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戦線貴族家三男は最弱最強の兵器 ー 兄二人が可怪しいです!助けて! ー  作者: たきわ優


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第12話 リック

 この世の楽園――母上の腕の中で「おはよう、リア」「おはにょぉーははうえー」と、とてもとても素晴らしい朝を迎える。美味しい朝食を経て、僕リアは、ばぁばに「綺麗に全部食べれて良い子ですね」と今日も褒められ照れ照れしているところだ。

 母上との久々の共寝で、幸せホルモン全開。父上や兄二人が居ない悲しみは、今の所すっかり忘れている。


「リア」

「はいっ! ははうえー!」


 大好きな母上に呼ばれただけで嬉しくって、大きな声でお返事だ。


「今日はね、いつもと違うちょっと特別なことがあるのよ」

「ちがう? とくべちゅ?」

「そうよ。実はね、リアに紹介したい子がいるのよ」


 誰だろうとワクワクドキドキしていると、家令に連れられ、ルーク兄ちゃんより少し低い背丈の少年が食堂に通された。

 ふわりとしているけれど整えられた黒髪で、ちょっと垂れ目気味の柔らかな瞳。

 ひと目見て、優しさを纏った雰囲気を感じ、僕は嬉しくなって大きな声で自己紹介する。


「僕リア! しゃん…さ、いっ!」


 ちなみに、指を「三歳です!」と、完璧に三本立てている気になっているが、実際は四本立っている。

 三歳児は、脳から指の神経への伝達がまだ上手く機能しないのかもしれない。人体の神秘である。多分。


「ご挨拶有難うございます、リア様。私はリックと申します。年は十歳です」


 ルーク兄ちゃんと同い年。

 にこりと優しく微笑んで、丁寧な挨拶をしてくれて更に嬉しくなる僕リア。


「リア、ご挨拶出来て偉いわ。リックはね、今日からリアと遊んだりお世話をしてくれるのよ」

「!!!」


 一緒に遊んでくれる……!!!

 その一言に、三歳児の僕は大興奮だ。

 生まれてこのかた、我が家であるこの城を出たことがない。

 一番年が近かったのはルーク兄ちゃんで、いつも遊んでくれるのもルーク兄ちゃん。その次がマルス兄さん。それから手の空いた侍女達。

 両手を振ってばぁばに早くお椅子から降りたいと全力で催促。

 ばぁばに抱き上げられ絨毯に足を着けると、一目散にリックに飛び付く。

 そのままリックを見上げながら、跳ねながら――


「リッキュ! あにょね、あのね、おにあっ! おにあ!」


 興奮しすぎて、例の呪い全開で本来言いたい「お庭に行こう」がまともに言えていない。

 いつも遊んでいるお気に入りの庭をリックに早く案内したくて堪らないのだ。


「ふふっ、()()ね。リック、リアが庭を案内したいみたい。付き合ってあげてちょうだい」

「はい、奥様。リア様、お庭にご案内頂けますか?」

「うん!」


 そうして、父上や兄二人が居ない悲しみは頭の片隅にもなくなり、僕はリックに夢中。庭を一日かけて大興奮の中、きゃっきゃと案内するのだった。


 この時僕はまだ知らなかったが、マギュロ家の使用人達は全員が、マギュロ家がまだマギュロ王国だった頃から仕える使用人一族八門から成っている。

 当時から平民の為、現在も家名はないが、それぞれ一門、二門、三門……と、数字で呼ばれ、リックは八門の家の子だ。ちなみにばぁばは二門の血筋、家令は五門だ。下働き以外、侍女も侍従も全員が使用人八門の血筋だ。

 数字は、血筋を示すためのものであり、優劣はない。

 あと、領地内で代官をしてくれている家臣達、内政に関わる家臣達の多くもマギュロ王国時代から仕える当時の貴族家の者達だ。


 側近達が使用人八門の出身者で固められているのには理由がある。

 王国時代、家臣を側近としたこともあったらしいのだが、側近だけでなく同時に貴族家としての面も持ち合わせることで、家臣同士の権力争いなど色々と問題があり、使用人八門に限定する策を取ることにしたそうだ。

 側近だからといって、出世も優遇もない。

 家臣達のように直接政治に関わる事はなく、権力を持たせず、常に一歩控えた裏方として当時の王家を支えることに特化させた歴史が今も続いているのである。


 そんな状況の中、どちらでもないマークを最側近としているマルス兄さんは、異例と言える。

 ちなみに、マーク以外にも使用人八門出身の側近がマルス兄さんには三人いるのだが……マリア姉さんの事でやらかす兄さんの尻拭いや、マルス兄さんのやらかしを止めるのにいつも大忙しだったりする。

 もちろん、ルーク兄ちゃんにも側近が三人いる。

 三人共ルーク兄ちゃんと言う神を崇める信者のようで……今回ルーク兄ちゃんを止められなかった件で、かなり厳しく叱責さることになる。使用人八門の矜持と神への信仰(ルーク兄ちゃんと言う神の行いに間違いはない)との天秤に彼等が苦悩することになるのはまた別のお話。





 当初の予定より早く、それも突然に、リア様のお側に侍るお役目の日となった。


 八門に生まれ、御家の侍従となるか同い年のルーク様の側近となるか…と、懸命に励んでいた所、奥様の三人目のお子との朗報に、何故だが胸が高まったのを今でも覚えている。

 運命のように、それこそが成すべき天命のように、私が将来リア様に仕えることがトントン拍子に決まって行った。


 初めてお会いしたリア様。

 ぱっちりしたまぁるい目とぽてっとした頬。女の子にも見違えそうな可愛らしいお顔立ち。

 「リッキュ!」と、舌っ足らずに呼んで下さる私の名前を聞く度に、嬉しさが込み上げる。

 明るく元気に一生懸命お話しして下さる事が嬉しく、その仕草の全てが、守って差し上げなければ……と、私の何かを何ものかが確固たるものと成そうとする。

 上手く説明出来ないが、それこそがそうなのだと私の矜持を刺激するのだ。


 いつかわかる日が来る気がする。

 いつかそれを成す気がする。


 リア様。私の主。

 指折り数えて待ち望んだ今日という日の一時一時を、胸に刻み込むように大切に大切に私は過ごすのだった。

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