第6話:『新たな従魔と魔法の応用』
辺境の森。
朝の光が木々の間に差し込む中、リリアーナはフェンリルとともに森の中を歩いていた。
「今日は新しい魔法を試す日よ」
リリアーナは胸を躍らせながら、小さな魔導書を手に握る。
「無理はするな。応用魔法は制御が難しい」
フェンリルの低く響く声が背中に届く。
森の奥深く、静かに水の流れる小川にたどり着いた。リリアーナは手をかざし、水面に淡い光を集中させる。
「水の精霊たち……私の力を借りて」
水面がゆらゆらと光り、瞬く間に小さな水の結界が浮かび上がる。
「できた……!水の結界、成功!」
リリアーナの笑顔が森の光に反射して輝く。
その時、茂みの中で物音がした。
「……?」
リリアーナが注意を向けると、銀色に光るドラゴンの子供が姿を現した。小さくても威厳のある目をしている。
「……あなたは……?」
リリアーナはそっと手を差し伸べる。前世での動物感覚が、相手の心を微かに読み取る。
「仲間になりたいの?」
小さなドラゴンは頷くように首をかしげ、体を擦り寄せてきた。
「わかったわ。あなたはこれから私の従魔……」
リリアーナは胸の奥で小さく決意した。
「一緒に強くなろうね」
こうして、リリアーナは新たな従魔、小型ドラゴンのルナを迎えることになった。ルナは炎や光の魔法を操る能力を持ち、フェンリルとの連携で戦闘力はさらに向上する。
午後、リリアーナは錬金術の応用にも挑戦した。森の植物と魔力を組み合わせ、強力な治癒薬や魔力増幅ポーションを作る。
「このポーションを使えば、森の仲間たちもさらに力を発揮できるはず」
小さな動物たちは興味津々で近づき、リリアーナの作業を見守る。
フェンリルは鋭い目でリリアーナを観察しつつ、時折頷く。
「お前の力は確実に伸びている。森の守護者として申し分ない」
リリアーナは森の小さな丘に立ち、風を受けながら小さくつぶやいた。
「私……ここで本当に生きていける……」
夕暮れ、森の生き物たちが屋敷に戻り、リリアーナは仲間たちとともに休む。フェンリルとルナは彼女の両脇に座り、子狼やフクロウ、キツネも周囲に集まる。
「明日ももっと強くなる……みんなと一緒に」
リリアーナの目には、確かな希望と自信が宿っていた。
一方、王都。
王太子は玉座の間で苛立ちを隠せず、補佐官に問いただす。
「リリアーナは……ますます森の力を掌握している……!」
補佐官は震えながら答える。
「陛下、辺境の森での魔獣討伐の情報に加え、従魔の存在も確認されています。伝説の従魔まで加わっている可能性があります」
王太子の顔が紅潮する。
「……あの令嬢が……俺の見くびった女が……!」
だが、リリアーナはもう王太子のことなど気にしていなかった。森の仲間たち、フェンリル、そして新たな従魔ルナ――彼女の世界は、これまでになく広がっていたのだ。
森の夜空に満月が昇る。銀色のフェンリル、炎を宿すルナ、小さな仲間たち――
最強賢者としてのリリアーナの物語は、ここからさらに加速していく。