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戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー  作者: たきわ優


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第16話 もうすぐ五歳

 もうすぐ僕は五歳になる。

 あの忌々しい呪いは払い終え、そうそう舌の回りが発音を阻害することもなくなった。

 完璧な五歳児になりつつある僕リア。

 そんな僕は、父上と母上から、大事なお話をして貰っている最中である。


「もう少ししたらリアも五歳になるな」

「うん!」


 家族の談話室で、僕は初めて両親と向かい合って一人で座っていた。

 いつもは、父上か兄のどちらかのお膝の上が多いので、ちょっと大人になった気分で向き合っている。


「五歳になったら神殿で、健やかに育ったことを女神様に感謝をし、女神様から祝福を頂ける奉告(ほうこく)の儀式がある」

「ほーこく?」

「そうだ。女神様に無事に五歳になれました、とお伝えする大事な儀式だ」

「へー。ぎしき……」

「ああ。女神様から五歳で頂ける祝福で、リアの魔力量も知ることが出来るんだよ」

「魔力!?」

「ははは。そうだ、魔力だ。リアにどのくらいの魔力があるか女神様の祝福で判明するのだよ」

「女神様すごい!」


「リック知ってた? 女神様凄いね!」と、僕の後ろに控えているリックに振り向きはしゃいでいる時に、父上が「上二人は祝福前に魔法を使ってたがな……」と肩を落とし、母上が「普通の子供の反応ってこれなのね!」と感動しているのを僕は気付かない。


「父上っ!女神様にしゅくふくしてもらったら魔法使えますか?」

「普通は使えない」

「普通は?」

「ごほん。……いや、ちゃんと魔法の勉強をすれば使えるようになる」

「そうよ、リア。魔法はね、お勉強をしてちょっとずつちょっとずつ使えるようになるのよ……普通は」

「え? 母上、最後が聞こえ難かったです。何ですか?」

「いいえ、なんでもないの。魔法のお勉強頑張りましょうね! リックが教えてくれるわ!」

「はいっ! 頑張ります! リックが教えてくれるの?! リック教えてね!」

「ええ、リア様、魔法のお勉強頑張りましょうね」

「うん!」


 何だか、父上と母上の様子が途中いつもと違ったけれど……それよりも魔法のお勉強が始まること、教えてくれるのが大好きなリックであることに意識が向いて、すぐに忘れてしまう。


 ――魔法。


 僕は、前世の記憶があることを自覚はしているが、普段それはどこか霞がかった様で、偶にぼんやりと「あ、これって日本にもあったなぁ」とか、そんな感じで……関連する何かしらに反応して、過去を懐かしむようなふわっとした思い出しをする。


 僕の普段の生活の中で、魔法に触れることはあるにはあるが、僕はそれをあまり認識していなかった。

 使用人が、ルーク兄ちゃんが発明した清掃魔法を「綺麗になぁれぇ~」と、僕が喜ぶので、僕の前で手で弧を描くように見せてくれる事が一番多いが、それもあまりに当たり前すぎる日常で、魔法だと言う認識がなかった。

 庭師の水やりもそうだ。

 良く考えれば、何もないところから水が一律均等に降り注ぐはずがないのに、当たり前すぎて魔法だと認識していない。


 今日の父上と母上のお話で、改めて“魔法”と言う言葉を認識し、僕は思った。


(めちゃファンタジー)


 久しぶりに引き出された前世の記憶は、魔法は空想の、架空の産物だと語るのに……今の僕の生きるこの世界では、確かに――現実だった。


 リックと談話室を出てからは、僕はリックに質問攻めだ。

 最近の僕は、何でも知りたくってリックに質問ばかりしている。その一つ一つにリックは付き合い、丁寧にわかりやすく答えてくれるのが嬉しくて、傍から見ればうんざりしそうな程に質問をする。


「何で女神様のしゅくふくで魔法が使えるようになるの?」

「そうですね、諸説……いろいろな考えがありますが、一般的には、魔力を認識出来るきっかけを女神様が与えて下さるから、です」

「んー?」

「ちょっと難しかったですね。そうですね、わかりやすく言うと……リア様、空気を吸って吐いてみてく下さい」

「すーーーはーーー」


 僕は大きく口を開けて目一杯空気を吸って、精一杯空気を吐く。


「空気がリア様のお口から入って、体の中に入って、吐く時に出て行ったのが理解りますか?」

「すーーーはーーー……。うん、空気入って出てった」

「そうですね。でも、普段、リア様は息をする時に空気が出たり入ったりする事を認識……気にしていますか?」

「うーん……してないよ」

「はい、息をする事は当たり前で、常に気にしたりはしませんよね」

「うん」

「でも、気にしてみたら、先程のように、空気が出たり入ったりするがちゃんとわかります」

「うん。空気入って出てったもん」

「ええ。実は、リア様のお体の中には今現在も魔力があります」

「え?! そうなの?!」

「はい。でも、魔力があるってわかりませんよね?」

「うん。全然わかんない」


 僕は、自分の体をペタペタと触ってみたりお腹に力を入れてみるけれど、魔力もなにもよくわからない。


「そうです。わからないのです。ですが、女神様に祝福を頂くと……これが魔力だ、とわかるようになるのです」

「すごいっ!!!」

「ええ、女神様は凄いですね。魔力は生まれた時から当たり前のように体の中にありますが、息を吸ったり吐いたりするように簡単には自分では気付けないものなのです」

「へー。息より魔力の方が難しいね」

「そうですね、魔力の方が難しいです。ですから、普通は五歳で女神様の祝福で初めて魔力を感じることが出来るようになって……さっきの息を吸ったり吐いたりして空気を感じるよりも、魔力を感じることが出来るようになるのです」

「なるほどー! ん? 普通は……って?」

「……次代様と若様は、女神様の祝福を頂く前から魔法を使われておりました」

「兄さんも兄ちゃんもすごいっ!」

「ええ……凄いことです」

「僕、兄さんと兄ちゃんの弟だもん! もう魔法使えるかも!」


 僕は、二人の兄を尊敬している。

 二人共、何でも知っていて、何でも出来るからだ。


「ふふっ。そうですね、使えるかも知れません。でも、ちゃんとお勉強をしてから魔法を使わないと、怪我をする事もあります」

「え?! それは……やだなぁ……。怪我は痛いもん」

「そうですね。痛いですし、私も奥様たちも皆様リア様が怪我をしたら心配になります」

「うん……。僕、今使えなくてもいいかも……」


 僕は、未だによく泣くし、痛いのも怖いのも嫌で、世間一般に言われる弱虫で泣き虫なのだろう。

 だけれども、同年代で比べる対象がいないから、まだそれに気付いていない。

 武家の三男なのだと言う自覚もない。

 まだ、五歳直前の四歳児だもの。


「はい。リア様は賢いですね」

「賢い……?」

「はい、賢い選択をされています。安全に怪我をしない事をお選び下さったのですから。それは賢い事なのですよ」

「ふふっ。えへへ」


 リックに賢いと褒められて、照れ照れしてしまう。

 もうすぐ五歳。

 女神様の奉告(ほうこく)の儀式に、僕は毎日思いを馳せるのだった。

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