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戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー  作者: たきわ優


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第29話 会議

 南部連合軍の会議が開かれた。

 場所は、エドゥ王国のマギュロ家が保有する大人数で円卓会議の出来る施設で、(かつ)てマギュロ王国だった頃、政の中枢だった場所だ。

 今もマギュロ領内での政で使われており、補修や改装などで美しく保たれているが、外観は当時の石造りのまま。壮観で堅牢な佇まいを今も誇っていた。

 名称は、オートロ堂。

 大昔、智者であったオートロ一族の女と、アカッミ一族の強靭な男が、巨大な魔物を力を合わせ討伐ししたと伝えられており、彼等の子孫がマギュロ王国を建国したそうだ。

 それを称えての名称で、もう一つアカッミ闘技場と言う施設もある。

 今回の会議は、かなりの規模のもので、各国に出来得る限り王族の代表者の参加を要請したものであり、オートロ堂内は人で溢れ少々騒がしい。


 今回の発起人であるエドゥ王国の王が挨拶をし始まった会議は、予想外の驚きを以って進んだ。


 まず、各国で把握されていたのは、メージ王国の西の特区である城塞都市に、北で囚われている同胞数人が、北の役人の側仕えとして確認出来、接触を図ったところまでであった。

 実は、その同胞の内一人に協力を打診し、更に、魔道具を使って今現在も映像と音声で常時監視している事実に皆が驚愕したのは当然だろう。


「エドゥ王よ。これまでこの事実を秘匿していた事は理解したが……そのような魔道具を開発したとは報告を受けておらんぞ」


 基本的に、この世界の国名は、そのまま王族の家名である。

 なので、エドゥ王国の王はエドゥ王と呼ばれ、その他の国も同様だ。


 このエドゥ王。

 南部最大の国の王ではあるが、現状どの王よりも若く王座に着いてまだ一年経っていない。

 年は二十八だが、なかなかの切れ者で、新しい政策を次々と打ち出し、国内の人気も高い勢いのある王だ。


「こればかりは、法整備を南部共通で確たる物にしませんと、色々と問題が起きそうで……どう使うか次第で皆さん良し悪しあるでしょう? ああ、はっきりしておきますが、現存する映像と音声を届ける魔道具は、今監視で使われているもの一つだけだと断言しておきましょう。宜しいですか? ナーラ王」


 年上の王にも(おく)さず堂々たるエドゥ王の話し口は、人を惹き付ける魅力と人を従わせる力強さに溢れている。

 最初に口にしたのが、北の同胞ではなく利のある魔道具なのか? と訝しむ意味を若干込めて返す。

 それは、誰もが思っただろうが、この場は控えるべき話題だと諭すように。


 ナーラ王と呼ばれたナーラ王国の王は、少々欲深い王であり、それなりに頭も回る。

 映像と音声を届ける魔道具など、使い方次第では、国を豊かにも、他国を貶めることも出来てしまう。

 色々と欲深い計算でもしたのだろう。

 こういう時、思った事をすぐに口に出すので、迂闊で失言が多い王だとよく言われるが、それを上回る程にとても善性な王として知られてもいるのでとても慕われている。

 その貪欲(どんよく)さも、正しい方向にしか使わないのは周知の事実。例えば……ある国でより良い肥料が開発されたと知ると、王自らその国へ直談判しに行く程に。民のより良い生活の為に力を尽くすとても貪欲な王なのだ。

 迂闊な失言も、一番有名なのは、ナーラ王の寵愛する王妃が、まだ安定期に入っておらず、懐妊の発表前の悪阻(つわり)もある中、気丈に振る舞っている最中に「悪阻大丈夫?」と、心配の余りポロッと零してしまった話だ。

 発表の時期を調整していた高官達は勿論、妊娠で不安な中でも王妃の務めを果たそうと踏ん張っていた王妃は、瞬時に怒りの沸点を超え烈火の如く憤慨した。

 そこからは、王妃に全く頭が上がらない王なのだと南部では有名で、他国の平民までも知る所。

 欲深く迂闊で失言の多い、だけれどもとても愛すべき王なのだ。


「……わかったわ。法整備を待つ事にするわい。協力を得た同胞の監視報告を続けてくれ」


 年下の若いエドゥ王の言葉に、少し膨れっ面で、報告の続きを促す、顔にも出やすくこれまた迂闊なナーラ王。

 ヒヤヒヤしていたナーラ王国の高官達は、ひとまず胸を撫で下ろしいつものように明らかにホッとしている。

 各国の王族が集まるとよく見る光景だ。


 そうして、続けられた監視報告。

 北の奴隷となっている同胞達の現状。

 ルキウス・ムカディエと呼ばれる男と、その男を信望しつつある若い同胞の話。

 何より、北の同胞達が、南部が未だに彼等を救う為に戦っている事を知り、希望を無くしていない事実に皆、胸を熱くする。

 殆どの者が、目頭を熱くさせており、特に、軍関係者の多くは堪らず涙を零す者の方が多い。


「本日、会議の場をフジー大街道に近いマギュロ領に設けたのは、王族の皆様に実際の監視現場に赴いて頂く為です。目と耳で確かめて下さい。同胞を救う気概を絶やさぬ為に」


 エドゥ王の言葉に、各国の王が口々に同意する。

 とんぼ返りしようとしていた多忙な王族達も、多くが予定の調整を家臣に命令していた。

 そうして、今後の対策や、南部最強と言われ、二年前に北へ大打撃を与えたマギュロ家次男ルークの成人を機に、北へ進軍する意向が全会一致で進んだ頃だった。


「メージ王国特区より伝令っ!」


 馬を飛ばしたであろう土埃で汚れ汗に濡れたメージ王国の軍服に身を包んだ一人の兵が、オートロ堂内に息を切らしながら入ってきた。


「ご苦労であった。まずは、水を一杯飲み、それから落ち着いて伝えられよ」


 エドゥ王の気遣いに、メージ王国の代表として参加していた王子が()かさず礼を言う。それに続いて深く礼をし水を一気に仰いだ伝令が姿勢を正して声を張り上げた。


「申し上げます! 今から六時間前、北の使者から西の特区を預かるメッダカ家当主の元へ書簡が届けられました! その内容は……これより半年後、北で奴隷となっている同胞幾人かを留学と言う形で受け入れて欲しいとの要請。現在、使者を留置き、返事を待たせております! 判断を仰ぎたいとの事っ!」


 同胞を北の役人の側仕えとして連れて来たと思ったら、今度は同胞を幾人か受け入れろ、と。

 ……考えなくても、何かしらの策略の一環だろう。

 思いもよらぬ北の動きに、オートロ堂内は一気に騒がしさが増すのだった。

ナーラ王国(奈良時代)

オートロ堂(大トロ)

アカッミ闘技場(赤身)

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