駆けつけよ、との事です」

「砦に?うーん。父上にはまだ早いと言われてるんだけど、いいのかな?でも、兄さんが来いと言うならいいのか‥‥」

「兄ちゃんどこか行くの?」

「ん、ああ。マルス兄さんに呼ばれたんだよ」

「僕も行きたい!どこどこ?ちゅれてって!」

「んー。リアはまだ子供だから駄目かなぁ」

「えー‥‥駄目にゃのぉ?」

「うん。ごめんね。でも早く帰ってくるから、ね?」

「う‥ん。ひっく‥‥びえーん」


 ルーク兄ちゃんの肩の上でギャン泣きである。

 三歳児のギャン泣きとは、絶望と同義。

 肩車中なので、ルーク兄ちゃんの頭に縋りつき、ルーク兄ちゃんの御髪を涙と鼻水でベトベトにしながら、泣き疲れ記憶にないまま眠り、起きたらルーク兄ちゃんは既に城にはいなかった。

クジャック(孔雀)

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