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戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー  作者: たきわ優


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第14話 七の花

 まだ兄達二人が罰を受けているある日、僕は、新しい花壇を作ることを願い出て母上に許可を得た。

 いつものようにリックと虫を探していると、小さな蜜蜂を数匹見つけたことがきっかけだ。


「あ! はちでしょ! はっち! はっち!」

「そうですね、あれは蜜蜂と言います。あまり近くによっては刺されますから気を付けて下さいね」

「うん!」


 距離を開けて蜜蜂を眺める。

 蜜蜂達は、花から花へと飛び回っており、草木にはあまり興味を示さない事に気付いた。


「みちゅばち…みつばちは、お花がしゅ…すきなんだねぇ」

「そうですね、お花から甘い蜜を集めているのですよ」

「みちゅ?」

「ええ、リア様も大好きな蜂蜜です」

「え?! はっちは、はちみちゅをあちゅめているにょ?!」

「そうですよ。良く見て下さい。蜜蜂の足に黄色い塊が見えますか?」

「うーん……あ! あった!」


 じっと蜜蜂の動きを目で追うと、黄色い粒が黄色と黒の体の脇――蜜蜂の足に絡まるように付着しているのが見て取れた。


「あれは花にある花粉……花の真ん中にある黄色の部分です」


「これ?」と、近くにある花を指差す。


「ええ、そうです。それを蜜蜂は集めて、巣に持ち帰り、蜂蜜を作っているのですよ」

「しゅごい! はっちしゅごい!」

「城内には、蜜蜂の巣はないですから……蜜蜂は働き者なので、お城の外から花を探してやって来たのでしょう」

「はたらきものなの! ねぇ、リッキュ、はちのお花もっといっぱいにできにゃいかにゃ…かなぁ?」

「そうですね……、奥様に相談してみましょうか?」

「うん!」


 母上の執務室に行き、僕は一生懸命蜜蜂のお仕事を手伝いたいと説明した。


「そうねぇ、南部の蜜蜂は温厚で滅多に人を刺さないし、お花のお世話なら危険もないわね。庭師に指示をしておくわ。リア、新しい花壇をリアに任せます。リアの花壇だからリアが花のお世話をするのよ? 出来るかしら?」

「リアの……!! うん! おしぇ…お世話しゅる!」

「ふふ。では、お花のお世話をお願いね」

「うん!」


 まずは花壇作り。


 庭師に教えて貰いながら、リックの手も借りて雑草や小石取りだ。

 雑草の根はなかなか強敵で、三歳児の指の力では負けてしまい、根までなかなか引き抜けず千切れてしまう。それをリックが、土を根の下から掘り返してくれて、土の塊が着いた根っこごとよいしょと引き抜く。そして僕が雑草に着いている土を頑張って崩し取り、やっと一つ雑草を取り除く。

 傍から見れば牛歩の歩みで、一日掛けて僕が取り除いた雑草は小山にもならない少量だったし、途中で気が散って、土遊びを始めてしまったり。

 それでも、殆ど庭師達のおかげだが、ひと仕事終えた達成感で僕は誇らしい気持ちになった。


 次の日は、庭師達が掘り起こしてくれた土に用意してくれていた肥料を混ぜた。

 土はしばらく寝かせる必要があるらしく、七日ほどはそのままにしておく。

 その間に、植える花を選ぶ。

 取り寄せてもらったいくつかの花の苗を前に、庭師やリックが説明をしてくれる。


「花の種類によって蜂蜜の味も変わるのだそうですよ。花の香りが良い蜂蜜や、とても甘い蜂蜜。色も変わるそうで、濃い色や薄い色の蜂蜜になるそうです」

「しゅごい! おはにゃ…お花もす…すごいねぇ! うーん……」

「どうされました?」

「あのね……はちは、きらいなのあるかにゃぁ? やだもん。にんじんやなの」

「……ああ、蜜蜂の好き嫌いなお花があるかどうかですね?」

「うん。にんじんやなの」

「わかりました。では、蜜蜂に選んで頂きましょうか?」


 流石リック。僕の言葉足らずな説明を理解してくれる。

 僕は、柔らかく煮込み味の着いたスープに入っている人参は好きだが、サラダに入っている生の人参は苦手だ。

 庭師に、蜜蜂は持ち帰った花粉で蜂蜜を作り、蜂蜜を食べるが、花粉も食べるのだと説明を受けた。

 それを思い出し、花の種類で味が変わるのなら、出来れば、蜜蜂には好きな花――蜜蜂が美味しいと喜ぶ花にしてあげたいと思ったのだ。

 早速、リックと庭師が用意してくれ、取り寄せたいくつかの花の苗を蜜蜂を見かけた辺りに一時的に植えてもらい、三日かけて観察する。


「黄色のおはにゃ……お花にしゅる!」


 成長すると僕の背丈を超える小さな黄色い花が鈴生(すずな)る一番蜜蜂が集まった“七の花”。

 食用にもなる七の花は、食べると七つの体の不調を取り除くと言われている。

 腸を整え、風邪を引きにくくし、骨を強くする。妊婦の健康を支え、老いからくる不調を整え、肌荒れを治し、むくみを取る。

 比較的温かい南部でも、冬は肌寒く、季節の節目……冬の終わりの体調不良を七の花を食して払う。

 食からも、黄色く美しい花畑を広げる鑑賞面からも春を知らせる、南部では各地に自生する花だ。

 一番北部に近いマギュロ家の領地では、冬の終わりから夏前まで長く咲き続ける花でもある。

 七の花を植え、いくつか摘んだものは、その日の夕食に出して貰った。

 鶏肉と七の花を柔らかく煮込んだスープは、今まで飲んだスープの中で一番美味しく感じた。

 一口飲む毎に、七の花の黄色や、働き者の蜜蜂……それに、一緒に手伝ってくれたリックの優しい顔を心に描き続ける。

 心を温かくしてくれる鶏肉と七の花のスープは、僕の大好物となった。


「みちゅばちも僕も、なにゃのはな好き! いっちょねー!」

「ええ、お揃いですね」


 植えられてすぐに蜜蜂は花壇に訪れてくれた。

 忙しそうに蜜蜂が飛び交う七の花を眺めながら、リックと顔を見合わせ笑顔になる。

 少し垂れた優しいリックの瞳。

 それは、父上や母上、兄達、ばぁばとも違う……七の花のお日様に照らされた黄色の小花のような色で、心を優しく埋めてくれた。

イメージは、菜の花(七の花)

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