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戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー  作者: たきわ優


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第17話 緊急招集

「急な招集に応じて頂き感謝する。それでは、連合軍会議を行う」


 そう宣言したのは、連合軍幹部の一人、メージ王国の西の特区である城塞都市を領地の一部として運営しているメッダカ家当主。

 軍人としては、やや細身で背が高い。普通ならその体型から軍服故に貧相に見えそうだが、彼の場合は、そのスラリとした上品な立ち姿から、最高級の儀礼服に見えるほど気品のある着こなしをする稀な雰囲気の貴人だ。


「メッダカ殿、緊急との事だが、特区で何かあったのかね?」

「ああ、儂もそれが気になっておる。是非、結論からお聞かせ願いたい」


 メージ王国の、しかも西の特区を持つメッダカ家の当主自らの緊急招集に、今日集まった各国の軍関係者はただならぬ不安を抱いていた。

 特区の監視体制は、魔法も組み合わせたもので、正規の手段を得なければ、一片の情報すら外部には漏れない。招集が掛かってから僅か六時間後を指定され、あまりの時間のない招集に……各国手のものを総動員してもここに着くまでに情報収集に専念したが、誰もが憶測も出来ぬほど何の情報も拾えなかったのだ。


「ああ、結論から言おう。西の特区内に、北で奴隷にされている我が同胞三名が、北の役人の側付きとして連れられてきたのだ……」

「「!?」」


 全員が言葉を失うほどの衝撃だった。

 同胞を囚われ三百年。

 これまで、奴隷とされた同胞との接触は幾度となくあった。

 歴史に記録されたそれらは、決して良いものではなかった。

 ある時は、フジー大街道の南北線戦の最前線で、人間の盾として扱われ、悲惨な歴史を刻み……ある時は、伝染病に羅漢した同胞を小舟に浮かべ海流に乗せ、病原として扱われ……。

 他にも、そのどれもが、人としての倫理を疑うような所業ばかりだったからだ。

 全員が思い浮かべるのは、悲惨な結末のみ。故に、誰しもが、言葉を……発せずにいた。


「……皆の思い描く状況は察している。だが、今回は違うのだ」


 メッダカは、苦虫を噛み潰したように眉間に皺を寄せ、口元を引き結び、鼻から一息吐いて説明を続けた。


「先程、私は同胞のことを“側付き”と説明した。言葉通りではあるのだが……彼等は、清潔な衣類を与えられ、頬の()けはなく、髪も整えられていたらしい。要は……とても奴隷とは思えない待遇に見える、と報告が上がったのだ」

「まさか……」

「扱いが変わったと……?」


 ざわめきが広がる中、メッダカはゆっくりと右手を上げ、場を収める。

 その優雅な手の動きに、冷静さを場が取り戻す。


「特区内の宿屋は、全てこちらが運営しているのは皆も知る通りだ。同胞三名は、格は低い部屋だが、それでも全員個室を与えられていた。そこで、深夜、こちらの手のものを同胞の各部屋へ潜入させ、接触をさせた……」


 全員が一言も聞き漏らすまいと手に汗握り、メダッカの次の言葉を待つ。


「同胞の内、二名はこう言ったそうだ。北の力のある貴族家が、自分達の人権を取り戻そうとしてくれている。今回は、その活動の一環で特区に訪れており、自分達は奴隷ではなく人として扱われるようになったのだ……と、そう……言ったのだそうだ」

「……」

「それは……」


 誰もが、何と言えば良いのかわからない。混乱がその場を覆う。


「だが、残りの同胞一名の言う事は違ったのだ」


 ゴクリと誰かの喉が鳴る。自分だったのかも知れないと誰もが唾を飲む。


「助けてくれ、これは南を混乱させる作戦の一貫だと。騙されないで欲しい、と……。きっとこちら側が、同胞達に接触するのも作戦の内だったのだろう。奴らの作戦の一段階目は見事成功だ。そうだろう……今正に、我々をこうも混乱に陥れているのだからな……」

「「……」」

「事前に提出させている滞在計画の書類では、同胞三名を含めた一団は、今日を入れあと九日間は特区内に滞在となる。諸君、特区だけで……メージ王国で、対処出来る問題ではなく、時間も僅か。どうか、力を貸して欲しい。やっと会えた囚われの同胞を前に、我々はどうすれば良いのだ……。どうすればっ……」


 東西のそれぞれの特区は、まだ城塞都市として北と約定を交わし五十年余り。

 だが、まだ壁で囲まれれる前の港だった時代から、フジー大街道に次ぐ、悲惨な歴史を繰り広げたもう一つの舞台でもあった。


 血縁を人質に取られた……武器を持たされた同胞と争うことになったことも片手では足りない。

 同胞(彼等)は言うのだ。

 人質となり囚われた家族を、恋人を、隣人を助けたい、と。

 だからこそ言うのだ。

 「殺してくれ」と。


 流木にしがみつき、骨と皮となって命からがら漂着し、一時間も経たぬ間に哀れな同胞を看取った辛い記憶、積み荷に紛れ狭い木箱の中で飢えて息絶えた同胞を検閲で見つけた時の悲壮な記憶も……刻まれてきた歴史は、メージ王国で全国民が学ぶ自国の歴史の一頁なのだ。


 その現代の舞台である城塞都市を治めるメッダカ家当主の心中は如何程か……。


 そこからは、出口の見えない意見の飛び交う時間が過ぎる。

 そんな中、それまで無言を貫いていた一人の男が口を開いた。


「私に考えがある」


 そう言ったのは、エドゥ王国を代表してこの場にいる、キュジラ家長男で時代当主のマルコ・キュジラ――マリアの兄だった。

メージ王国(明治時代)

メッダカ家 (メダカ)

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